Onomura System Consulting Office       

osco top


Weekly report

next

back

 

 

 

 

osco top

 June Second week

 楽天が曲がり角を迎えているようです。6月8日、楽天は欧州での方針転換を発表しました。英国、スペイン、オーストリアのビジネスを閉鎖・撤退する方針を明らかにしたのです。今後はフランス・ドイツでのビジネスに集中していくようです。

 楽天のウェブサイトは、モール形式になっています。モール形式とは実際の店舗で考えると考えやすいのですが、広いエリアに沢山の種類の店舗が出店したマーケット形式です。楽天の場合は仮想空間の広いエリアに数多くのお店が出品し、それぞれが独自の品揃えで顧客を待ちます。しかしモールの中には多くのお店があり、その大半がメーカーの製造する商品であるナショナルブランドの商品を扱っています。となると、多くのお店ではメーカーの作る有名なお菓子が並んでいる事になります。値段や利便性を追求する客は、より多くの種類の商品を取りそろえ値段の安いスーパーを利用するでしょうし、商品の成分や味などの細かい説明を受けたい客は、専門店を選ぶでしょう。ウィンドウショッピングを好む客はいろいろな店を歩き、気に入った商品を見つけると購入します。しかしその後のお店で同じ商品が安価で売っていることもあり、残念な気持ちになることもあるでしょう。このようにいろいろな店の工夫や説明を楽しみ、初めて見る商品や新しい機能の製品を見つけるのがショッピングの楽しみであることは間違いありません。

 出店するお店側は、自分の好みでサイトを構築できますから、独自性を出しやすいのが特徴でしょう。同じような商品でもそれぞれの観点での商品説明が出来たり、複数の商品を組み合わせたコーディネートをみせることができます。購入する商品が決まっているユーザにはあまり訴求しないかもしれませんが、なにか面白そうなもの、自分の感性に合ったものを探すユーザにはこの形式が有利に働きます。そこに実際の購入者のクチコミなどがのれば、ますます購買意欲がそそられることになります。

 それに対してAmazonのようなウェブサイトは、商品ベースの展示をします。 競りのように多様な商品を陳列し、顧客が好きな商品を選びます。書籍のように一物一価であれば顧客は迷うことは少ないですが、食料品や衣料品など、同一の商品でも価格や納期が異なるため、顧客の希望に合う商品が買われます。価格が安くても納期が遅ければ、多少高くてもすぐに手に入る商品を選ぶ客はいます。逆に余裕があるのなら、多少待ってもかまわないといった客もいますから、多様な選択となります。しかしここで客にとって大切なことは、その商品や類似の機能を持った商品を買おうとしているという事実です。Amazonのようなウェブサイトでは基本的に衝動買いやついで買いが起きにくいところが特徴なのです。したがってついで買いを惹起するように一つの商品には関連する商品が表示されますし、過去の購買履歴などから関連する商品を表示したりします。出店する店は、さまざまな商品に関する情報を表示しなくても、Amazon側が基本的に説明を行ってくれますし、ウェブサイトの構築も基本的に必要ありませんから、ただ売りたい商品を登録するだけで済みます。

 このように、基本的に二つの違ったビジネスモデルが存在するのがネットのビジネスといえますが、どうも欧州では後者のようなビジネスモデルが受け入れたというのが、今回の楽天の欧州撤退の理由と思われます。日本のビジネスでも同様のことが起きるかは分かりませんが、ネットビジネスが一つの分岐点に向かっているのは間違いなさそうです。

 インターネットは、特定の商品の発見に多大な貢献をしました。今までどんなに歩き回っても出会うことが出来なかった世界中の商品を、誰もが簡単に見つけることができるようになりました。逆に見つけたものの中で最も安い商品も探せるようになりましたし、送料無料は延長保証といったさまざまなサービスもお好みで探すことができるようになりました。

 このおかげで、近隣の商店街は大きなダメージを被りましたし、高齢化と後継者難があいまってシャッターかが進んでしまいました。最近では、モノを扱わないサービス業ですら淘汰が訪れていますし、いよいよ商店街そのものが近隣からなくなる事態に発展しています。私の近所の駅でも、駅ビル内のマクドナルトと茶月が閉店し、後にお店が入ることなくシャッターかしています。近隣の商店街でも長年シャッターがおりている店が沢山ありましたが、とうとうそれらがマンションや住宅に建て変わるケースも増えています。駅から1分のところに住宅やマンションがあるというのはものすごく昔の風景のように思われますし、それが当たり前のようにリアルの店舗が次々となくなっています。スーパーマーケットの競争も激しく、当たり前のナショナルブランドしか並べていない店は次々追い込まれていますし、プライベートブランドや全国の珍しい商品をとりそろえないと顧客がこないケースも増えているように思われます。

 このようにインターネットビジネスがリアルの店舗の状況を変えたように、今回は自らのビジネスモデルも変化させる時代が来ているのかも知れません。IoT時代の訪れは、楽天やAmazonのビジネスモデルすら変える可能性もありますから、今後の変化を予想してみると新たなチャンスが沢山転がっていることに気づけるはずです。楽天はこのさきどのような戦略で世界に進出するか、世界はどんなビジネスモデルをもとめているのか、興味が尽きない時代がまた始まっています。