新しい時代が始まりました。とはいえいつもの変化論ではなく、本当に新しい時代が始まったのです。
というのは、実はモータースポーツの話。
この週末、北京でフォーミュラ−Eというレースが始まったのです。このレースのどこが新しい時代かというと、このレーシングカーにはエンジンがなく、電動のモータで動く電動自動車というところが新しいのです。自動車レースの歴史は1800年代末から始まっていますが、その歴史で始めて、電気自動車での本格的な自動車レースの幕開けとなったのです。
フォオーミュラーカーとは運転手がキャビン内に入っていないタイヤがむき出しになった車体のレーシングカーのことであり、さまざまな規格のレースが、世界中で開催されています。その中でも一番有名なのはF1(フォーミュラー1)であり、世界中を転戦し人気を博しています。その他にもエンジンや車体の規格が異なるF3000やF3などのカテゴリーも存在しますし、速度と技術を競うレースの世界を盛り上げています。
これらに共通するのはガソリンエンジンを使うことであり、高出力エンジンをフル回転させるために沢山のガソリンが使われています。その消費を抑えるべくエンジンの規格を小さくしたり、出力の制限を持たせたりの規格変更は都度都度行われていますが、それでもフォーミュラーカーといえばエンジンの爆音が特徴ともいえるとおり、沢山のガソリンが消費されていることは間違いありません。アメリカではフォーミュラーレースとしては、インディカーがありますが、こちらは生物由来のエタノールを利用しています。昔は純粋なメタノールが利用されていたようですが、アルコールは事故などで発火しても炎が見えないため、現在は15%ほどのガソリンを混ぜた燃料を利用しているようです。
このように燃料の違いはあれ、これまでのフォーミュラーカーレースは基本的に内燃機関を積んだレーシングカーによって行われてきました。しかし地球温暖化と世界的な資源保護の流れから、今回電気というエコなエネルギーを使ったフォーミュラーレースが始まったようです。
今回のフォーミュラーEは電気自動車ですから、内燃機関ではなくモーター駆動になっています。まだまだバッテリーの問題があり他のレースの半分程度の周回数(走行距離)ですし、ピットに入って燃料の補給も出来ないため、途中で車の交換(ドライバーがレース中に別の車体に乗り換える)特殊なレーススタイルになっています。また本格的なレース場を使うと、スピード不足や車の動力性能(急加速をすると、バッテリーが激減する)から、レースの醍醐味である追い越しなどが難しいと判断されたのか、すべて街中をつかった公道レースになっています。しかしそれでも最高速度は200q/h以上でるようですし、今年はすべて同じ車体で競われるレースも、来年にはそれぞれのチーム独自の設計で車が作られるようですので、本格的なレースになっていくことは間違いないように思われます。
土曜日には、リアルタイムでレースが中継されました。レースの結果はネットのニュース等でご覧いただければと思いますが、初めてにしては非常に白熱したレースだったように思いますし、今後の可能性を感じさせるものでした。なにより印象的だったのは、その走行音でした。これまでのモータースポーツは車の爆音がつきものでしたが、今回はモーターの回る金属音(キーンという回転音)とタイヤからの音だけの非常に静かなレースでした。多くのレースカーが他のフォーミュラーレース同様非常に高速で競っているにもかかわらず、観客の声援のほうが強く聞こえるのは本当に印象的な風景でした。
競争は人間の本能ですし、レースは人間の英知と技術の戦いです。自動車のレースが自動車の性能向上につながったのは事実ですし、今後も自動車のレースそのものがなくなることはないでしょう。しかしあまりに技術が進歩しすぎて、一部の大手スポンサーしか参戦の余地がないレースや、環境負荷が高く自動車や社会の発展に寄与しないレースは淘汰されていく可能性は高いように思います。今回のフォーミュラーEは、電気自動車の性能向上につながる可能性があります。たとえばよりコンパクトなバッテリーや画期的な制御・冷却装置、交換可能なバッテリーボックスなど、電気自動車が内燃機関にとってかわるために必要となる技術の基礎が、ここから生まれてくる可能性は高いと思っています。だからこそ、今回のレースにさまざまなメーカーが積極的に参加し、画期的な車体を生み出していくことを私自身願っていますし、実際にそうあって欲しいものです。
さて今回のレースでもう一つ面白かったのは、ドライバーの顔ぶれです。往年の名選手の子息が、見事にドライバーを務めていました。最後までレースを引っ張ったのは、往年のF1ドライバー、アラン・プロストの息子ニコラ・プロストでしたし、そのほかにもネルソン・ピケの息子のネルソン・ピケJr、不慮の事故で亡くなったアイルトン・セナの甥のブルーノ・セナなどが参戦していました。親の世代は内燃機関、息子の世代は電気自動車と、ここでも大きな世代交代を感じたレースとなりました。
今年のシリーズは、世界で10戦のレースが行われるようです。これによって新たなスポンサーが見つかり、来年以降のシーズンが盛り上がることを期待したいと思います。
閑話休題。
私の敬愛するジャズピアニストの、ジョー・サンプル氏がお亡くなりになりました。ジャズ・クールセダーズの一員として活躍され、早くからソロ活動も活発に行われていました。親日家であり、その温かみとメロディアスなプレイは、多くの人を魅了しました。一流のジャズプレイヤーがまた減ってしまったのは、本当に残念です。
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・都合により、近日更新いたします。
今週は、どんな一週間なのでしょうか。