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Weekly report

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 January Second week

 新年二回目の更新になります。

 この数年本当に感じることですが、現代は百年後の歴史の教科書で取り上げられるぐらい大きな変革のまっただ中にあるように思われます。まさに産業革命期以上の変革が、世界のあらゆる場所で起きているように思われるのです。陳腐な言葉ではIT革命というのかもしれませんが、今後10年でこれまでは考えられなかったほど大きな変化が起きているように私には思えるのです。

 自分の専門分野で考えると情報技術が社会を変えているように思いますが、実はそれは一つの要因であるだけのように最近は感じています。本当の変化は、社会のルールが変わりつつあるということのように最近感じるようになってきました。ルールは常識であり、常識はなかなか変えることが出来ません。しかし時代の変化とともに時代に合わない常識は不都合や不具合を生みますし、やがてはそれは変わっていきます。その常識の規模が大きいほど社会に与える影響は大きく、さまざまな常識を巻き込んで大きな変化を生みます。今の時代は、これまでの数多くの常識を一変する時代に入ったように私には思えます。

 産業革命は、それまでの産業の姿を大きく変えました。工場の生産性を高め、より多くの財を生み出すことになりました。移動手段の発達でさまざまな産業は大きく変革し、人々の居住環境も変わりました。都市化が進み安定した製品の供給が始まり、さまざまなサービスが充実していきました。それまでの基本的に個人単位の農業と手工業を中心とした常識はみるみる変化し、大きな組織での産業や工業が生まれました。人々の働きは変わり、世界で財が循環するようになったのです。

 これと同様の大きな変化が、今まさに起きようとしています。電気の自由化によって、多くの企業が送電業務に参入することができるようになりました。現状名乗りを上げているのはガス会社などのエネルギー関連産業だけでなく、住宅メーカーや通信会社、コンビニエンスストアや旅行会社に電子機器メーカなど、電気業とまったく関係ない企業もたくさんあります。それらの企業は電気を送るというだけでなく、自社のサービスや製品と電力を一体で提供しようとしているのであり、このような新しい産業形態が今後次々と生まれてくる可能性が高まっています。

 このように既存の産業形態は今後大きく変化し、さまざまな仕事がなくなっていく可能性も高まっています。100年ほど続いたタクシー産業は、自走自動車の出現とともに大きな変化を迎えようとしています。職を失った際の緊急避難的な職業であったタクシー運転手の仕事は、やがて機械に奪われ職業機会は減少することは間違いありません。もちろんタクシーのみならずバスも同様であり、やがては長距離を走るトラックも自動化されていき、それらの運転手という仕事はなくなっていくのでしょう。

 工場や倉庫業においても、人間が体を使って行うことは機械が自動的に行うようになります。フォークリフトは自動化し、組立やハンダ付けも機械が行います。包装や梱包も機械で出来るでしょうし、保管は自動倉庫、運送や自走トラックが行うようになります。自走自動車に自動倉庫を載せ、それを自走ロボットやドローンが玄関まで届けます。こうして宅配便の配達員やドライバーも仕事を失っていきます。

 自動車の整備や機械の修理も、やがては機械が行っていくのでしょう。あらゆる製造物の部品データがクラウド化されれば、3Dプリンターでその場で部品をつくることができるようになります。保管の運搬のコストよりも必要な部品一個をつくりだした方が安価になっていくでしょうし、運搬がない分修理の待ち時間も極小化されるからです。電子機器はソケット化され、その先の部品はどんどん小型化・高機能化する可能性も高まります。機械を修理に出すと、修理前より遙かに軽量で高性能化することも、今後は十分に起きえることに思えます。これらの受付業務はネットで行い、ロボットと自走トラックが工場に運び、工場の機械が修理を行い往路と同様に返却をしてきます。決済は受付時の方法で行われ、銀行口座から数字が別の講座に移動します。これにかかわってきた事務作業や修理業務、配達業務、決済業務を行った人間の仕事は、すべてなくなってしまいます。

 公認会計士などの専門職も、AIとビッグデータ、ならびにクラウドの進歩とともにその職域を大きく失っていくでしょう。人間が計算によって発見できる不正やミスは、機械であればより高度で高速に発見することが可能になるためです。さまざまな断片情報からの不正や誤謬の推論も、AIと高速エンジンによって機械に置き換わっていく可能性は高いでしょうから、会計監査そのものが自動化される可能性も極めて高いといえます。銀行の貸し付け業務などの審査行為も基本的に書類のチェックですから、AIとビッグデータがやがてその仕事を人間から奪っていくのでしょう。

 歯医者は当然のこととして、機械に置き換わっていく可能性が高まります。3Dプリンターとセンサー技術が高まれば、人間より高精度で高機能なサービスを提供出来る可能性が高いからです。もちろん多くの医師の大半の仕事も、機械に置き換わっていく可能性が高いと思っています。機械は人間の五感以上の力を持ちますから、病気や怪我の判断や推論の速度や精度を高められます。クラウド上で医療実績が統合されれば、世界の全症例を機械が知ることになりますので、内科的な病気の判断や外科的な措置の適切性は機械のほうがずっと正確で迅速に行えるからです。微細な手術はロボットのほうが向いているでしょうし、縫合をせず接着で済ませられる手術も増えるでしょう。こうして多くの医師は、仕事を失っていくことになります。

 このように産業革命期に多くの職人が仕事を失ったように、この新しい革命は人から多くの仕事を奪っていく可能性が高まります。結果として多くの産業や企業で仕事を行う人間は少人数化し、一部の人間に富が集中することも十分に考えられます。

 逆に介護のように、人が人として生きていくために必要なサービスは、非常に価値の高いものであると意識を変えなければなりません。機械は機械であり、人間のように人の心を感じるまでにはずいぶん時間がかかるからです。その日によって気分や体調の異なる人間にとっては、画一で正確なサービスを提供し続けることが決して望ましいことではないからです。人間は失敗をし、人間は新たな方法を考え、人間は成長します。病気で落ち込んでいる人間を励ますために、優しい言葉をかけることも、厳しい言葉で励ますこともできるのです。そのとき人が何を望んでいるかを理解できるのは当面人間だけであり、そういった仕事は機械に置き換えることはかなり難しいことのように思われます。

 機械がどんなに多くの生産とサービスを提供しても、それを消費する人間がいなければ結局変化は机上の空論です。また機械が生み出せる生産やサービスは現状あるものを高機能・軽量化するだけであり、新しい機能やサービスを生み出すことは出来ないのです。今後の人の働きの価値は肉体労働や単純労働ではなく、頭脳労働や人にしか出来ない労働にに大きな可能性があることに我々は思いを巡らさねばなりません。

 仕事を失ってから既存の常識のなかでの残りの仕事を探すよりも、今の仕事があるうちに新しい仕事に思いを巡らせることが大切と感じます。今後の社会はどうなっていくか、そのために何が必要となるかを考える。今の不便に気付き、それを便利する方法を考える。企業や大きな組織ではなく、自分一人で何を生み出せるかを考える。一つの仕事ではなく、多くの仕事を同時に行うことを考える。これが新しい常識になっていく可能性がある以上、今から考えたものだけが次の時代での活躍を許されるように思われるのは、私だけなのでしょうか。