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Weekly report

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 June Third week

 相変わらず一週間がロケットのような速度で進んでいきますが、今週も少しだけレポートします。

 6月16日に米国Amazonが、全米460店舗を構える高級スーパーのホールフーズを買収することが報道されました。おかげで両社の株価は急速に乱高下したようですが、米Amazonの実店舗展開が進んでいるようです。

 Amazonはこれまでリアル店舗展開の一歩として書店を開店していますが、いよいよリアルの店舗運営ノウハウも得ようとしているようです。当面日本での展開はないかもしれませんが、少なくとも日本の流通業の機会と脅威は高まったように思われます。

 日本の商店街は、スーパーマーケットの巨大化とともに、あっという間に衰退していきました。例えばかつて深夜まで営業していた代表店舗の酒屋は、酒類取り扱い免許が緩くなった際にお酒の大型ディスカウント店が発達し、街中の酒屋がコンビニに転業したり廃業してしました。しかしその後免許の自由化と共にスーパーにその地位を奪われ、酒屋を淘汰した大型ディスカウント店も淘汰されました。まさにスーパーマーケットが酒屋に取って代わった瞬間です。

 もともとスーパーマーケットは、ナショナルブランドの商品を大量仕入れすることで仕入原価を下げ、一般店舗より価格を安くした商品を売るのがビジネスモデルでした。また生鮮食料品についても大量仕入れ・値引き販売を行い、街中の肉屋、魚屋、八百屋のビジネスを侵食していきました。それでもお茶や海苔は専門店のほうがバリエーションがありましたし、食器や金物などの商品をスーパーマーケットが取り扱うことはありませんでした。食品に関しても、焼きたてのパンや作りたての豆腐をもとめられたため、パン屋や豆腐屋が商店街に複数ありましたし、夕飯の食卓を飾る総菜や漬物を扱う店も沢山ありました。しかしスーパーが中食と言われる総菜を充実しさまざまな食品を広く扱うようになった結果、加工食品を扱う店が次々閉店に追い込まれます。食器や金物も郊外に大型DIYショップが生まれた結果、街中の商店は閉店していきました。こうして全国で郊外に大型スーパーや大型DIYショップが進出し、駅や繁華街近くの商店街がシャッター商店街に変わっていきました。

 シャッター商店街で生き残った店舗や新たに生まれる店舗は、クリーニングやヘアサロン、マッサージ店や不動産屋など在庫を持たない店か、飲食店などの外食を支える店ばかりでした。しかし狭いエリアにそれらが林立した結果過当競争が生まれ、やはりこれらの店も次々廃業していきます。飲食店は短期で新しい店に変わりますが、結局生き残るのは地元客を専門とする小さな飲み屋か、大規模チェーンの飲食店だけになります。どの街も個性がなくなり、街としての魅力を失っていきます。

 1990年代に生まれたインターネットショップは、徐々に参入する店舗が増えます。当初はリアルな店舗が同時並行的に行ってきましたが、インターネットを専門とする店も次々生まれ、街の商店街にないあらゆるものを取り扱うようになります。全国の無数の店舗が無数の商品を取り扱いますし、地元の名産品を全国に広めようとする店舗も出店します。生産者にとっては、スーパーや大手店舗に取り扱ってもらうために規模を大きくする必要もないですし、買いたたかれることもなくなりますから、ネットのメリットは大きいといえます。逆に消費者側にすれば、当たり前の商品や生鮮品はスーパーで購入すればいいですし、自分の好みの商品はネットを頼るようになります。となりますと、スーパーがどんなに扱い商品数を増やしても限界がありますし、その在庫が確実になくなる保証もありませんから、スーパーそのものが徐々に衰退していきます。これが今日の流通業の問題であり、7&iホールディングス、イオングループという流通業の雄も直面している問題です。

 こうして考えてみますと、米Amazonの取り組みは非常に面白く思えます。すなわち、リアルの良さとネットの良さを融合した店舗を展開できるということですし、報道されているように決済の手段も効率化すれば全く新しいビジネスモデルが生まれるということを意味します。ネットのランキングに沿った品揃えを行うだけでなく、地元の名産品や隠れた銘品の試食や展示によって購入者数を増やすことも出来ますし、サービスカウンターで自分の好みの注文商品を受けとることも可能になります。食品と上手にコーディネートすれば、什器や家具も販売できるかも知れません。

 このように米Amazonの取り組みは、流通業の今後を占う意味でも非常に面白いと思っていますし、日本でそのビジネスモデルを誰が一番最初に真似るか、同時にどのようにイノベーションを起こすかが本当に楽しみになってきました。もちろんAmazonが日本のスーパーを買収して、同様のビジネスを展開する可能性も否定は出来ません。誰がどのように日本の勝者になるか、流通業の機会と脅威は高まっています。