ファーストフード店の撤退が相次いでいます。
成績不振のマクドナルドが非採算店舗の整理で数多くの店舗を閉めましたが、他のファーストフード店も決して状況はよくないようです。近所の町田市でも、これまでは駅前の一等地を中心とした展開を行っていましたが、南町田駅、成瀬駅ともに撤退が完了し、今度は町田駅前の店舗も撤退となりました。これ以外にもハンバーガーショップ、ドーナツショップ、中華料理店などのチェーンも撤退が進んでおり、徐々に街並みが変わっていってるように思います。
私の最寄り駅の東林間駅でも、駅ビル内のマクドナルドと寿司の茶月が撤退後、半年以上シャッターが閉まり空き家状態が続いています。東林間に住んで40年以上建ちますが、この場所が空き家になることはありませんでしたから、やはりリアルな店舗で一定以上の売上を確保することは非常に難しくなっているのでしょう。相模大野駅の駅ビル内の店舗も、徐々に撤退が始まっています。これまで店舗があった場所が空きスペースになってしまうため、ガシャポンやキッズコーナーなどを設けて空きを埋めていますが、空きスペースが増える速度が速いため日々閑散としたイメージが強まっています。
これまでこういった事象は、ネット経済の伸張の影響がリアル店舗に及んでいるというのが原因と考えてきました。しかし最近の状況を考えると、これだけでは説明がつかないように思われてきました。というのもハンバーガーショップや中華料理店は、ネットビジネスとは直接的な関係がないためです。一般の小売店のように商品を在庫する店舗では仕入在庫必要ですし、それを販売する店舗と店員が必要となります。こういったコストを考えると、同様の商品をそれらのコスト無しで販売できるネットビジネスのほうが有利に働きますから、リアル店舗の衰退に繋がります。ましてや書店のように万引きリスクが高い店舗ですと、ネットビジネスと比較にならないぐらいのコストがかかりますから、撤退は仕方ないことかも知れません。
しうしファーストフード店などのような飲食店は、ネットには置き換えが不能です。となると撤退原因はファーストフード店同士の顧客の奪い合いが原因と思えますが、すべてのファーストフード店が一様に苦境に陥っている状況の説明が出来ません。コンビニがそれらの置き換えに寄与している可能性もありますが、その量や質は飲食店とは異質のものですから直接的な原因ではないことに気づきます。となると、これらのファーストフード店は、なぜ撤退が続いているのでしょうか?
そこで考えつくのが、アルバイトの存在です。少子化の影響で若年者の労働人口は年々減少しています。正規雇用の総数が限られているため、フリーターのような若者がアルバイトに走りそうなものですが、どうもファーストフードには人気がないのではないかということに気づかされます。
以前24時間営業の牛丼店でのたった一人でのオペレーションが問題になったことがありますが、ファーストフード店の労働は過酷です。その反面バイトの単価は決して高くなく、若者に敬遠されてしまうようです。ではバイトの単価を上げれば、と思いますが、単価を上げるとコストが上昇するため、現状では利益が出なくなってしまうのでしょう。それならば外国人のバイトを多く採用すればよい、と考えるのですが、それも単純ではないように思います。
外国人労働者のバイトとして、ファーストフード店は魅力かも知れません。しかし問題は、日本語の問題があります。それは日本語がしゃべれない、というよりも、日本語の練習環境としてファーストフード店はあまり望ましくないように思われるのです。コンビニエンスストアに比べてみると、客との会話内容が明らかに単調である事が分かります。なぜならば顧客とは基本的にメニューと個数、精算金額しか会話をしないからです。コンビニであれば、各種商品の生産のみならず、たばこの注文や宅急便の受け付け、公共料金の支払いなどさまざまな会話をこなさなければなりません。ところがファーストフード店では会話内容が限定されていますから、日本語の上達には繋がりません。
となると、これらファーストフード店の問題は、やはりアルバイトの影響が大きいことに気づかされます。逆に一部のハンバーガーショップなどで採用が進むように、高齢者がバイトとして中心的な存在になっているところもあります。年金をもらっている高齢者にとって、バイトはそれなりの収入でかまいませんし、独居や二人暮らしの老人であれば、働く場所が提供されているのは本当に有り難いことに違いありません。
このように、ネットビジネスの伸張がリアル店舗を苦しめている、という一つの考えにしがみつくと、本当の真実が見えにくくなります。我々は様々な現象を公平な目で見つめ、そこに存在する本当の問題と、社会にとってよりよい解決策を考えていかなければなりません。