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Weekly report
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 March Second week

  またこの日がやってこようとしています。

 早くも4年が過ぎ、人々の記憶からその生々しさが消えつつあります。あんなに暗く沈んだ日々が、すっかり過去のこととなり、街は何もなかったような賑わいを見せています。日本経済も一時の停滞感から抜け出し、景気のいい話も所々で聞こえてきます。都会は次々と大きなビルが作られていますし、オリンピックに向けた再開発も進もうとしています。新しい高速の開通で東京の渋滞は解消される可能性が高まっていますし、空港も多くの航空会社が陣取り合戦を進めています。

 しかし未だに福島では、メルトダウンした原発の廃炉に向かった作業が遅々として進んでいませんし、想定外の事象といいながら放射能を外部に漏らし続けています。冷却水の処理は未だに確立していませんし、ちょっとした自然の変化の都度、なんらかの放射能漏れを続けています。現場では沢山の人間が被爆の脅威におびえながら真剣に作業しているのでしょうが、肝心な技術のほうは未だに確立できず、ただただ日々の流れに身を任せてしまっています。

 街の復旧も進まず、さまざまな利害の対立を生んでいます。災害に強い街をつくる、という理想はあっても、現実はそれを行っても人が戻ってくる可能性は高くありませんし、投資に見合った産業が復興することも期待薄かもしれません。苦労しながらビジネスや生活を必死に営んでも、先が見えない状況は続きますし、都会の反映の影で物も人もどんどん減っていくのが復興の街の現状なのでしょう。

 我々はもう一度考えなければなりません。日々可能性が高まっている首都圏への地震が想定される以上、今後どうしていくべきかを。そのときに何とかなる、ではなく、どうすれば都市機能を少しでも早く回復でき、再び人々が安心して生活できるかを真剣に検討しなければならないのです。オリンピックは大切であっても、それ以上に未来に向かって悲劇を無くすことのほうが、より大事なはずです。

 地震を無くすことは出来ません。しかしその被害を極小化することは出来るはずですし、その後の復興をより早く進めることは出来るはずです。再建に向けた利害を調整する法律をもっともっと整備すべきですし、各種の支援金や補助金を効率よく利用する仕組みも、災害前の利害対立が低い時であればよりはやく作り出すことが出来るはずです。現場の防災訓練も大切ですが、それ以上にヘッドクォーター(司令部)の整備と訓練のほうがずっと重要になります。

 ITにできることだって、もっともっとたくさんあるはずです。離ればなれになった家族と連絡を取れるだけでなく、怪我をした人間と医療機関を結ぶ仕組み、被災地から離れた病院や介護施設への移送を行う仕組み、災害時の交通を確保と緊急車両を優先させる仕組みなど、ありとあらゆる事態に対してアプリケーションシステムを作り、クラウド化しておく必要があるはずなのです。企業の納税を一部減免する条件で、それらの開発と運用をSIerに依頼すれば、多くの企業が高度なシミュレーションシステムを構築できるでしょうし、産業の活性にもつながります。それを平時は物流企業や各種企業に提供すれば、その開発コストを回収することは可能でしょうし、有事の際には沢山の人を救う手段になります。

 東日本大震災とその後の復興状況を通して、さまざまな問題は明らかになっています。となると、あとは復興庁だけではなく、多くの官庁が共同でこういった問題を研究し、少しでも早くさまざまな法律を整備し、組織を再編し、仕組みの構築と運用を行うべきではないか、と私は考えます。

 東日本大震災で亡くなった1万8千人の思いと、その後の復興の中で多大な苦労を重ねている人々の思いを、我々はムダにしてなりません。