本当に日々が過ぎるのが早く、あっという間の一週間になりました。先週末から新講座のレジュメ作成にかかりっきりであり、すっかりこの更新が遅れました。
先日伊豆熱川の海岸を歩いていたところ、温泉街に唯一あったコンビニが閉店していました。近隣にたいした店がないため宿泊向けにそれなりに繁盛していたのですが、やはり東日本大震災以降の顧客数の減少はこんなところにまで影響しているか...と思ってよく見ると、そのコンビニが入っていたホテルそのものが閉まっていたのです。
このホテルをセタスロイヤルといい、熱川温泉街の入り口(?)に立つ比較的新しい大規模なホテルです。正面は熱川の海を臨むロケーションであり、駅から歩いても10分ほどの距離に構えるホテルで、夏は正面にある海水浴場客などで繁盛している印象がありました、近隣のホテルは築年数もそれなりに経っておりやや古びた印象があるのですが、このホテルは平成になってからの建物で比較的綺麗で大きなホテルでした。調べてみると2月14日に負債4億2千万円で自己破産してしまったようです。
もともとこのホテルのロケーションには、大東館という旅館の山水という別館が建っていたようです。木造3階建てのこの旅館はテレビドラマの「細腕繁盛記」のモデルだったようであり、昭和の時代にはそれなりにはやっていたようです。ところが1986年に火災を起こし、日本のホテル史上でも記録に残る24名もの犠牲を出した大惨事となりました。その後パシフィックアイランディアンリゾートというホテル経営企業の支援を受け、大東館から独立する形で1994年にセタスロイヤルというホテルが跡地に誕生したようです。ところがその支援企業であるパシフィックアイランディアンリゾートが経営不振から今年二月に倒産し、そのあおりを受けてセタスロイヤルも自己破産をせざるを得なかった、というのがコンビニ閉鎖の顛末のようです。セタスロイヤルは、現在入り口に管財人の立ち入り禁止の張り紙があるだけで、ひっそりと無人の建物になっています。熱川の一等地であっても、国内旅行客が劇的に増加することは考えにくいため、今後新たな企業による再建も難しいのではないか、と思わされてしまいます。
熱海に代表される東伊豆の温泉地帯は、昭和30年代の新婚旅行のメッカとなっていました。戦後から10年たち、衣食住が満たされるようになったこの時代の贅沢は、温泉には行って美味しい物を食べる、だったことは想像に難くありません。今のように高速道路や新幹線などの交通機関も整っていない時代ですから、東京から熱海に向かうだけでも十分な旅行気分を味わえたのでしょう。やがて熱海の喧噪を離れたやや静かな温泉地ということで東伊豆の温泉地がつぎつぎと活性化し、多くの旅館が生まれたようです。バブル期には、リゾート開発も盛んになり、東伊豆全体に別荘地がたちならび、大型のリゾートホテルも開業しました。
しかしバブル崩壊後観光客は激減し、熱海から南の多くの旅館が廃業しました。熱海も未だに廃墟が残りますし、東伊豆を南北に走る国道135号線沿いにも、廃墟と化したホテルや旅館を見ることが出来ます。熱海は一部のホテルをリゾートマンション等に建て替えて販売する動きもありますが、肝心の買い手がいないためうまくはいっていないようです。
このように、伊豆全体の観光産業が完全に斜陽状態であることが分かりますが、これは伊豆に限ったことでもない気がします。国内の有名温泉街も似たり寄ったりの状態であり、最低限の売上で存続している、といっても良いのかもしれません。観光地が不活性であれば、ホテルや旅館の従業員や関連施設での働きもなくなり、その働きを担っていた人たちの衣食住も不要になることから街全体が廃れます。若い人は仕事を求めて都会に出るしかありませんから、残るのは老人ばかりです。老人ばかりであれば近隣の商店街も維持できませんから、閉店するしかありません。熱川の生活商店街(温泉街ではなく、本当の生活街)の店舗も次々に閉店していますから、これは事実なのでしょう。実際にこの数年で、書店、文具店、喫茶店、ラーメン屋、薬局などがつぶれていますし、街を走る車には高齢者運転標識(四つ葉マーク)が間違いなく貼ってあります。となると、近隣の老人も徐々にいなくなれば、完全に過疎の町になることは間違いないようです。
今後こういった街が生き残るためには、基本的に観光立国政策に頼るか、外資に頼るしか方法はないのかもしれません。つまり国家主導で世界の観光客を呼び込み、各地の温泉施設で古き日本を体験してもらうか、外資系ホテル業界に頼り、自国や近隣国の観光客を招き入れるかです。しかし前者の方法ではすべての廃れている温泉街が潤うことは難しいでしょうし、後者のためには有力な観光資源が必要となり、温泉と海岸しかない温泉地では、やはりこの方法も困難と思われます。伊豆のように海のすぐそばまで山がせり出している地域では工場などを作りにくいですし、大規模な農業も適用できるような土地がありません。となると、今と大して変わらない産業しか可能性が低いようにも感じます。
となると、残るアイディアは限られてきます。その方法は...と説明するとなると、非常に多くの時間が必要になるため、今回は宿題にしましょう。その解答を知りたい方は、是非とも過去のWeekly
Reportとご自分の頭の中を探して仮説を立ててみてください。そうすれば私の仮説に気づけるかもしれませんし、私よりももっと優れた現実性の高いアイディアを思い浮かべることも可能かもしれません。その可能性のあるアイディアを日本中の観光地がもとめているとなると、ひょっとすると大きなビジネスチャンスが眠っている気もします。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・省庁システム55年目の改革 2大抵抗勢力 見方に IT技術者 不足も追い風
・中国スマホのネット戦略 商機の鍵は「小米流」
・PS4発売、長蛇の列 新型機で再起狙う
・ITサービス市場1.7%増 昨年国内 IDCジャパン システム更新進む
・ARが変わる街興し 大がかりな演出 可能に
・IBM苦悩、スピード感欠く経営 「ワトソン」難題解けるか 人工知能に2000人部隊
・つながる車競う スペイン携帯見本市開幕 フォード、音声で端末操作 25jスマホ登場へ
・NTTコム、2割節電 データセンター 大容量システム導入 効率よく給電
・相次ぐ鉄道衝突事故 システム過信に落とし穴 安全確保へ技能継承課題
・クラウド傾斜鮮明 マイクロソフト:日本にもデータセンター IBM:ソフト開発に10億ドル
・家電の保証書 スマホで電子化 ワランティがアプリ 物損故障は月1000円弱で
・サイバー攻撃 仮想通貨翻弄 ビットコイン急落の背景 ウイルス続々出現
・消える空想と実現の境目 埋もれる技術 起業が発掘
・ホームドア 軽量化競う 市場拡大へ施工費抑制
・情報システム 2016年問題 大型案件が集中 優勢も4900億円 技術者不足で採算悪化
・認識力、人知越える パン判別、熟練店員並 低解像度ナンバー類推 画像・言語分野で活躍
・仮想世界の防災対策 IT業界、意識改革が急務
・足裏の圧力 簡単測定 靴形装置、歩き方も確認 お茶の水大学 高齢者の転倒予防
・空き状況一目で スマホで駐車場検索 三井不リアルティ 自社の運営施設
・25jスマホの実力は 第3のOS「ファイヤーフォックス」搭載 簡単操作 初心者使いやすく
今週は、どんな一週間なのでしょうか。