人工知能実験の面白い結果が発表されました。
先日NTTドコモ、東京無線共同組合、富士通、富士通テンが共同で、昨年6月から実施していたAIタクシー実験の中間結果を発表しました。この実験ですが、NTTドコモが集める携帯の電波利用状況をもとに、東京無線協同組合の持つ運行データを比較し、その他店舗や気象データをもとに潜在的な利用者数を推測し、空のタクシーを向かわせるというものです。空車でただ道を走って客を探すよりも、潜在的利用者の多い場所に向かった方が乗車率は上がるでしょうし、客側もタクシーの待ち時間が短縮できます。実験結果はこのシステムを利用しない通常のタクシーに比べ、1.5倍もの売上が計上されたようです。
プラットフォームに使われたの富士通の「SPATIOWL」という位置情報サービスのようであり、2017年の下期には本格稼働が目指されるようです。タクシー会社、タクシー運転手、顧客のそれぞれにメリットのある仕組みですから期待できますし、これらの拡大によって新たな競争が始まる予感がします。これによってシステムを導入できない弱小のタクシー会社は苦しくなるでしょうし、大手が有利な状況になるかも知れません。同時にベテランドライバーの優位性は相対的に失われますから、経験豊富なドライバーが減っていく可能性もあります。完全自動運転車両のタクシーの出現前に、こういった競争が生まれるということは面白いと思いますし、今後の展開が期待されます。
このようにビッグデータとAIの組み合わせによって、様々な分野で新しいサービスやシステムが導入される可能性が高まっています。もともとコンビニが天候やイベントなどをベースに品揃えの種類や個数を変えてきたように、その状況に最適な情報を提供する仕組みの導入は、今後も重要になっていくでしょう。逆にそれらの普及によってデータに表れにくい少数の商品や希少な商品が見落とされる可能性も高まりますから、ナショナルブランドや大手企業に有利な展開が生まれているように思います。逆に中小企業やベンチャーは、大手が気づかない新たなサービスや商品創出が求められていくと思いますし、両者が経済を活性化させることを心から期待しています。
もちろん今後は過去データを元に、商品開発なども大きく変わっていく可能性があります。例えば電化製品がネットと繋がっている場合、利用されている時間や機能をメーカーに送信することは可能です。DLNAのように、電化製品同士が相互に情報のやりとりを行う仕組みであれば、どのような利用をしているかもメーカは知ることが出来ますから、次の製品の利便性を高めるための機能や装置の開発に繋がるかも知れません。
農業分野などを考えると、季節が西から東に展開していきますから、西側での気象状況をもとに東側の作付けを変えたり収穫時期を変更することも可能になります。もちろん漁業でも魚影を追って操業することも可能になるでしょうし、資源保護の観点から取り過ぎを防ぐことができるようになるかも知れません。
このように新たな仕組みは無限の可能性を生みます。しかしその反面、一部の企業や個人が市場のすべてを奪い、競争や工夫が成立しない世の中になる可能性もあります。大切なことはそれらを食い止めることではなく、それらを凌駕するアイディアを生み出すことです。変化の時代、連続しないデータや状況が次々生まれる可能性があるからこそ、既存のデータからではない新しい仕組みが生まれてくることを老頭児は心から願っています。