またもや切ないニュースが流れました。
昨年末、東京大学を出た優秀な若者が命を絶ちました。新人であるにもかかわらず付き100時間以上の残業を強いられ、パワハラ状態の職場で疲労を蓄積させた若者が行き場なく命を絶ってしまったようです。この死に対し労働基準監督署は労災を認定し、この事実が広く知られることになりました。ご遺族の無念さを考えると労災認定で救われるものではないと思いますが、衷心よりお見舞いしたいと思います。
先日私も某社でこの数年続いている二年生の研修を行ったのですが、そこも職場の就業環境がよろしくないようで、優秀な若者が5年のうちに半分になってしまっているようです。残業時間も長く徹夜もあるようですから、30年前の私と同じ状況がまだ続いているのでしょう。IT業界のみならずこれが日本企業の実態と思うと、憤懣やるかたない気持ちが残ります。
当時死ぬか消えるかを毎日考えていた自分を思い出すと、彼らの気持ちはよくわかりますし、命を絶った若者の絶望感も理解出来る気がします。私自身はさまざまな脅しやすかしの中で会社を辞める決心をしましたし、それは今でも大正解だったと思っています。しかし優秀でかつ超一流企業に就職した今回の若者は、やめるにやめられない状況に追い詰められたのかも知れません。一歩俯瞰して状況を眺めたり、それを教えてくれる大人が近くにいなかったことが残念でなりません。同時にこの状況に追い込んだ会社や組織のあり方に大きな疑問が残りますし、それを放置した管理責任はその企業全体が負うべきもののように思います。
こういった状況は、昔から続いています。私が就職したときもそういった噂は聞きましたし、事実私の所も相当なブラック企業でした。若者の質が変わったとはいつの時代の若者も言われますし、それはその劣悪な状況を放置する言い訳になっているように私には思えます。
かつて高校の運動部がそうであったように、帝国軍隊的なしごきやいじめが因習として現代まで残ってきました。それでもそれを起因とする痛ましい事故の結果、それらの因習が徐々に払拭されてきています。そしてそういったしごきやいじめのなかった世代が大学の体育会を変えるのでしょうし、やがてそれらはなくなっていくことを私は信じています。
しかし企業においては、学校よりも断然幅広い世代の人間が協働しています。本来は多様な価値観が認められるはずですが、いまだに旧世代の因習が続いているのは本当に残念です。自分がいじめられた仕返しを年下の人間に行っても、いじめられたときの辛さやいやな気分がなくなるわけではありません。単に人を貶める歪んだ優越感が満足されるだけであり、それこそ卑しい人間の行いそうなことです。
因習を変えるのは、因習がいやだと思う人間だけです。いじめられた辛さやいやな気分を味わった人間だけで、それを変えられるはずです。いじめをくり返すのではなく、いじめを無くしていく。能力の優劣で人を判断することなく、多様な価値観で互いを認め合う。こういった社会に、一日も早く現状が変わっていくことを願わざるを得ません。
また現在いじめやハラスメントに苦しんでいる方は、少しだけ勇気を持って状況を見直しましょう。会社を辞めることはネガティブなことではなく、新たな選択の勇気をもつということです。ぼろぼろになってやめざるを得ない状況になる前に、新たな目標を見つけて積極的に活動しましょう。だめな会社や職場は沢山ありますが、居心地が良い、あるいはやりがいのある職場もまだまだあります。消極的に選択することなく積極的に努力し、より自分のチャンスを生かせる場所を探しましょう。
負けるな、若者!