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 January Third week

 豊洲市場の移転問題が、さらなる混迷を深めています。

 さる1月14日に開かれた東京都の専門家会議において、基準値の80倍近いベンゼンと、シアンが検出されました。直接的に飲用などの利用はしなくても、施設や設備の洗浄などに地下水を使う可能性は高いため、間接的に食品への影響が考えられます。今年中の移転を目指していた築地市場ですが、どうも先行きに暗雲が漂ってきたようです。

 これまでも何度か調査が行われてきましたが、今回は地下水の採取箇所を増やした結果だそうですし、研究機関も別のものだったためこれが正しいデータかは疑義が残るところもあります。しかしいずれにせよ土壌の問題が残ったまま豊洲市場の建物が建設されたのは事実ですし、その裏には大きな利権があったとしか考えられません。老朽化した築地市場を移転するというのはあくまでも名目であり、移転させることで生まれる利権をいかに自らが奪うかが命題だったのでしょう。だからこそ豊洲市場の安全性や効率性よりも既成事実として建築にとりかかることが大切であったため、土壌の対策は杜撰で建物の広さや通路の幅なども実際のビジネスを無視して作られたと思われます。仮に今回の土壌問題が解決しても市場の利用効率は大きく下がる可能性はありますし、それらが首都圏の食品の流通に影響を与える可能性は高いと思われます。

 基本的には、もう一度新市場のあり方を検討し直すしかないように思われます。暫定的に豊洲市場を利用し、その後抜本的な解決を目指して築地を再度作り直す事が望ましいように思われます。その際には市場としての利用効率や安全性を考えるだけでなく、観光施設としてのあり方や近隣の交通状況も総合的に考えた取り組みをする必要があるでしょう。もともとは鉄道輸送を作られた築地市場ですが、都市化とともにトラックベースの輸送に変わっています。となると新しい市場へは高速道路から直接乗り込み・乗り入れできるようにすべきでしょう。

 都心の土地の利用効率を考えると、オフィスを収容できる高層ビルと併設することになるかも知れません。近隣に遍在する水産会社や倉庫会社などがそこに入れば、ビジネスの効率も上げられるでしょうし、飲食店などのテナントを多く収用すれば、観光客を呼び込む良い材料になるでしょう。場合によっては場外市場も一緒に取り込むようにすれば、ビジネス効率の向上と観光客の集客に効果を発揮することは間違いありません。

 肝心の市場についてはターレーによる貨物の移動と作業や購買に関する人の導線について徹底的にシミュレーションを行い、どのようなルートや人・ターレーの導線を作るべきか、その中で発生する物流のボトルネックをどのように解消するかを検討していく必要があるでしょう。フロアは豊洲と同様の複数階の構造にすれば、現状の面積の数倍の広さがとれますから高層ビルを構築しても十分な面積となると思われます。

 さらにこういった構造を取ることによって、都としては投資したコストをより早く回収できることになります。市場そのものだけで関連の飲食店スペース、オフィススペースなど総合的に賃料を得られますから、豊洲よりも回収効率は高まるでしょう。さらにさまざまな付属施設を集約できれば、近隣の建物や土地が空くことなるから近隣の再開発にも繋げられます。もともとは銀座に近い大規模な一等地を開発しようとしたのですから、場外市場を含めて近隣の土地の再利用効率が上がることは望ましい事だと思われます。もちろん豊洲市場の建物も、食品に関わらない倉庫等に利用できますから、そちらも無駄になるわけではありません。

 これまでの政権が考えてきた豊洲ありきを改めれば、都や首都圏にとってよりよい方法はまだまだ考えることは可能です。大切なことは一部の人間の思惑や利益を前提とするのではなく、全体の利益に繋がる方法を皆で考えることです。同時に過去の反省のためには、誰が自らの利益のために豊洲移転を決めたかを再検証することです。土壌に関わる工法を誰が変えたかの検証と処分は行われていますが、豊洲移転決定に関する検証は行われていません。この検証を行うことで、誰が何の目的で豊洲移転を早急に決めたのか、そういった問題を発生させないため今後どのような意思決定を行うべきかを考えていく必要があるでしょう。

 いずれにせよ現状を考えると、暫定的に豊洲市場を利用し並行して築地の再開発を行うなど、実効性が高く効率的な方法を考えていく必要があります。理想を実現するためのステップを考え、粛々と実行していく姿勢が今まさに求められるのかもしれません。