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Weekly report

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 November Fourth week

  パリで大きなテロが起きました。現時点で130名以上の方がお亡くなりになり、多くの人々が病院で治療を受けています。衷心よりお見舞い申し上げるとともに、これ以上のテロや被害が広がらないことを祈るのみです。

 今回のテロは、厳戒な警戒下にあったパリで起きました。今年の1月、パリの風刺新聞を出版する会社が襲撃され、12名もの死者を出しました。無差別攻撃ともいえるこの襲撃はパリ市民に大きな恐怖を与え、フランス政府はその後厳戒態勢を敷いてきました。

 もともとフランスは、植民地政策の結果として多くのイスラム教徒が移民として国内に入っており、さまざまな場所で居住しています。しかしその差別は厳然と存在し、フランス経済が停滞をしている近年は右翼主義の台頭とともにイスラム教徒への差別が強くなっているようです。右翼主義に走る若者の多くが低所得層の出身であり、彼らが本来従事すべき職業を、移民に奪われているというのが彼らの主張です。

 それに反発するイスラム教徒の若者もいるでしょうし、そこに対立が起きる火種は常に存在します。となると、明確にISILの主張に同調しなくても、差別への反発としてフランス人への報復が起きやすいのが今回の大きな問題でしょう。さらに現在はシリア難民が多くのヨーロッパに流入していますから、その問題も今回のような火種に油を注ぐ結果となっているようです。

 宗教や信条による対立は、世界中で起きています。日本は世界でも珍しく宗教に寛容な国のためこういった対立を理解することは難しいですが、世界では同じキリスト教徒でも宗派の違いで大きな対立が生まれることも普通に見られます。となると完全に違う宗教であれば、本質的な対立は不可避となる可能性がありますし、その意味で今回の事件は根深い問題を抱えています。

 もっとも全ての宗教において、その過半数の信者は極めて穏やかであり、お互いの宗教を認め他の宗教の信者を思いやる心を持っています。しか し宗教は直接関係なくとも自分の主義主張を押し通したい人間が、その大義として宗教を担ぎ出し、その教義を捏造、変節させる行為が近年の事件で多く見受けられます。イスラム教を調べると、自殺と殺人は禁忌とされているようですが、自爆テロはその両者を行っています。つまりイスラムの教義を積極的に破ることを行っているわけであり、宗教的な矛盾になってしまいます。

 今回の件で私が違和感を感じて考えさせられたのは、フランス首相の「今回の事件はフランスに対する戦争行為である」という宣言でした。私はテロは犯罪と考えますし、戦争ではないと思います。戦争は国家間の主張を強制力をもって喧伝する行為であり、その結果が戦闘行為になります。戦闘は国対国であり、そこで国家を構成する非戦闘員が巻き込まれることもいたしかたなし、という前提があります。しかしテロは犯罪であり、いかなる身分の人に対してもその身体の自由や生命を危機に陥れるものでれば、確実に取り締まられなければなりません。

 今回の事件を戦争とするのであれば、フランスは一般市民を巻き込む可能性のあるシリア空爆を行っていますから、今回の犯人と立場は一緒になってしまいます。つまりキリスト教を中心とした先進国の大義で、対立するイスラム教のISLSを攻撃しているのですから、一般市民が巻き込まれるのは仕方なしとしているように思われるのです。となると今回のテロも同様の理由で正当化され、テロ行為そのものが断罪出来なくなります。

 主義主張の対立は、人が人である限りなくなることはない問題と思います。それを強制力をもって解決しようとするのは間違いであり、戦争行為はあってはいけないことです。しかしそれ以上に無垢で善意の人間の身体や生命を危うくする犯罪は、確実に取り締まられなければならないはずです。今回の件は、私には犯罪にしか思えません 。これを戦争行為として空爆という報復を強めれば、結局この事件の被害者が戦争に巻き込まれた一市民となってしまうことを、我々は真剣に考えなければなりません。