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Weekly report

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 February Second week

 先日富士ゼロックスが、AIを搭載した複写機のプロトタイプを開発していることが報道されました。これによりますと複写機が読み取った書類の情報を判断し、その関係者のスケジュールを確認したり連絡が漏れているメンバーにメールを送ったりと、複写機のAIが秘書のように機能することを目的としているようです。こういった機械が実際に開発されればオフィス内のさまざまな司令塔として複写機が機能するようになるかも知れませんし、二減一増といわれるなかに秘書業務が入っていくことが本格化するのかも知れません。

 もともと私は、オフィス内の複合機がオフィスのサーバとなっていくという仮説を提唱していました。複合機はネットワークに繋がれ、PCのプリンターやスキャナとして利用されていますし、利用履歴や受けとったファックスデータをハードディスクに格納しています。となると、ハードディスクの容量を上げてRAID化すればサーバと同等の機能を持つことになりますし、その方がオフィスの利用効率や機器のメンテナンス効率としても高まる可能性があると思っていました。今回のようにAIも搭載するとなると、ファイルサーバのみならずAIを動かすインフラとしての機能を持つことになりますし、ますますオフィス内の情報が統合され様々なメディアを一括管理できるようになります。それはオフィスのペーパーレス化を進めますし、あらゆるメディアの情報を統合したサーバとしてさまざまな可能性を持つことになるでしょう。まさにAI版のデータオフィサーとして働くようになるのかもしれません。

 このように新しいタイプの複写機が開発されるのは、複写機市場が過飽和になった証拠ともいえます。コピー機といわれた単純な複写機能を持った機器はもはや過去のものですし、メールがこれだけ普及した今、FAXも時代遅れかも知れません。PCプリンターが複合機能を持つように、コピー機も複合機能を持ち印刷精度を高めてきましたが、肝心の印刷品質は頭打ちで印刷そのもののニーズも相対的に減ってきている今、複写機市場は過飽和になったと言わざるを得ないのでしょう。結果として価格競争が激しくなり、市場内での生き残り競争が激化したといえるかも知れません。先日リコーも、業務効率化とコスト圧縮を目的とした拠点閉鎖を発表したばかりですから、成熟したコピー市場でどうやって生き残っていくかが各社の取り組みのポイントとなっているようです。

 このように時代の変化と共に市場は飽和し、ニーズは変化していきます。私が小学生の時ぐらいにコピー機が世に生まれ、数年でガリ版刷りや青焼きという原始的なコピー市場は駆逐されていきました。高校生の時にコンビニにコピー機が置かれるようになりましたし、大学生のときには正門前にあるコピーセンターにずいぶんお世話になったものです。そしてカラーで複写ができるようになり、ネットワークと繋がってプリンターの代わりもできるようになりました。そしてついにはAIを搭載して印刷以外の業務を行い出す、これがイノベーションです。しかしその陰では、これまでの複写機が担ってきた複写や印刷といった仕事がなくなっていき、やがては衰退していきます。こうして市場は移り変わり、新しい競争が生まれます。

 このように全く新しい製品の出現は、既存の製品の市場の終了を意味します。しかしそこには大きな流れがあることを我々は忘れてはなりませんし、その流れは予想もつかなかった問題を引き起こす可能性があることにも注意を払わなければなりません。たとえば今回のAI複写機ですが、オフィス内の情報を読み取り高度の判断を行います。となると、オフィス内の動きや機密情報を把握し、それをハードディスクのどこかに自律的に記録することもできるようになります。そういったプログラムをこっそりと仕込めば、事実上ネットワーク上、あるいは書類を電子化したすべての情報が外部に流出し、悪意を持った取り扱いに晒される可能性があります。新技術の開発過程を克明に盗み出し、それと同様以上の機能を付加して製品やサービスを発売すれば、多大な期間と費用をかけた研究開発も、あっという間に他者に奪われてしまうことになります。

 技術の進歩は新しい世界をつくります。しかしその世界が多くの人間にとって望ましい世界にするためには、エンジニアはあらゆる可能性を検討し、一つ一つの対策をきちんと打っていくことが求められます。それをインスペクションするAIが作られたとしても、そのAIに不正が組み込まれれば自動的に悪意を見逃す仕組みができあがってしまいます。そうならないよう、すべてのエンジニアが想像力を持ち、明るい未来に向けて普段の努力を行うことを求められていることを我々は忘れてはなりません。