またこの日がやってきました。
この三年を振り返ると、東京はすっかり震災を忘れてしまったようです。あの日を境に変わったのは、電車と店舗の暖房の設定温度が低くなったことぐらいかもしれません。昔のように、電車やスーパーに入ると上着を脱がざるを得ない、ということは皆無になりました。しかしそれ以外に、震災を思い出させる変化はなくなったように思います。壁面が壊れたビルはほぼなくなりましたし、店で不足する防災用品もなくなりました。震災前と同様に街は機能していますし、生活に不安も感じません。街には笑顔があふれていますし、繁華街の喧噪もすっかり元通りです。
しかしながら東北の被災地は、そうではありません。いまだに仮設住宅から離れられない方も大勢いますし、その中で孤独死してしまう老人も後を絶ちません。街の復旧どころか後処理ですら十分に出来ていないところもありますし、街として機能していないところもまだまだ多く残っています。護岸工事は遅れに遅れ、いまだに決定的な防災対策は打てていません。地権者の思惑と自治体の施策が一致せず、住宅や店舗の移設もままならない街も数多くあります。無残に残ったビルの残骸を、震災遺構として残すかを決めかねている自治体もあれば、多くの人を救った頑丈なビルを撤去しなければならなかったところも多くあるようです。
意味のない用途で浪費される復興予算と、形式的なルールに縛られた復興の施策は、街全体の明日の足かせになってきています。どのような街にするかということを合議するだけで、誰もが納得できる明日の街のモデルは誰からも提唱されません。福島の後処理はほとんど進んでいないに等しいのに、もう帰宅や次の原発の再開だけが論じられており、無限に垂れ流される冷却水の保存タンクが風景のようにテレビに映し出されるだけです。旧政党の時代のできごとは知らない、新政党の責任はこれからのことだけだ、という傲慢を永田町は相変わらず振り回しますし、復興の放置を続けることに責任のひとかけらも感じられません。東京オリンピックの華やかさをたたえるだけで、本当の意味で日本の復興とは何かを真剣に考えているのか、疑問が残るばかりです。
政治や永田町の官僚の責任を問うても、何もうまれないことを国民は知っています。しかしだからといって、我々は復興に命をかけた、そして今もかけている多くのプロフェッショナルの活動を忘れてはなりません。大切な一人の命を救うために何百人もの人が努力し、汗を流したことを忘れてはなりません。そして彼らを応援した純粋な気持ちを、我々はもう一度思い出さなければなりません。
コメディアンで映画監督の北野武氏は、こう言います。「今回の震災を2万人弱が死んだ一つの事件と考えてはいけない。今回は一人が死んだ事件が、2万件あったということ。」だと。
我々に出来ることは、被災者の経験をムダにしないことだけかもしれません。やがて訪れる大災害に対し、どのような準備をするか、今足りないことを本気で考え、明日それを実行できるかだけなのか、その貴重なきっかけを多くの命が教えてくれました。それをムダにしかねない今の不遜な態度や無関心を恥じて、今日から本気で備える。そして自分や自分の家族だけでなく、一人でも多くの人を救える方法を考え出し、身につける。少なくとも自分や家族が傷つけば、より多くの人たちの手間を取ってしまいます。そうならないよう一人一人が自律し、来るべき大災害に備えなければならないです。
この週末は、もう一度防災用品を見直しましょう。賞味期限の切れた食品や水を取り替え、薬の使用期限を確認し、自然消耗した電池を確認しましょう。携帯ラジオや手回し発電機の性能を確認し、本当に動くかチェックしましょう。夏の災害と冬の災害の両方の観点で携帯品を見直し、どちらでも対応できる備えをしましょう。スマホや携帯の非常時の使い方を決めて、練習しましょう。
地域の避難場所をもう一度確認しましょう。そのルートを家族で話し合い、どのように落ち合うか決めましょう。万が一遠くに離れた場合でも、どうやってお互いの生存を確認するか、取り決めましょう。そしてその過程で、近所に住むお年寄りの存在を意識しましょう。たとえ自分のことで手一杯でも、一言「大丈夫?」と声をかけましょう。それが一人でも多くの悲しみを減らす唯一の方法かもしれません。
次に来る大きな地震を確実に乗り越え、一人でも多くの悲しい人をなくせるかが、我々一人一人の大きなテーマになっています。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
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・問題運転 瞬時に連絡 オリックス自 営業者向け 顧客にメール送信
・省エネ データセンター 富士通 外気フル活用し冷却
・みずほ「鬼門」三たび システム統合 1年延期 ミス許される全面刷新 旧3行なお影
・Jクルー お買い得? ファストリが買収観測 「5000億円」どう判断
・災害「私はココ」自動通知 ゼネテック、スマホ位置情報活用 通信制限前に記録
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・パソコン3億台割れ 今年の世界出荷6.1%減 民間予測
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・iPad 電子看板に NTT東、販促情報配信
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・2人のカルロス 恩讐越えるか ルノーとSPA 協調の芽も 仏政府が大株主
・自動駐車 18年に商品化 日立オートとクラリオン開発 カメラで障害物認識 車外操作も想定
・処理速度と信頼性両立 日本取引グループ システム統合、競争力に直結
・システム改善業務代行 日立システムズ 傷害を未然に防止
・伊藤園「タリーズ」刷新 缶コーヒー主力ブランド プロが監修 喫茶店と組み販促
・「iフェラーリ」手綱楽々 アップル搭載車 ジュネーブショーで体験 プレミアム感全面
今週は、どんな一週間なのでしょうか。