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Weekly report

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 April First week

 いよいよ2017年度の始まりです。月曜日からスーツに着られた新人さんが街にあふれるのでしょうし、電車も変な混み方が始まります。五月の連休まではこの状態が続きますが、私にとって何十回目の恒例行事なのかと考えてしまいます。大きな夢と不安を持った若者が激変の社会に門出を迎えることは非常に喜ばしいことですし、彼らが一日も早く夢の糸口を見つけられることを老頭児として心から願っています。

 さて先週日経BP社から、日経コミュニケーションの休刊が発表されました。今年の7月には日経情報ストラテジーの休刊も発表されたため、長年続いたIT関連誌が続々と休刊されることになります。

 インターネットのなかった時代、企業や情報技術の最新情報を知ることが出来るメディアは直販型の雑誌以外ありませんでした。日経BP社 は典型的な直販型の企業ですが、直販型のビジネスモデルは作成した雑誌を書店に置かず、新聞同様企業や個人と年間購読契約を直接交わすことが特徴でした。

 直販型の出版社の記者は多くの企業やフェアを回り、そこで集めたトピックや情報を質の高い形で記事にしてきたため、専門家やビジネスパーソンにとって非常に 最新で有益な情報でしたし、ビジネス活動やさまざまな研究開発に使われてきました。こうした 最新の情報は新聞に掲載されても具体的な内容は不十分でしたし、書店などで手に入る書籍や雑誌は、専門性や最新性に欠けるものがほとんどでした。そのため意識の高いビジネスパーソンであればこういった雑誌を個人で購読しましたし、企業も社員に閲覧させる目的で複数の雑誌を複数冊契約することは一般的でした。また直販型の出版社は、新しい技術やビジネスに関する特集を組んだ書籍やムックを自らや系列の出版社から発刊させ、雑誌と同様書店に置かず直販体制をとっていました。こうしてこれらの出版社は、雑誌の購読収入のみならず書籍の収入も得ることが出来ましたし、長期の定期購読を割り引くことでより多くの購読者を長期にわたり確保することが出来てきたのです。

 ところがインターネットの普及によって、最新の情報はこういった雑誌を頼らなくても簡単に手に入るようになりました。英語が読めればそういった雑誌がソースとしている海外の学会や企業の情報も直接手に入れることが可能になりましたし、その範囲や規模は無限と行ってもいいぐらい広がり続けています。さらにインターネットは原則無料ですから、即時性、網羅性、正確性、可用性、利便性、採算性などあらゆる意味で雑誌よりも有利になります。となるとまずは個人の購読継続がなくなりますし、やがてはコスト削減の中から企業でも購読の打ち切りが始まります。

 こうして徐々に、 直販型のビジネスモデルを持った出版社は苦境に陥ります。もともと日経BP社の出自が新聞社であるためか、新聞社と同様に定期購読者が離れていけば行くほどビジネスは苦しくなります。かつての栄華は昨日のこととなり、日々コスト削減と新規ビジネスの模索が続きます。それでも世界の新聞社がビジネスの終焉を迎えたように、日経BP社も同様の道を歩んでいるのでしょう。結果としてバブル期にふくれあがった日経BP社の雑誌群も年々休刊されるようになってきましたし、それが今回の休刊にも繋がっていきます。

 こうして不調な雑誌からコスト削減を目的とした休刊が始まります。同時に雑誌の休刊によって編集部も記者やライターも不要になるため、さらなるコスト削減のためにリストラも行われます。休刊を免れた編集部も人員が減ってきますので、一つの雑誌の編集部に1〜2名しか 社員は残りません。こうして記者が不在になり、質の低い外部ライターの書く記事には魅力がなく、結果として雑誌そのもの魅力がなくなります。結果として定期購読者が離れますから、この悪循環はさらに続きます。

 こうしてかつては栄華を極めたビジネスモデルも、社会の変化に対応出来なければあっという間に崩壊していくのが現在です。日経BP社の例は、これから多くの企業で起こるであろう事象の前触れであるように私には思えてなりません。