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Weekly report
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 October Fifth week

 今週も大きな勢力を持った台風が2個も接近し、西日本を中心に大雨を降らせました。当初の進路上に関東もあったため、伊豆大島がさらなる被害が生じる心配がありましたが、幸いにも南側をゆっくりと通過したため、土砂崩れなどが発生せずにすんだようです。この台風のために大島を離れて避難したお年寄りも多かったようですが、それでも人命に被害が生じなかったことは何よりと思います。大島町や東京都の判断を評価したいと思いますし、小雨を狙って救出活動を続けた自衛隊や消防、警察の方々のご尽力にも敬意を表したいと思います。

 さて先週は、阪急阪神ホテルズ、ならびにリッツ・カールトン・大阪などのホテルの食材表示の問題が露呈しました。多くのホテル会社がホテル内で直営のレストランを経営していますが、これらのホテルのレストランで提供していたメニューに、実際とは異なった材料等の産地表示がなされていたことが明かになったのです。国内産の牛肉をつかった、と表示しながら海外産のものをつかったり、地元の直営農場の野菜を利用した、と表示しながらも他産地の野菜をつかうなど、利用者を欺くような行為が行われていたようです。一般にホテル内のレストランは値段が高いですが、材料の品質や味がよければ納得感があります。しかし今回はその顧客の気持ちを裏切ったわけですから、企業にとって大きな問題といわざるを得ません。

 なぜこのような事態が起きたかは現在調査中ですが、ホテル側の言い分としては従業員の認識誤りという理由を挙げています。メニュー開発当初は実際に表示通りの食材を利用していても、季節の移り変わりや市場の変動で予定の食材手配ができなくなることはあります。その場合調達側は代替の食材や異なった産地の食材を手配するでしょうが、メニューを提供する調理側やサービス側がその事実を知らなかった、というのがホテルの主張です。また納入業者がつかった商品名をそのままつかったため、ホテルが虚偽をしたのではなく、その商品名そのものに誤りがあったとも主張しています。

 しかしこの主張には、無理があるといわざるを得ないでしょう。調達側が違ったものを手配する場合には調理側に確認をとるでしょうし、調理側も産地や品質が異なれば、基本的にはその変化に気づくはずだからです。今回もいわゆる「とびこ(トビウオの卵)」を「レッドキャビア(いくら)」と納入業者が商品名としていたため、利用者に「レッドキャビア」と料理に表示したと説明がありましたが、ちょっと寿司好きの方なら、その違い(粒の大きさが10倍ほど違う)に気づくでしょう。ましてやプロの料理人がその違いを判明できないなどと行ったことは、あり得ません。

 さらに調達する食材が変われば、調達価格も変わるはずです。一般に品質の高いものを同価格で代替することは難しいはずです。となると、代替商品の調達価格はより高くなるのが一般的と思います。レストランはシビアな食材原価の計算を行いますから、そこで調達商品の違いに気づかれるはずです。逆に一般的な食材を利用すれば調達費用が下がりますから、やはりそこでも気づく可能性があります。食材原価は利益に大きな影響を与えますから、それに調理側や経営者が気づかないというのも納得はしがたいといえるでしょう。こう考えるとホテル側がコストカットを優先するがあまり、意図的に「このぐらいならば問題ない」「プロでも味の違いを見分けるのは難しいから」と調達価格の安い食材に変えた可能性が高いと思われます。

 しかしこれは明らかに顧客の信頼を失う行為ですし、レストランとしても決して行ってはいけない行為のように思われます。ホテルは日本だけでなく世界の方々も利用するわけですので、日本のレストランの信用全体を失う行為ともいえると思われます。それを経営の理論で、競争激化と利益確保をいいわけに行ったこれらのホテルの行為は、決して許されるものではありません。

