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Weekly report

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 March First week

 三月に入り、花粉が飛び始めた第一週のWeekly Reportです。

 予測されていたことではありますが、先日世界初の自動車事故が起きました。そう、アメリカで行われているGoogleの自走自動車の事故です。これまでも20件弱の事故を、Googleの自走自動車は起こしていますが、そのすべてが他の車によるもらい事故でした。Googleの自走自動車は停止していたり遵法運転を行っていたにもかかわらず、他の車が不注意だったり無理をしたりして事故をもらっていました。ところが今回の事故は、Googleの自走自動車自身が起こしてしまったものであり、自損ではなく他の車にも事故の被害が及んでしまいました。

 事の詳細を記しますと、交差点で右折(米国ですので右側通行です。)したGoogleの自走自動車は、曲がった先の道路に排水溝への水の流れ込みを防ぐ土嚢が積んであることを発見したようです。当然直進が出来ませんから、左側車線に車線変更しようとすると、左後方から交差点をバスが進入してきたようです。Googleの自走自動車は左車線に指示器を出して車の左前部を左車線に出したところ、後方から来たバスは止まることなく直進し、Googleの自走自動車と衝突したようです。これにより双方にけが人はありませんでしたが、両者とも前部、あるいは側部を破損してしまったようです。

 原因は発表されていませんが、Googleの自走自動車には補助の運転者が乗っていましたので一義的にはこの運転者の不注意ということになるのでしょう。(車の挙動が事故に繋がると判断した場合、補助の運転者がブレーキなどの事故回避行動をとることが要求されています。)しかし実際はプログラムの不備のようであり、こういった状況への対応方法を車が知らなかった可能性があります。

 こういった事故が起きると、多くの方々が「やはりコンピュータにまかせっきりは危険だ。」「プログラムは人間の作る者だから複雑な状況には耐えられない。」「複雑なプログラムには必ずバグがあるから、かならすこういった事故が起きる。」と行った反応が起きます。たしかにこれらの反応は予想できますし、そう思ってしまっても仕方がないのかもしれません。事実今回の事故もバグとはいえないもののプログラムの不具合ですし、それによって事故が発生した以上こういった批判が起きることは仕方ないのかもしれません。

 しかし冷静に考えてみると、これらは技術の過渡期に必ず発生する事象であり、実は性急に判断してはいけないことであることに気づかされます。逆にこういった過剰反応が技術の進歩を遅らせ、よりよい社会の実現を阻害する可能性があることを我々は理解する必要があります。

 以前も申し上げたとおり、技術の発展の過程で必ず不具合は起きます。しかしそれは発展途上の段階で必ず起きることであり、人災や過失とは分けて考えなければなりません。考え得るすべての事象に対応出来るよう考えたとしても、考えの及ばない部分は必ず残ります。宇宙に行くのも深海に潜るのも、あらゆる可能性を考えても想定外の事象が起きます。それを恐れては進歩はありませんし、その想定外の事象から新たな工夫を行っていくのが技術者のつとめと思うからです。

 今回の事故に限定して考えてみると、自走自動車がふえるほど起きえない事故であることに我々は気づく必要があります。今回は自走自動車対人間の運転車で起きたことですが、車同士が通信する機能を持てば、こういった事故は避けられるはずです。双方の車が相手を発見した時点で、自動的にお互いどうすればよいかをやりとりすれば、こういった事故は簡単に防げます。Googleの自走自動車が「おさきに」といってバス側が「どうぞ」といえば、衝突は避けられます。もちろんバス側が「時間に遅れそうだから先に行かせて」と言い、Googleの自走自動車側は「お先にどうぞ」といえば、やはり衝突は起きないのです。瞬時にこのやりとりを行うことは可能であり、皆さんが毎朝使っている自動改札が実際にこれを行っています。となると、こういった仕組みを持った車が増えれば、単純に事故は防げるのです。

 現在日本で新しく販売されている車の多くに、衝突防止ブレーキが搭載されています。これだけでも事故は防げますし、これに通信機能を持たせれば、有人自動車対自走自動車であってもより確実に事故は防げるのです。つまり人間だから安全、機械だから危険という考えは余りに稚拙ですし、これらを改めていくことこそ新しいよりよい社会を作り出すきっかけとなることを私は信じたいのです。

 現在のGoogleの自走自動車は、通常の交通の流れどころか制限速度すら大幅に低い速度で運転しており、渋滞の原因になっていると公的機関からも警告を受けているようです。さらにさまざまな事故に対する情報開示を行わないGoogle社に批判もあるなど、Google社の対応には大きな問題があるように思われます。しかしながらその批判が、技術の進歩に向かってはならないことを、我々は忘れてはなりません。

 事故がない世界は、誰にとっても望ましい世界のはずです。その世界を実現するために個々人が頑張るのではなく、システムとしてそれを実現できることを、我々はもう一度考えていかなければなりません。