早くも新年第二回目のWeekly Reportです。
昨年末散髪にいったところ、面白い話を聞きました。ご主人曰く、後数年で店を閉めることになりそうだということです。このご主人、地元でずっと理髪店を営んでおり、私も結婚後25年以上通っている店です。
私の地元も他の町と同様日々在庫のある店がつぶれ、徐々にシャッター商店街化が進んでいますが、その中でも頑張っている一軒のお店です。付近の肉屋、魚屋、八百屋などの商店は日に日につぶれ、畳屋や左官屋も店を閉めました。お茶屋や質店、靴屋や食器屋、最近では昔からやっているパン屋も記憶の片隅にこのるようになってしまいました。新聞配達店のバイクの数は年々減っていますし、牛乳屋はとっくの昔に廃業してしまいました。たまに飲み屋が新規オープンしますが、それでも数年で閉店することが多く、生き残っているのはチェーンの居酒屋ぐらいです。その中でヘアサロンやマッサージ店だけは店数を増やしており、クリーニング屋や不動産屋とともに商店街の存続にどうにか貢献している状況です。
現在生き残っている店のポイントは、在庫のないサービスを提供しているという点が共通しています。散髪屋やヘアサロン、マッサージは店主の技術でサービスを提供しますし、ネットで代替はできません。不動産屋は物件を探す段階まではネットでもかまいませんが、実際に現地の下見をしたり契約をしたりは、ここでしかできないので生き残ることが出来ます。クリーニングは受け渡しが必要ですし、当日のやりとりができる店舗はやはり便利でしょう。したがってこれらのネットで代替できないビジネスのみが生き残り、それ以外の店舗はネットに代替されているというのが現在の商店街です。
ところがその散髪屋の主人と話したところ、この先どんどん顧客が減りそうだとのこと。まず第一に、その店に通う中学生以上の男の子は現在皆無だということが理由でした。小学生であればどうにか父親に連れてこられるケースはあるようですが、それでも男子小学生の父親がヘアサロンに通いますから、散髪屋の新規顧客は減っていきます。さらに驚いたのは、現在の顧客も順次卒業が始まっているということなのです。なぜかと理由を聞いてみると、顧客の多くを占める団塊の世代が企業を引退する際に、散髪屋からも卒業してしまうからだそうです。すなわち、会社員としてはきちんとした身なりが必要なので定期的に散髪屋に通ったが、引退したのでその必要性が下がりますし、可処分所得も減ることから駅前の1000円カットの店に行ってしまうそうです。となると、新規の顧客は増えない、既存の顧客はどんどん減少するというサイクルに入りますから、やがて散髪屋などの理容店も閉店に追い込まれるようです。
それではヘアサロンは大丈夫かといえば、そうとも言えません。もともと移り気の高い女性が顧客ですし、特定の美容師を指定するケースも多いようです。となると、その美容師が退店すればその顧客も移動してしまうということですし、業界全体としてはやはり限界があるでしょう。現状の競争過多を考えると高度サービスか多角化(ネイルサロンやエステを併設)に転ずるしかないようですし、それらを実現できない多くのヘアサロンも、今後減少していきそうな模様です。
マッサージ店も最近は価格競争が始まっており、平日の稼働率を上げるべく大手は長時間戦略に切り替え始めたようです。すなわち週末1時間あたりの単価で平日は二倍の時間サービスを提供するなどして、平日の稼働率を高めようとしているようです。マッサージ師の数をある程度確保する必要がある大手チェーンでは、やはり一週間を通した稼働率の向上が目標となります。となると、こうやって価格競争することが稼働率の保証にもつながりますし、それらに対応できない個人商店のマッサージ店を圧迫していくのでしょう。マッサージ店もスポーツマッサージなどの高度サービスに切り替えるところもでてきているように、これまでの個人経営の店はやがて限界を迎えそうです。
こうやって考えてみると、残るクリーニング店もやがて閉店に追いやられることが予想できます。DVDなどで既に行われているように、ネットで注文すれば回収箱が届けられ、それを発送すれば翌日にクリーニング済みの衣類が返却される、といったサービスが間違いなく始まるでしょう。これに対応できるのは大手チェーンであり、工場でクリーニングをしているのですから現状でもすぐこういったサービスを始められます。逆に開いている時間を狙って衣類を持って行く、あるいは取りに行くより、24時間開いているコンビニを使って受け渡しをする方がずっと合理的なようにも思えます。となると、やはり既存のクリーニング店も閉店に追い込まれる可能性が高まってきました。
このようにシャッター商店街化は、第二段階を迎えてきたようです。物販の次はサービス、といったように、いよいよ既存のビジネスモデルでは生き残ることが難しい時代が到来しています。しかしながら人間の生活がなくなることはなく、ネットだけでは対応できないサービスも潜在的にはかならず存在します。このような流れの中で、新世代のサービスを誰がどのようにしかけていくのか、その中でITはどのように発展し貢献すればよいのか、興味が尽きない時代が始まったように私には感じられます。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・・このクスリ、あなた仕様 開発、ベンチャー主役 スピード感強みに
・人工知能 5年で普及 IBM予測 健康管理など支援
・グローバルに、タフに育て 東大・早大 多言語使いこなし 立命館・慶大 海外大の学位取得
・ゲット・ロボ! ブラジルでロボットW杯 ソニーが源流 物流・テロ対応支援
・レブロン、中国撤退 米化粧品大手 従業員1100人削減
・スパコン導入企業に広がる ビッグデータ需要拡大 米クレイ 安価な特化型
・スルガ銀に新システム 日本ユニシスが勘定系
・クルマ列島 期間工争奪 増税後、息切れ懸念
・マルハニチロの怪 グループ冷食会社で農薬問題 再編さなか、作業に支障
・新技術試す模擬病院 医療大国 米国の今 費用・効果、導入前に見極め
・業務用タブレットに力 パナソニック 軽量化や4k搭載 米家電見本市が開幕
・ITの次、食品で革新 卵の味 植物で再現 食品VBトップに聞く
・サムスン営業益6%減 10月〜12月、2年ぶりマイナス 高級スマホ不振
・家庭用ゲーム機市場9%減 昨年国内「Wii U」伸び悩む
・介護ロボ市場37%増 12年度 保険適用が拡大の鍵
・正確な手術 支援ロボ デンソーが開発
・ソフト路線で「赤い旋風」米家電見本市が開幕 ZTEやTCL 中国勢、北米を開拓
・鍵の認証、4通りで 暗証番号 カード スマホ 専用シール アルファが玄関用
・「99ドル」スマホ発売 台湾エイスース 中国勢に対抗
・PS4販売420万台長 SCE「Xbox」と火花
・「ソニーらしさで驚きを」 CESで社長講演 製品開発 リスク恐れず
・「IoT」湯引きタウの再来 業界では期待や予測
・ロープ昇降式の新型ホーム柵 JR西日本 異なる扉数の車両対応
・自動運転 先駆けはVW 米家電見本市 頭脳担う小型基盤疲労 日本勢と競争激化
・基幹システム 刷新の波 オープン系、スルガ銀など10行採用 低コストで商品柔軟
・津波シェルター開発相次ぐ 南海トラフ地震に備え
・災害時も手術器具供給 医療機器のコヴィディエン 福岡に物流拠点 リスクを分散
今週は、どんな一週間なのでしょうか。