盆休みも終わり、怒濤のごとく年末に向かって日々がすぎ始めました。
さて盆休み中は企業関係のニュースが夏枯れでしたが、最近少し気になったことを久々に記してみます。今年もこの時期まで、各社で新人研修を実施しました。多くの企業で元気のよい若者に出会いましたし、その向上心と真面目さ、モチベーションの高さは、いつか大きく花開くときが来ると思っていますし、ITの新しい時代を築いてくれるのではないかという期待もあります。ただこれまでも再三申し上げてきたとおり、「論理的に考える」、「想像する」、「発想する」という考える訓練が出来ていない若者が大半でしたし、素直な反面若者らしいこだわりや反発心をもった方も少なかったように思います。
こういった若者と接する中で、いくつか面白いことがありました。一つが海外渡航経験の少なさです。今から40年ほど前の若者にとって、海外旅行はあこがれの一つでした。映画や雑誌でしか見たことのない海外の風景を見てみたい、そこの文化や生活に触れてみたい、といったあこがれは、多くの若者がもったと思われます。結果としてバイトを一生懸命行ってお金をため、あこがれの国に出かけたものでした。始めて訪れる海外は、空港をおりた瞬間から別世界であり、その温度、臭い、音、雰囲気すべてが今まで体験したことのないものとしてすべてが記憶に焼き付けられました。異国での不安や興奮は、生涯忘れがたい経験として心に残っています。ところが最近の若者は、あまり渡航経験がありません。自分一人どころか、友だちとも海外に出かけたことがないのです。しかしそれの何が問題なのでしょうか?
2020年には東京オリンピックのため、世界中から多くの選手、報道関係者、応援団、観光客が無数に到来します。その中には日本に何度も訪れたことのなる方もいますし、日本どころか国外に出たのも始めて、という方も沢山います。日本は米国の支配国ですし、義務教育で英語を全員習っているから、と思って訪れた観光客は、日本語表記しかない日本の道路や施設に大きく戸惑うでしょう。尋ねてもなかなか英語で答えてもらえず、不安をもつ外国人も多くいると思われます。ましてや英語圏以外から来る外国人にとっては、治安はよくても心細い限りの状況と思われます。そういった外国人が困らない街作りをしていくのが、これからの我々に求められていることですし、物理的な看板や通訳ではなく、ITを利用したスマートな方法を考え実現していくのが我々の役目のはずです。どこの国の人間が訪れても、旅行中不安や不便が少なく、自国の言葉でわかりやすく説明されながら日本国内を旅行できる、その中で日本の文化や生活を体験できる、というのがこれからの観光立国の姿と思っています。
ところが最近の新人さんにこのテーマで考えていただこうとすると、アイディアがなにも出ないどころか、外国人の不便さがまったく想像できないのです。何が不便か考えてごらん、といっても頭の中は真っ白であり、何の想像も出来ません。じゃあ自分が海外に行ったと想定して考えてみよう、といっても、海外に行った経験がないためなにも想像も発想もできないのです。となると、日本全体にあるITをつかって外国人の旅行や生活を便利にする、という大きなビジネスチャンスを獲得できる若者は、ほとんどいないということになってしまうのです。
本来それを補うのが想像力だったように思います。しかし多くの情報と画像にあふれた現在では、その想像力がまったく要求されませんから、結局自力で想像することも出来ません。唯一出来るのは他人が作ったモノを真似るだけですから、これでは日本はもはやITの分野では世界と太刀打ちが出来なくなってしまうように思います。
しかしこの問題の解決のヒントが、意外なところにありました。それは、SIerなどに所属するSEやエンジニアが、仕事で海外に出向く機会が増えてきたという事実です。私の上の子は家族では多くの国々を訪れたことはありますが、友だちや自分一人で海外に出かけたことはありませんでした。しかし企業に就職してから、選抜メンバーとして東南アジアに数ヶ月一人だけで滞在し仕事を行っていました。また今週も他社2社のSEとともに海外研修に向かいましたし、そこで中国や韓国のエンジニアと一緒に新しい開発ツールの研修を受けるそうです。そういった機会は昔は皆無といってよい状況でしたが、いまは世界中の様々なツールを使って開発を行う必要があることから相対的なチャンスは非常に増えているようです。海外旅行の経験がなくても、仕事で海外を訪れる機会が増えれば海外での経験値が増すことは間違いありませんし、言葉が通じないながらもそこで得た経験が、次の世界のシステム化に必ずや活かされるであろう事を私は信じています。
このように、今後のビジネスや社会において本当の意味の国際化がどんどん進んでいきます。その中で世界の進んだ国の一つとして日本が今後も活躍するためには、エンジニア一人一人が海外での経験値を高め、その中で得たさまざまなヒントを製品やサービスとして実現していなければならないことを肝に銘じる必要があると私は思っています。
ガンバレ、若者!