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 May Fourth week

 「魚の刺身」は対象で、「刺身の盛り合わせ」は対象外です。「牛挽肉」や「豚挽肉」は対象で、「合い挽き肉」は対象外です。このクイズのようなものが何のことか、おわかりでしょうか?

 正解は軽減税率です。自民党と公明党はによる税制協議会は、消費税の軽減税率導入に向けた具体案の検討に入ったようです。この不可解な分類はまさに軽減税率の適用対象か対象外の線引き部分であり、いかにこの制度が恣意的で合理性に欠くかをよく示しているように思われます。

 今年3月の国会によって、2017年4月から消費税が10%に上がることが決定されました。国民には非常に大きな負担ですが、破綻しかけている財政を立て直すためには必要な措置かもしれません。IMFの中立性はこの際論点から外すことにしても、IMFは日本の消費税を最低15%まで上昇させるべきとの勧告を出していますから、やはり消費税の上昇は必要といわれており、事実このために10%まで国民の負担が上がることになりました。

 しかしながら、所得が低い人ほどこの影響は大きいことになります。所得税のように所得に応じて税率がかわるものならばまだしも、消費税は売買行為に直接賦課されますから、所得の多少にかかわらず公平に課税されることになります。しかしながら年間1000万円の収入がある家庭が100万円の消費税を支払うのと、300万円の家庭が30万円の消費税を払うのでは、残った可処分所得の額が大きく変わってしまいます。となると、この不公平を解消するための手段が必要になりますし、その意味で今回の軽減税率が意味を持ちます。

 ところがこの軽減税率、先程申し上げたとおり非常に恣意的な側面を持っています。原則は低所得者の負担軽減ですから、低所得者層が購入しそうな物品に関して軽減税率を適用すべきです。ところが低所得者が何を買うかは非常に決めにくいというのが現実であり、適用対象を決めることが非常に困難になります。今回の論議でもあるとおり、米などの毎日食べるべきものは低率を適用すべきと思います。しかし米の値段を考えるとピンキリであり、ブランド米と通常の廉価な米の価格差は軽く10倍程度はあります。となると、廉価な米は低率、高価な米は高率としたいところですが、その価格の境ををいくらにするかは非常に難しい問題となります。

 また今回の案では、ペットボトルの水は低率適用で水道水は高率適用になるなど、その意図がよくわからない物品もあります。またレストランは低率適用であってもパンは高率適用になるなど、本当に低所得であればレストランよりパンを購入するであろうという一般的な常識に反するような税率となっているものもあります。実際に運用が始まれば様々な不合理が議論されることになるでしょうし、その論議の中で対象品目が常に変わり続ける可能性があります。

 このように軽減税率は非常に混乱が予想されますが、それでも導入されることは間違いないのでしょう。となると軽減税率の問題は、企業の情報システム化に大きな影響を与えることになります。

 これまでも申し上げてきたとおり、軽減税率の導入によって、企業の全システムの入れ替えが必要となります。これまでのように消費税のパラメータを5%から8%に変更するだけで対応は出来ませんから、新たに複数の税を適用できるよう情報システムを変更する必要があります。これは企業の購買や販売だけでなく、人事や給与もすべて対応しなければなりませんから、全面的なシステム更新になります。大企業でも大幅な作業になるでしょうし、中小企業は非常に負担が大きな投資になる可能性が高いです。さらに商品マスター等の定期的な更新も必要でしょうし、対象品目の改定の都度マスターの見直しやテスト等が必要になります。

 これだけの負担に耐えられる中小企業は、思ったより多くないかもしれません。しかしながらシステムの更改なしにビジネスを継続することは不可能ですから、これをきっかけにクラウド化が大幅二進むというのが私の予測です。逆にクラウドの主体となれないSIerは今後大幅二仕事を失うでしょうし、その市場が元に戻ることはないでしょう。

 PCの普及とともに値段が下がり、スマホやタブレットの登場でPCそのものの市場は年々縮小しています。情報システムに対する投資も同様になることは十分考えられますし、開発業務そのものも海外に流出していくでしょう。その引き金となるべき事象がたった2年後に起きることを我々は真剣に考えなければなりませんし、その中で生き残るための準備を今から始める必要があることを知らなければなりません。