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 May Second week

 箱根の火山活動が、活発になっています。

 事の発端は今年の四月ですが、大涌谷周辺の箱根火山の火山活動が急に活発になったことです。噴火警戒レベルは「2:火山活動の状況を見守っていく必要がある」とされており、今後は小規模の噴火も予想されています。それに伴い大涌谷の半径3キロメータが立ち入り禁止となり、地元の観光などに影響が出始めています。

  もともと箱根は東京近郊の有数の温泉地でした。しかしバブルを境に観光が海外中心となったため、日本の多くの温泉地同様観光客を失ってきました。そこで箱根は積極的に海外からの観光客を呼び寄せる施策をうち、北海道のニセコ同様世界に知られた観光地となりました。

 今回の件が地元にとって非常に気の毒なのは、ゴールデンウィークの時期に活動が活発になったことでしょう。4月から梅雨入りまでの時期は、箱根の観光シーズンの一つになります。日本中から景勝地である箱根に人が集まってきますし、大涌谷は火山活動を身近に体験できる重要な観光ポイントです。ここで作られる黒たまごは名物ですし、海外からも多くの観光客を集客しています。

 しかしながら今回の状況で、ホテル等のキャンセルも相次いでいるようですし、絶好の観光日和もむなしい状況でしょう。大涌谷も当然訪れることは出来ませんし、ロープウェイも休止の状態のようです。立ち入り禁止区域内に箱根の多くのホテルが利用する温泉の源泉があり、このメンテナンスも現状はできないことから、最悪数日で温泉の供給が止まってしまう可能性もあるようです。もちろん名物の黒たまごも生産できませんから、土産物屋としても大きな影響が予測されます。いずれにせよ、箱根にとっては非常に大きなダメージになっているようです。

 こういった反応が出てしまうのは、昨年の御嶽山の影響であることは間違いありません。戦後最大のこの災害により、60名弱の方が亡くなり、多くの被害者が出ました。今回の箱根はここまでの大事になる可能性は低そうですが、それでもその災害の教訓を生かそうとすることは理解できます。

 しかしながら、現状ではまだまだ正しい客観的な情報がつかみにくいため、風評により箱根を訪れる観光客が減ってしまっていると思われます。箱根同様噴火警戒レベル2の蔵王山近くの蔵王温泉でも、風評被害により観光客が激減しました。結果として中堅のホテルがこの5月に廃業を決めるなど、実際に危険が無くてもその情報が正しく伝わらないため、観光地に大きな影響が出てしまいます。火山国である日本では、温泉が出る場所付近は基本的に地殻活動の活発な場所ですから、温泉を資源とする観光地に同様の問題が起きる可能性が非常に高いといわざるを得ません。となると、今後も見据えて、火山活動と観光のあり方を検討していなければならないと思われます。

 伊豆大島や三宅島など、全島避難という困難な時期を経ながらも、火山と共存している街はたくさんあります。大切なことはリスクを完全に回避しようとすることではなく、リスクを正しく分析しその情報を提供することのはずです。噴火のリスクがあるから行かない、というのは観光客にとっての一つの判断ですが、その根拠となる情報が噂や風評では合理的とは言えません。とはいえ観光地やホテルが一方的に安全を宣言しても、それを信じる観光客も少ないと思われます。となると、やはり公的な機関が危険を宣言するだけではなく、付近の安全性もきちんと伝えることが重要に思われます。

 噴火警戒レベルを引き上げるのは気象庁ですが、観光を管轄する観光庁もきちんと気象庁と連携をとって、観光地の安全性を評価すべきと私は考えます。危険だけを公的な組織が発表し、安全性は自己判断というのは観光地にとって非常に無責任に感じられるでしょうし、危険を宣言するからこそそれ以外の安全性もきちんと担保すべきとおもうのです。そうすれば付近の観光施設はきちんと営業が出来るでしょうし、安倍政権の観光立国という考え方もきちんと確立できるように私には思えます。そして危険性/安全性の両面をきちんと世界に向かって発表し、世界の観光客が正しい情報で訪問地を決められるようにするのは、国の努めのように私には思えるのです。逆にこういったことを国が責任を持ってやらないほど、結局は日本の観光地の魅力度が下がり、日本の産業全体に大きな影響を与えかねないことを、我々は真剣に考えなければなりません。