 さらに今回釈明会見を開いた阪急阪神ホテルズの経営者は、ひたすら「偽装表示」ではなく、現場の勘違いによる「誤表示」と強調をしていました。逆ギレの様相で強い口調で強調すればするほど説明内容が嘘くさく感じましたし、謝罪会見という場での経営者としてのあり方に疑問を感じました。これまでも再三問題提起していますが、最近の世の中の風潮として、「誤りは許さない」傾向が強いと思われます。過去であれば大目に見られたり笑われたぐらいで済むような事象でも、現在は株価に大きく影響が出るほどの問題になります。さらに最近はSNS等の匿名で情報発信できる場も多いため、利害関係がなくとも企業の発表や発言に非常に敏感な反応をしますから、より慎重な対応を企業はすべきになっています。しかしながら今回の経営者は、そういった環境を理解しているかいないのかはわかりませんが、非常に強い口調で経営的な問題ではないがごとく振る舞っていたのは印象的でした。

 今回の件は、誰が見てもわかるとおり明らかな経営的問題です。きちんとした姿勢で経営を行っているのであれば、業務監査や会計監査でこのような問題が発見できるからです。さらに社員への教育を徹底し、情報伝達のルートが明確になっているのであれば、必ず誰かがこの不正に気づき報告を行っているはずです。しかしながら今回のように食材の偽装表示が恒常的に行われていたとすると、これは明らかに経営的問題といえますし、経営責任を負わざるを得ない事態と私は考えます.逆にそれを素直に認められられない経営者は、経営者としての資質に欠けるとしかいいようがありません。

 従業員の多くは、顧客からの厳しい目線にさらされながら、内部からのコスト削減とサービス向上といった矛盾にも近い要求の中、まじめに業務を遂行しているはずです。ホテル業界を考えると、その従業員のうちの何割かは、パートなどの非正規雇用の従業員と思われます。今回の件でホテルの利用者が減り、さらに利益率の高いレストランを利用率が下がれば、ホテルの業績は確実に悪化します。今回の一件で株価も下落したようですので、さらなるコスト削減や非正規雇用の従業員の削減と行った方法をとらざるを得なくなるでしょう。つまり経営者の軽い判断が、多くの従業員の雇用そのものを危うくしますし、最終的には企業の存続も難しくすることを忘れてはならないと私には思えるのです。 

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 先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

・部品実装 より整然と 「iPhone5s」解剖 スペース確保、電池容量増やす
・米MS、企業向け手応え 7〜9月 純利益2ケタ増 クラウド好調 PCも安定の兆し
・セキュリティー人材 頭痛のため [藍より青い] 担い手育成を
・Amazon膨張 ネット書店から「出版社」へ オリジナル連載小説配信 国内勢、距離感探る
・優等生ヤマト 油断と慢心 クール宅急便ずさん管理 国内シェア佐川の5倍 稼ぎ頭に傷
・電子カルテ スマホで閲覧 S&I、初期費用80万円
・韓国めざせ「IT咸臨丸」 米国勢しのぐサービス 視察を
・究極のエコカー 走りは快調 トヨタ、残る課題はコスト 部品軽量化に奮闘
・パナ再起 吹くか湘南の風 国内最大級 1000戸のスマートシティ開発 売電・カーシェア エコ満喫
・独SAP、純利益12%増 7〜9月 ソフト・クラウド堅調
・反転攻勢矢先の[いいとも]終了 富士、来春まで関心つなぐ
・再生医療 事業化へ本腰 富士フイルム 独自素材技術が核 加工受託や創薬支援探る
・ITSで環境改善 CO2排出量・渋滞量 20年に半減目標 最適速度や車間距離維持
・3M、デジタル融合に活路 日本で付箋メモのネット保存サービス エバーノートと連携
・インディオライト、空調設備クラウド管理 データ解析、分単位制御
・個人用3Dプリンター スマイルリンク、17万5000円 ナイロン素材対応
・企業向け 普及進む クラウド上でファイル保存・共有 共同編集が充実
・次世代ディスプレー競演 パナソニック:業務用4K画質 フィリップス:裸眼で大型3D
・医療特化の起業支援 新宿に拠点 コンサルや仲介など
・V2Hエネ供給で脚光 EVから施設に電力 爪木もと興業や日産が出展
・日の丸知財 iPad磨く アップルが新端末 キタムラ:背面精密加工 三菱電機:光学センサー

 今週は、どんな一週間なのでしょうか。