7月1日、日本に新しいSIerが誕生しました。名前は「日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ」であり、総人員2,400名を越える大型SIerが誕生することになります。
この企業名から分かるとおり、この会社の主要株主はインドのタタ・コンサルタンシー・サービシズであり、インドの最大手財閥に所属するインド最大手のSIerになります。日本進出は20年ほど前でしたが、日本での市場開拓に苦労し目覚ましい実績を挙げるのに困難を極めていました。そこで今回は三菱商事と共同出資で日本タタ・コンサルタンシー・サービシズを立ち上げ、再度日本市場を攻略するようです。
持ち分はTCSが51%、三菱商事が49%ですので、タタグループとしての色合いが強くでた新会社となります。
三菱商事は古くからコンピュータを取り扱っており、その販売会社として三菱事務機械という会社を持っておりました。三菱事務機械の歴史は古く、1960年代のコンピュータの黎明期から活動されている名門企業でした。その後地道にSIerとしての活動を続けましたが、2001年に三菱商事のIT関連企業4社と統合され、ITフロンティアという名前に改称し新しく活動を行うことになりました。昨年は従業員数1,600名弱、売上560億円ほどの成績を上げており、中堅SierとしてアウトソーシングやERPなどの分野で活躍されていたようです。今回の日本タタ・コンサルタンシー・サービシズの発足に当たって、旧タタ・コンサルタンシー・サービシズ・ジャパンと統合され
、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズとして新たなる活動を行うことになりました。
ご存じの通り、インドのSIerは古くから日本進出を図ってきました。タタもERP全盛期の1990年代後半に日本進出を図りましたし、インフォシス・テクノロジーズも同時期に日本に進出しています。しかしながらインドIT企業の日本での活躍は、現在まで非常に難しいといわざるを得ませんでした。
もともとインドのIT産業は非常に技術力が高く、世界でも人気のオフショア開発国です。米国の有力IT企業の下請けとしてその地位を築き、技術力の高さとコストの安さで世界のIT化に貢献しています。しかしながらインド人の国民性が日本とあわないのか、日本での展開はなかなか進まないといったのがこれまでの状況でした。インド大手のウィプロはCTCと提携して日本進出を図っていますが、コールセンター業務以外はめざましいビジネス展開は図れていないようです。タタ・コンサルタンシー・サービシズは10年ほど前に、日本市場の売上を全体売上の30%程度まで増やす、とした計画を掲げていましたが、その後も5%前後と増えることはありませんでした。昨年発表された計画では日本市場に直接進出するのではなく、日本企業のシステム化のテストセンターとして機能することを掲げていました。
ところが今回、こういった方法で日本進出を図ったタタ・コンサルタンシー・サービシズの姿勢は、相当本気のように思われます。三菱商事は三菱グループの中核企業ですので、その関連企業のシステム化の一部を獲得するだけでも相当なシェアを奪えるでしょう。逆に依頼する側の日本企業は、ITフロンティアという確固たる日本の中堅SIerに発注することと同じですし、他のSIerよりコストが安く、同時に日本のエンジニアが要求定義・設計したシステムを、社内の一部と言えるインドで開発からテストまで最終的な責任を追ってもらえる期待もあります。となると、外注として中国やインド、ベトナムを利用しているSIerよりも、会社として一体化している日本タタ・コンサルタンシー・サービスズのほうが、信頼のおける日本のSIerと判断される可能性もあります。
このように今後は、世界の有力IT企業がこのような形で日本に進出してくるケースが増えると思われます。それは日本のSIerに脅威となるだけでなく、日本企業に新たで安価な新しいシステム化方法を生み出すきっかけになるかもしれません。日本のSIerは、今後についてより真剣に考える必要性が高まったようです。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・都合により、近日更新いたします。
今週は、どんな一週間なのでしょうか。