ゴールデンウィーク中の海潜亭営業のため、更新が遅れまして申し訳ありません。
さて悲しい話なのですが、またまた書店の閉店が続いています。ゴールデンウィークに熱川の海潜亭の営業のため、先週末の業務終了後品川駅に向かいました。ゴールデンウィークの混雑を考え、一応新幹線の指定席をとっておいたのですが、予想より早く品川に到着したため書店で時間をつぶすことにしました。品川の港南口側には、駅のすぐ脇に
「あおい書店」、通路を渡って反対側に「くまざわ書房」があるため、駅に近く売り場面積が非常に大きい「あおい書店」に向かいました。
ビルに入ってすぐ右側に店舗があるのですが、そのビルに近づくといやな予感が...窓に不透明のビニールが貼られ、店舗の中が見えないのです。店舗の入り口に行ってみると案の定、閉店のお知らせが貼られていました。どうも3月の中旬に閉店してしまったようです。向かいのくまざわ書店はビジネス書の取りそろえが今ひとつなので諦めましたが、これでまた大型の書店が一つ無くなってしまいました。
実は今年の二月にも、私が新宿での時間調整に使っていた小田急百貨店内の三省堂書店が閉店してしまっています。かつて小田急百貨店のワンフロアすべてが三省堂書店でしたが、売り場階数の変更とともに面積を四分の一ほどに縮小して営業を続けていました。
しかしながら書店不況のせいか、とうとう閉店となってしまったようです。数年前の九段下の啓文堂の時もショックでしたが、こうして書店が次々と閉店してしまうことは本当に残念ですし、書籍販売ビジネスにおける由々しき問題とも思えるのです。
書店の閉店が続くのは、ネット書店の影響が大きいことは間違いありません。欲しい本がすぐに探せない、なかった場合は注文してから何日もかかるというのがこれまでの書店の姿でした。しかしネット書店を使えば、基本的に日本で流通するすべての書籍を手に入れることが可能ですし、仮に在庫切れでも、他の多くのネット書店を探せば意外と簡単で短期間に手に入れることが出来たりします。さらに最悪絶版の場合でも、中古が数多く表示されますから、よほどの本でもないかぎりは間違いなく読みたい内容を手に入れることが出来ます。
さらにリアルの書店では、万引きの問題がどうしてもつきまといます。一冊の書籍を販売して店舗が受け取れる手数料は売価の20%程度といわれています。となると一冊の書籍を万引きされると、同価格の書籍を4冊売っても利益は出ないことになります。書籍は比較的高単価の割に万引きしやすい商品でもありますし、ネットでの販売やオークション、中古書籍買い取り店など多くのチャネルで現金化することが可能です。したがって完全に万引き側のモチベーションが高まり、それを防御するすべのない書店は廃業に追い込まれてしまうのです。
大日本印刷は、かつて書籍にRFIDを搭載する計画を立てていました。そうすれば、その書き込み履歴を見ると、その本が書店の入庫後履歴が書き込まれていなければ、万引き書籍と見なせる仕組みを作ろうとしました。しかしそのコスト負担を出版社側に求めることが難しく、その計画は頓挫したままになっています。ところがよくよく考えてみると、どうも出版社も大日本印刷もネット書店に販売が移行することを予想し、結果的にこの施策にでなかったというのが真実かもしれません。つまりネット販売では万引きがあり得ませんから、RFIDそのものを搭載する必要がなくなり、コストも不要になると考えたように思えるのです。
私は今でも多くの書店で、師匠の教え通り目方(重さ)で書籍を購入しています。これを20年も続けていると、目方でだいたいの値段も分かるようになります。書店に行けば新刊の平積みの書籍をチェックし、面白そうな書籍をできるだけ多く購入し読むようにしています。しかしネット書店になると、この平積みの書籍を眺めることが出来ないため、非常に書籍を購入することが困難です。
書店は店員の考えで、新刊とそれに関連する書籍を上手に平積みします。こちらとしても、ビジネスやITの書籍売り場を広く眺め、現在のトレンドや興味のありそうな本を手に取ります。しかしネットでは書籍の分類が細かくなされてしまっているため、広く書籍を眺めることが出来ません。ランキングはあってもそれは販売数に依拠したものですから、どうしても芸能人や著名人が書いた本やノウハウ本がランキングの上位を占めてしまいます。海外の専門家の書籍は一般に難しくそれほど数が売れませんから、ランキングに登場すらしません。ましてや発売直後であれば、まずランキングの上位に上がることはないでしょう。
さらに新刊・旧刊をとわずその時のトレンドに合った書籍を探したいのですが、それも意外と難しいのがネット書店です。関連する書籍として表示されるものの範囲が狭く、類似のタイトルを表示することが限界です。トレンドをつかもうにも、ネット書店のレコメンデーションにあがらないものは表示されることはありません。
このようにリアル書店がなくなると、私のように書籍を多く購入する人間にとって非常にダメージが大きくなります。これは書籍業界をささえるヘビーユーザーすべての悩みのように思えます。書店のビジネスが成り立たなくなっていることが事実なのであれば、こういったユーザエクスペリエンスを満たすネット書店の出現が切望されているように思います。物販としてのネット書店ではなく、リアル店舗を凌駕するインターフェースをもったネット書店の出現を、私は待っています。