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Weekly report

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 June Fourth week

 6月24日、世界が大きく動きました。

 英国で実施された国民投票により、英国がEUを離脱することが決定されました。今後2年の間にさまざまな手続きを行い、英国は正式にEUを離脱しヨーロッパに位置する一国家としての道を歩むことになります。

 もともと今回の国民投票が行われたのは、シリア難民を代表とする移民問題です。社会福祉の充実した英国は、難民や外国人労働者にとって非常に魅力的な国です。EUは統一の方針を採らざるを得ませんから、基本的には難民を受けれます。結果難民は英国を目指すことになります。英国の財政状況は他国に比べて特別よいことはありませんから、社会福祉の充実は財政を逼迫します。さらに移民が賃金の安い労働から仕事を得ていくでしょうから、低所得者を中心とした雇用が移民に奪われる可能性が高まります。

 また数年前のギリシア危機が示すように、EUに参加していることによって財政危機をもたらす国に大きな支援が求められるようになりました。自らの政権維持のため公務員の増加と経済の衰退を放置した国に対し、ひたすら努力した結果を分け与えなければならないというのは、不合理を感じてしまうことは避けられないと思います。

 さらに大英帝国のノスタルジーも、高齢者層を中心に強く残っています。EUのなかで明確な主導権を握れない状況を、歯がゆく思っている高齢者は少なくありません。昔だったら英国中心にヨーロッパ経済を主導することが出来たのが、現状はフランスやドイツが英国と同等以上の主導権を握っている状況を許せない、という高齢者も多かったようです。

 この状況の中、政権を握っているキャメロン首相はEUへの残留・離脱を問う国民投票を公約として約束し、今回の投票に繋がりました。キャメロン首相は政治的・経済的にも国民は合理的判断を下すと考えていたようですが、高齢者や地方での不満をきちんと把握できて折らず予想に反した離脱という結果が待ち受けていました。

 今回の離脱の問題は、様々なところにあります。

 まずは経済的に考えますと、早くも世界の経済が激しく乱高下しはじめたように、当面世界経済に大きな影響を与えるでしょう。EUの相対的経済力は弱まりますし、英国経済もダメージを被る可能性は高いといえます。なぜならEUから独立すれば、これまで発生しなかった関税がEU諸国との間で発生するからです。

 英国は日本同様細長い島国であり、多くの資源を搬入するために海運が使えます。欧州では内陸部が非常に広いため、大量の資源を搬入するコストが英国に比べ高くなります。そのためEUのなかでも英国に、海外の多くの企業が工場を設立しました。そこで生産されたさまざまな製品はEU諸国に販売されることになりますが、英国がEUの一部であれば関税はかかりませんでした。

 しかしEUを離脱すると関税が発生するため、英国に工場を展開したメリットが海外企業から失われます。そのため英国の工場は縮小され、EU諸国の工場へ生産が移管され英国経済に大きな影響を与えることになります。結果として今回離脱を支持した低所得者層は、移民以前に仕事を失う可能性が高まっています。

 ロンドンなどの金融街も、EUの中心として機能してきました。しかしEUから離脱するとEU経済の中心ではなくなりますから、ロンドンの金融街のポジションは相対的に下がってしまいます。となると、英国に集まってきたさまざまな資金はEU内の市場に移っていきますから、この意味でも経済的なダメージが高まります。

 もちろんEUに参加する諸国にとっても、離脱の行方を見据え自らもその選択肢を持つ可能性があります。経済的に壊滅的な状況が生まれれば逡巡するでしょうが、経済が現状と変わらず、さまざまな政策を自主的に行えることが分かれば、EUから離脱は魅力的でしょう。EUに新規に参画する、あるいは現状参画を希望している諸国は、かつて東側諸国といわれた経済力の弱い国が多いですから、今後もEUに参加する国は大きな負担が増加することが予想されます。となると、その前に英国同様離脱を図り、大きな経済的な負担を避けようとする動きもでるでしょう。

 しかし一番の問題は、若者の未来を年寄りのノスタルジーで変えてしまった点が一番大きいと思わざるを得ません。統計を見る限り、離脱派と残留派の分岐点は43歳にあったようです。この世代より上の人間が「離脱」に投票し、下の人間は「残留」に投じたのです。離脱による弊害が大きそうな状況であるにもかかわらず、その弊害を受けることなくこの世を去る人間が離脱を決定し、その弊害を双肩にしょって生きていくことを若い世代に課した状況は、非常に大きな問題と言わざるを得ません。

 このように今回の英国のEU離脱は、様々な問題を引き起こしています。世界のお金がパニックを起こしてリーマンショックのような経済状況にならないことを祈りたいと、本当に思ってしまいます。

 未来を作るのは、若者の仕事です。英国で起きたことは、今まさに日本で起きていることです。現在の日本で起きている状況は、若者が生きずらい世の中を年寄りが声高に作っているということです。その歪みをつくった団塊の世代は、自らの権利の主張の前にまずは事実を直視し、自分たちに都合のよい仕組みを変えていかなければなりません。その上で若者は責任を持って判断を行い、よりよい社会を築いていく必要があることを我々は忘れてはなりません。今回の選挙から選挙権年齢が18歳に引き下げられます。多くの若者が投票に参加し、自らの手で自らの未来を選択して欲しいと願っています。