いよいよ12月に入り、今年も一ヶ月を切りました。
昨年の12月に始まったストレスチェック制度ですが、従業員数50名以上の企業は義務のため確実に実施された事になります。その結果について今後統計が発表されていくと思いますが、現状あまり成果がでているようには思えません。この制度が日本のすべての企業にきちんと根付いてストレスがきちんとコントロールされる社会になって欲しいと心から願っていますが、制度にまだまだ問題があり実施する企業側、受検する従業員側にもメリットの少ないのが問題かも知れません。
資本主義をとっている国家にとって、経済成長は国家を維持するために必須の事象になります。様々な活動によって財を産み、その財を分配・再投下することでさらなる財を生み出すのが資本主義の原則です。その活動に参加する国民は財の分配によって豊かになり、さらなる財の消費と生産活動をくり返すことで国自身が成長するのが、理想の姿です。
しかし経済の先行きに不安があったり、国家の未来に対する舵取りに不信感があると、財は消費されることなく蓄積されていきます。蓄積された財を少しずつ消費することで生活を維持しようとしますし、普段の生活も極力財を消費しない質素な生活に変わっていきます。日本もバブル経済以降本格的な低成長時代に入り、蓄財と消費をしない生活が国民の基本となってきました。
しかしそれらは、資本主義経済の仕組みを傷めてしまいます。なぜなら、消費活動が低調であれば、企業の生産活動が滞るからです。生産活動が滞れば財は生まれず、財の再分配や再投下が低調になります。これは、雇用が減少したり設備投資等の投資活動が低調になることを意味します。結果として経済は停滞し、国民は不安を覚え、益々蓄財と消費をしない質素な生活が余儀なくされます。さらにそれが続くと蓄財も不能になるため、ただただ質素な生活のみが基本となり経済が回らなくなってしまいます。となると企業への投資も低調となり、活発な経済の回る海外に投資が流れ日本には何も残らない、というのが現在の状況です。
同時に活況な経済を前提に企業の仕組みが作られていると、停滞した経済化では非効率と無駄が増えます。1日1万個の製品を製造する設備や労働力は、100個の製造の前では非効率と無駄の塊になってしまうからです。こうして日々雇用が失われますが、仕組みや設備の無駄は多いため仕事の量は増えます。仕事量が100分の一になっても、設備や仕組みは100分の一にならないため、その維持やメンテナンスに仕事量が発生するからです。こうしてリストラによって職を失うと同時に、社内の人間はより多くの仕事をこなさなければならなくなります。
こうして仕事が忙しく人は少ない状態が生まれます。この状況の中でも売上の拡大は要求されますし、失敗は極端に断罪されます。チャレンジをして大きなチャンスを得るよりも、確実な取り組みで失敗しないことが重要となり、成功よりも失敗を防ぐことが基本となります。こうして、緊張感あふれる職場となり多くのストレスが生まれます。仕事そのものや生活のストレス、人間関係のストレスなどきわめてストレスフルな社会になり、それらが心や体に大きな影響を及ぼしてしまいます。
現状のストレスチェック制度は、現状を把握する意味ではある意味有効でしょうし、それを真摯に受けとる企業が多ければ効果が発揮できるのかも知れません。しかし上記の通り現状の経済状況が変わらない限り、根本的にこの問題が片付くとは思えません。ストレスチェック制度を実施するのは国ですが、経済を良い方向に舵取りするのも国の仕事です。となると、取り組みの優先順位が異なる、あるいは各省庁の思惑でバラバラの施策を採っているだけで、よりよい社会にするための総合的な取り組みが行われているとはいえない状況のように私には思えます。
さらにこの状況を進めているのが、社会のIT化です。物を買わなくてもネットを通してあらゆる代替のサービスが提供されますし、旅行をしなくてもそれ以上の体験が出来ることが増えていきます。VRからMRへと本格的な技術の進歩が起きれば、旅行をしなくても現在の世界を五感で体感できるようになるのです。美味しい本物を食べなくても、さまざまな調味料で擬似的に味わえる仕組みも作られます。音楽や映像はネット配信ですし、自分で発信することも出来ます。書籍やマンガは電子化され権利だけ購入すればどこでも楽しめます。ものがなければ書庫も不要ですし、大きな家もいらないでしょう。相乗りサービスや自走自動車のタクシーが普及すれば車を購入する必要がありませんし、ロボットやドローンによる宅配が充実すればさまざまな物品の運搬が不要になります。
こうした社会が出現することは、一つの未来であることは間違いありません。となると、これまでの企業や社会のあり方を本格的に見直す必要があると私には思えるのです。こうして構造を変えてしまうことによって新たなチャンスを作り、同時に働き方を変えてストレスそのものを無くす。悲観的に考えればストレスが益々増える社会になっていきますが、発想を変えればストレスそのものを無くせる可能性があるのです。
ITをつかってチャンスを作り、ITを使って社会を変える。これがストレスのない社会への一つの道筋と思っています。この社会を確実に描いて国には総合的な施策を講じて欲しいと思いますし、IT技術者はそれを実現するためにあらゆるアイディアを描いて欲しいというのが私の今の強い願いです。