先日の新聞記事に、驚きの記事がありました。
今世紀中には実現が難しいと言われていた夢のコンピュータである「量子コンピュータ」が突然実現され、発売されたそうです。製作したのはカナダのディーウェーブシステムズという会社であり、その名も「D−Wave」という機種です。
我々が使っているコンピュータはノイマン型コンピュータであり、ビット単位の計算を行うことができます。まさにスイッチ(0n/Off)原理を利用したものであり、0,1で表現できる2進数計算によって計算処理を行います。ところが量子コンピュータは1ビットあたりで複数の0,1の組み合わせを保持することが出来るため、ノイマン型のスイッチ(0n/Off)原理を利用した計算よりずっと多くの桁を同時に計算できることになります。これはノイマン型コンピュータでビット単位の計算を何日もかけて行う2n乗の計算を一瞬で並行して行うことを意味しますから、その速度は限りなく高速の処理が可能になります。
これまでのノイマン型コンピュータでは、複雑な計算を単純に行わせると時間がかかりすぎるため、さまざまな問題に適合したアルゴリズムを作成し、プログラム化して実行して解を得てきました。これまでは統計学的処理などで厳密解を得るために膨大な時間がかかるケースで、時間を短縮するために近似解を求めるようなアルゴリズムを作成してきたことを意味します。つまり厳密計算すると膨大な時間がかかるため、ある程度の閾値(振れ幅)をもった解を得て結果としてきたのです。ところが量子型コンピュータを利用すると、計算速度が劇的に速いため、膨大な時間のかかる厳密解処理も短時間で実行できることになります。これはさまざまな技術計算の基本的な考え方を変えるものですし、コンピュータの利用方法を根本から変えるものとなるかもしれません。
これまで量子コンピュータの実現が難しかったのは、量子ゲート方式をとっていたためといわれます。この方式をとるとプログラミングによってさまざまな量子コンピュータでの計算が可能になるそうですが、量子ゲートの実現が難しく、これまでは実用的な製品の開発が出来ませんでした。さらに量子ゲートを使ったプログラミングも非常に難しく、現在でも因数分解程度のプログラミングしか開発されていないため、仮に製品が出来ても暗号解読ぐらいにしか利用価値が見いだせないそうです。ところが今回の「D−Wave」は量子ゲートをつかわないため実用化が可能になったようですし、プログラミングは基本的に必要としない単純かつ時間のかかる処理を短時間に実行するため、時間のかかるシミュレーションなどに向いているそうでし。しかし現在ニーズにあるように、今後は大量のデータがネットに流れ込むことになりますし、これを処理する高速な仕組みが求められています。となると、まさにビッグデータの分析などにこの「D−Wave」の活用可能性が高いため、非常に期待されているそうです。
何より素晴らしいのは、この量子ゲートを利用しない方法を考えたのが、東工大の西森秀稔教授だということでしょう。この方の考えた理論が今回の「D−Wave」に利用されており、当面不可能と言われた量子コンピュータの実現を可能にしたようです。
このように今後はこういった想像もつかない新しい仕組みや考え方が、世の中に多く出現する可能性が高まっています。さらにその新しい仕組みが、さらなる新しい仕組みを生み出すのかもしれません。Googleグラスはウェアラブルコンピューティングをより高いレベルで実現しますが、同時にGoogleは、カメラ機能のついたコンタクトレンズの特許を申請しました。メガネではなく、目の中で映像が記録される時代が、目の前まで来ているのです。こうしてSFの世界にしかなかった新しい仕組みや考え方が、世の中にあふれ出しています。我々IT技術者はそれらの技術に追従することは大切ですが、それ以上にそれを生み出す人間になっていかなければなりません。そのためには、これまで以上に「思考力」と「想像力」を高め、新しいアイディアを発想していかなければならない時代が到来しているのです。
このところの新人研修を通して感じるのは、若い方の思考力以上の想像力の欠如です。Youtubeだけに原因を押しつけたくはないのですが、やはりネットにおける大量の画像は人間本来の想像力を徐々に奪っている気がしてなりません。もちろん映画やテレビのCGもその一因であり、想像しか出来ないことがらすらなくなってしまっている感もあります。
人間は思考力を想像力をもとに、豊かな世界を作り上げました。同時に思考力と想像力が弱かったからこそ、発展の過程で自然を破壊し、地球規模で元に戻ることすら難しい状態を作ってしまいました。我々はもう一度この力を鍛え直し、本当に豊かな社会を創出するために努力を始めなければなりません。
=======================================
先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・都合により、近日更新いたします。
今週は、どんな一週間なのでしょうか。