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Weekly report
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 May Fourth week

 やっと幕があきました。とはいっても劇場でもなにか象徴でもなく、物理的に幕がなくなったということなのですが。

 実は私の事務所、自宅とも、同じマンションの敷地内にあります。昭和の時代に建った古いマンションなのですが、世帯数が多いおかげか10年に一度は大規模な補修を行っており、これまでも大掛かりな耐震補強工事やデジタル放送対応工事、通信等の規模拡大工事などを行って来ました。今回も昨年末から足場を組み、コンクリート劣化によるクラック(ひび割れ)補強を行い、大幅な防水シールと外壁の全塗装工事を行っていました。

 今回の計画では、12月に着工し、3月初旬には工事が完了している予定でした。ところが12月の始めに足場が組まれた後はほとんど工事が進んでいる雰囲気もなく、年が明けても本格的に工事を行っている気配がありません。なんとなく誤魔化しで作業を行っているような雰囲気であり、人数も数人と明らかに作業が滞っている様子でした。案の定3月になっても足場を解体するどころが外壁の薄利さえ行えず、結果として進捗は遅れに遅れました。まともに工事が実施されたのは4月以降であり、人数も数十人単位で作業を行うのでみるみる作業は進み出し、遅れること2ヶ月の今週になって、やっと足場の防護幕が外され、足場の解体が始まっています。

 この遅れの状況は私の所のマンション、どこの工事現場でも発生しているようです。原因を調べてみると、どこも現場作業員の人手が不足しているためで、その真因は景気浮揚に伴う建築ラッシュのようです。リーマンショック以降冷え込んでいた建築業界は、東日本大震災による特需で急速に人出不足になりました。その上2012年の阿部政権以降景気浮揚で公共投資や民間の建築ラッシュとなり、人手不足に拍車をかけてしまったようです。人手の不足は、現場作業員だけではなく設計者や施工管理者などの技術者にも及んでおり、それらの人材もあらゆる企業や現場で争奪戦になっているようです。特に問題となっているのは、市町村に所属する職員にもヘッドハンティングが及ぶため、公共工事や工事許可申請などに支障さえ起きているようです。

 人手不足といえば、深夜営業を行う外食産業も人手不足に悩まされているようです。大手牛丼チェーンなどは深夜の営業を一人のスタッフに任せていたため、非常に過酷な業務形態になっていただけでなく、強盗に狙われやすい店になっていました。結果としてアルバイトが大量に退職し、その後の新規採用も難しくなっていることから、夜間閉店を行ったり、リニューアル閉店という名目で業務を休止している店舗が増えているようです。

 3K職場離れは、日本のあらゆる産業で問題となっている事象であり、バブルの頃から問題視されていた事象でもあります。結果として製造業は空洞化し、若い労働力をもとめて外国に工場が移転したり、後継者不足から閉鎖される工場が増えました。アルバイトなどでも3Kが嫌われ、工場や配送などの仕事からサービス業などの綺麗な職場に移行していきました。しかしブラック企業と呼ばれるような、働く人間の人権を無視したり過酷な労働を要求するような職場が少しずつ増えてきて、今回のような事象が始まったように感じますし、今後も大きな問題として多くの企業に影響を与えるのでしょう。デフレの名の下に人件費は下げられ、同時に一人一人に要求される労働時間は延びて責任も重くなっていますから、そこで働く多くの若者の不満は年々大きくなっているように感じます。景気浮揚の影響もあって、今後もこの状況が単純には解決しないと思われます。

 またSNSの影響も本当に大きく、ブラック化した職場や企業の情報はあっという間に周知の事実となります。過去であれば多少問題があってもそれが広く世間に知られることはありませんでしたが、今は瞬時に問題がネットを駆け巡り、同様の問題を多くの若者が提起したりつぶやいたりする可能性が上がっています。本当は法に従い公正なことを行っていても、働く人間のかんに障ればつぶやかれ、結果として社会問題化する可能性もある世の中になってしまっています。

 このように労働を取り巻く環境はあらゆる意味で大きな変化を迎えていますが、ここで本気に考えないと、結果としてヨーロッパやアメリカなどで発生した移民問題が日本でも発生する可能性もでてきてしまいます。ヨーロッパやアメリカは賃金の安い労働力を確保するため、諸外国からの移民を認めました。しかし移民の量が適正にコントロールできなかったことから、多くの仕事が彼らに移行し、自国民の仕事を奪う結果となってしまった国がたくさんあります。その結果仕事を得られなかった自国の若者が不満をため、社会問題となっているのも事実です。となると、日本もこれからの労働力のあり方を本気で考えないと、やがて諸外国と同じ問題を抱えることになるように私には思えます。

 国そのものは、これまで以上に労働の流動性を高めようとしていますし、人の採用や解雇などより企業に有利に変えていこうとしていることは間違いありません。反面企業の人事政策は余り変わりがありませんから、一旦企業から離れた人間が、新たな職を探すことは、本当に至難の業です。さらに単純な労働さえ移民によって賄われてしまうと、それこそ働き口のない人間が急速に増える可能性があります。現在の人手不足は、上記の状況を加速させる前段階のように私には思えますし、ここで我々が舵取りを誤ると、いよいよ諸外国同様本質的な就職問題が発生する可能性があることを我々は知らなければなりません。 

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 先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。

・都合により、近日更新いたします。

 今週は、どんな一週間なのでしょうか。