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Weekly report

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 December Third week

 夫婦別姓について、合憲の判断が下されました。

 現行の民法においては、婚姻によってどちらかの氏(姓)を選択することを届け出の形式要件としています。したがって結婚の届けを出す際に法的にはどちらかの姓になることになり、別姓を選択することは出来ません。別姓を維持するためには事実婚(法的な届け出)をせずに夫婦になる方法がありますが、その後の子供の姓の問題や相続の問題など、さまざまな障壁があります。そのため別姓を主張する意見があり、法律を改正すべきという論議が起きます。

 今回の裁判は、憲法に定める婚姻の自由を民法が制約しているため、民法の規程は違憲でははないか、ということについての判断でしたが、裁判所は合憲と判断をしました。別姓を望んでいた多くの方々にとっては失望が強かったと思われますが、今回の判断では夫婦別姓は「合理性がないと断ずるものではない」ともしていることを我々は忘れてはいけません。最高裁判所は合憲違憲の判断については現行民法は合憲としただけで、夫婦別姓そのものがいけないと言っているわけではないのです。さらに、「制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならない」としており、民法の規程を変えることは問題ないとの判断も示しています。

 今回の件で、夫婦別姓の論議がさらに高まることを私は期待していますし、やがては法律が変わって別姓が認められることが望ましいと思っています。もちろんそれは、同姓を選べないということではなく、別姓も選択できるということです。同姓か別姓かの判断は個人の自由の範囲であり、それを法が阻害することは基本的に望ましくない、というのが私の考えです。さらにそれが今回の争点である、民法の規程が個人の自由を認めた憲法にも反する、という訴訟の根拠となっています。最高裁は、個人の自由を阻害しているとまではいえない、と判断しているだけで、別姓そのものを認めないといっているわけではないので、この論議はもっともっと真剣に行うべきと私は考えます。

 私の周りにも、複数の別姓を選択する夫婦がいます。しかし彼らの苦労を聞くと、本当に気の毒としかいえない現状があります。例えば結婚をしていない場合、男親は自分の子供を法的に実子と証明することが非常に困難です。女親は産んだという事実があるため自動的に実子となるのですが、男親は結婚をしていない以上、自分の子供ということを法的に証明する必要があります。夫婦別姓が認められていないため、事実上の夫婦であっても戸籍は別ですから、子供はどちらかの戸籍を選択する必要がありますし、女親の戸籍に入ると、その子は男親の認知による非嫡出子(婚外子)扱いを受けてしまいます。

 もちろん学校においても申請書類などでさまざまな指摘を受けますし、自分の子供であることを証明するために様々な労力を払わなければならい、といった問題も起きます。もちろん常識的にも差別的な扱いを受けることも少なくなく、別姓だけで離婚者と思われる、とぼやく仲間もいます。

 もちろん婚姻によって法的には同姓になっても、職業上は別姓のままの方はもっと多くいらっしゃいます。結婚後も仕事を続けられている女性にそれは多いと思いますし、会社のさまざまな法的な書類上は会社の通り名と違う姓を書かなければならないため、非常に煩雑と聞きます。さらに婚姻によって姓を変更したものの、離婚して姓を元に戻すことも非常に大きな問題がつきまといます。自分としては問題がなくても、自分の戸籍が変わると子供の姓も変わってしまうため、子供が不利益を受けてしまうのです。私の知り合いにもいらっしゃいますが、離婚したので旦那の姓は名乗りたくないのに、子供のために我慢していることが本当に苦痛とおっしゃっていました。

 このように、過去の常識に基づいた法律だけで、別姓を望む方がさまざまな不利益を被ることは気の毒としかいえませんし、それが法律の改正によって解消できるのであれば、法律を変更すべきと私は考えます。同姓を主張する人間がいることはまったく問題がありませんが、それは自分の価値観であり他人に押しつけるものではないと思うのです。となると、同姓を主張する個人の主義主張だけを認めるのではなく、同様に別姓を主張する人間の権利も認めるべきと私は考えます。もちろん法律の改正によって同姓を選択した人間に不利益が生じる事があるのであれば、それは慎重になるべきでしょう。しかし現行の法律を見る限り、別姓を認めることで同姓をとっている人間に不利益が生じることは基本的にはないと思えるのです。

 今回の判断で画期的だったのは、女性の再婚の禁止期間を見直すべきと最高裁が判断した点です。再婚後に生まれた子が、再婚相手かもとの配偶者かを見分けるための規程でしたが、DNA鑑定など科学的方法が生まれた現在、半年という期間に合理性がなくなっていることも事実です。となると、その期間を短縮するという判断は非常に妥当と思えます。しかしもっとよいのは、子供が生まれた場合も一定期間は戸籍上に記録が残ることなく男親の欄を書き換えられる事を認めることです。DNA鑑定を行った後、誰の子供であるかを記載できるようになれば、女性も男性同様離婚直後の再婚も認めることができるようになりますし、これに沿って法律を改正すべきと私は考えます。

 このように、さまざまな社会的状況が激変している現在、法律も適宜見直す必要があることを我々は忘れてはなりません。それは法律を守らない、ということではなく、国民の合意でよりよい法律を作り上げるということです。その法律には憲法も含まれるべきと私は考えますし、その検討の中で第9条は変えるべきではない、と皆で再度決めるべきです。国民一人一人の考えが集まり、国をつくります。よりよい国であり続けるため、我々は常に考え、話し合い、社会の方向を決めていかなければなりません。