スターバックスが上場廃止を決めました。
というのは成績の問題ではなく、スターバックス・コーヒー・ジャパン社の経営形態が変わるためです。もともとスターバックスは1996年に日本に進出する際、Afternoon
teaなどの雑貨店を展開するサザビー(現サザビーリーグ社)社と提携して店舗展開を図りました。これは米スターバックス社のシュルツ氏の考えに基づくものであり、通常のフランチャイズ方式を一線を画した店舗展開となりました。
シュルツ氏が日本でスターバックスを展開する際、フランチャイズ方式をとらなかったのは、その風味を大切にするため、といわれています。通常のフランチャイズ方式ですと、フランチャイズ店は本社の指導のものコーヒーを提供することになります。しかし利益確保に走るフランチャイザーがいると、コーヒー豆の量を減らしたり、他の安価なコーヒーを混ぜてしまう可能性があり、結果としてスターバックス独自の濃さと香りが保てなくなるのでは、というのがシュルツ氏の心配だったそうです。そのリスクを軽減するため、スターバックスブランドを直営店で展開すればよいのですが、それには日本の文化や店舗展開場所の独自のノウハウ等が必要になります。そういったものを持っていなかった米スターバックス社は、日本展開の際にそれらのノウハウを持った企業と協業することを決めたそうです。
提携相手に選ばれたのが先程のサザビー社であり、そのノウハウとスターバックスのブランド力で、あっという間に日本でも数多くの店舗が展開されることになりました。この夏は、現在では、スターバックスが未進出の県は鳥取県のみになったように、日本全国でこのブランドのコーヒーが親しまれています。
しかしながら今年になって関係が変わったようで、米スターバックス社がサザビー社から株式を全面取得することによってスターバックス・コーヒー・ジャパン社を完全子会社化することが決まったようです。これに伴ってスターバックス・コーヒー・ジャパン社は上場を廃止し、米国のオペレーションの元新たな一歩を踏み出すことになりそうですし、サザビーリーグ社は一千億円近い株式の売却益を元に、次の一手を講じていくようです。
しかしこの売却の影で、創業社長であった角田雄二氏が退任されており、今後は伊勢丹出身の関根純氏がスターバックスを引っ張っていくようです。角田氏はサザビーリーグを起こした鈴木陸三氏の兄であり、逗子の有名スーパースズキヤの一族です。若い頃親戚の営む葉山の有名料亭日影茶屋に養子で入り、その後スターバックス・コーヒー・ジャパンの創業とともに社長として同社を牽引してきました。今回サザビーリーグ社がスターバックスの経営から離れることで、創業社長でもある角田氏も退任されたようです。これまでのスターバックス・コーヒー・ジャパン社を牽引してきたのは角田氏ですので、米国の思惑が強く反映されるであろう今後の日本展開や商品展開は、これまでのようにうまくいく保証はないような気がします。
日本の外食や企業文化に詳しい人間が米国のブランドを牽引した例には、日本マクドナルド社や日本トイザらス社を設立した藤田田氏がいます。藤田田氏は米国の有名企業と提携し、両ブランドを日本の有数のブランドに押し上げてきました。日本マクドナルド社は価格破壊による業績悪化の責任をとって藤田氏が退任した後は、米国主導で運営を行っていますが、ここにくるまでかつてのようなブランドイメージを確立できずにいます。日本トイザらス社も同様であり、上場廃止後これまでのような大規模な展開やブランドを確立できずにいます。
ライバルであるタリーズも、同様に感じます。タリーズ社は、現在は参議院議員である松田公太氏が米国在学中、数多くのコーヒーショップと直接交渉しフランチャイズ契約を勝ち取ったブランドです。コネもお金も持たない松田氏が、強い想いとこだわりをもって交渉し、東銀座の小さいショップから全国展開できるブランドに育て上げたのがタリーズ社です。その後の多角化の失敗で結局現在は伊藤園の傘下にありますが、松田氏が経営を行っていた頃の輝きは、現在のタリーズからは残念ながら感じることはできません。
これらの例を見る限り、今回の米スターバックス社による日本でのスターバックスブランドの維持拡大は、決して平坦な道ではないことが分かります。米国流のマーケティングやプロモーションは、必ずしも日本の文化にはあわないところがあるからです。逆に日本文化を理解しながら米国ブランドを上手に展開するためには、創業精神を持った日本人が、自らのこだわりと想いをもって経営していく必要があるように私には想えます。かりに日本人が経営を行ったとしても、タリーズ社のようにこだわりや想いがなければ、市場にある数多くのブランドの一つになってしまい、その独特の輝きを維持することは難しいように感じます。
スターバックス社の今後がどのようになるのか、個人的には非常に興味がありますし、現在よりも陰りが見えるとすると、いよいよ米国ブランドを日本で育てるための条件が少しずつ明らかになるかもしれませn。そしてそのヒントが、マクドナルドやトイザらスといったブランドの再生につながるのか、今後の興味は尽きません。
閑話休題。
米スターバックス社の完全子会社化に伴い、どうもコストコというディスカウントチェーンでのスターバックスコーヒーの廉価販売ができなくなったようです。1kg2000円程度と破格の値段でスタバのコーヒーが飲めたのですが、これが買えなくなったのは、コーヒー中毒の私には本当に痛いところです...
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先週面白かった日経産業新聞の記事は、以下の通りです。
・都合により、近日更新いたします。
今週は、どんな一週間なのでしょうか。