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Weekly report

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 June Fourth week

  東芝が東証二部に降格することが決定しました。半導体子会社の東芝メモリの売却も順調ではない現在、東芝の今後が非常に気がかりになってきました。

 今回の東証二部降格によって、東芝株の信頼性は急速に落ちます。機関投資家からは警戒され保有株を売却する動きが強まるでしょうし、小規模の投資家も敬遠傾向が強まるでしょう。なにより資金を十分に調達できない東芝自身、債務超過で投資すべき原資がありません。となると、一部に再上場するのはきわめて難しいといわざるを得ませんし、上場廃止の可能性も出てきてしまいます。名門企業の没落がどこまで続くかは解りませんが、無責任な経営者の判断が多くの社員の未来に暗い影を投げかけ続ける現状は本当に辛くさみしく感じると同時に憤りも消えることはありません。

 調べてみると、二部降格から一部へ返り咲いたのは、オリエントコーポレーションただ一社のみであり、他の降格企業は二部に存続するどころかほとんどが上場廃止となっています。このぐらい上場を維持することは難しいといえますし、その基準を満たさない企業が生き残って再成長することが困難なことが解ります。

 なにより業績回復のためにさまざまな負担が社員にのしかかりますから、働いている人間のモチベーションは上がりにくいでしょう。現状を維持することが精一杯であり、新しいことに取り組むのが難しくなりますし、この状況を嫌って他社に移動する人間も増えるでしょう。残った人間は少ない人員で現状維持をしなければなりませんし、どんなに頑張っても組織全体が劣化していますから再度輝きを取り戻すのは至難の業といわざるを得ません。転職の難しい中高年の管理者は本当に苦労が多いでしょうし、その不安と苦悩を想像するのさえ恐ろしいと感じています。

 この状況を呼び込んだ過去の経営者は厳しく断罪されるべきと思いますが、現在の経営者もかつての名門意識を捨て、ビジネスの舵取りをしていただきたいと願っています。今こそ集中と選択を行うべきですし、残したビジネスを守るのではなく、積極的なビジネス構造の転換を図っていただきたいと思います。

 しかし今回の件で疑問なのは、あらた監査法人の姿勢です。もともと東芝の不正な帳簿操作を見逃してきたのは業界大手の新日本監査法人ですが、その結果をもとに昨年度末からあらた監査法人に監査契約を切り替えました。あたら監査法人は監査が可能と判断したため契約を引き受けたと思うのですが、このところの一連の流れを見ていると、あらた監査法人が適正な監査を行ったように思えないのです。

 あたら監査法人の言い分は、帳簿の適正性を保証するためには、不正を行っていない証拠を提出しろと言い続けていますし、東芝は何を証拠として提示すればよいのかを同時に尋ね続けています。つまり新た監査法人が医者だとすると、診断結果を出すためにはまず自分が病気であることを立証しろと、患者にいっているのと等しいように思えるのです。患者は不摂生によって自ら病気になり、その病気を隠してきたことは事実です。しかしその病気が露見し、その患者を取り巻く人間に迷惑が及ぶことになったので、医者の正しい診断を受けることを皆が望みます。それに対して新しい医者が、診断を下すためには自分の病気を立証しろ、というは筋違いに思えてなりません。

 患者がどんなに自分の症状を隠しても、各種の検査を通して病気の存在と原因を発見するのが医者の役割のはずです。まさに監査法人は、企業という患者の健康状態をさまざまな検査で把握し、病気とその原因をあきらかにしてその治療方法を考え支持するのが役割のはずです。もちろんその治療方法を拒否する権利は患者側にありますが、まずは病気の存在と原因を指摘するのは医者側の役目のように思えるのです。

 訴訟を怖がる医者が、その病気の存在を患者側に立証させ、その立証したものだけを治療するとすることは医者の役割を放棄しているように思われます。医者である以前に、医者であること自ら否定しているように思われるからです。放棄の原因が訴訟だとすると、ますます本末転倒に思えてなりません。さらに監査法人の場合は、患者である企業を選ぶことが出来ます。あらた監査法人は契約をした以上患者である東芝を選んだのですから、今回の騒動の責任は、あらた監査法人側にあるように思えてなりません。

 世界の監査法人は、かつてのBig8という八大監査法人が、現在のBig4といわれる四大監査法人制へと寡占が進んでしまっています。この弊害が、今回の原因の一端であることは間違いありませんから、監査制度の抜本的な見直しが世界的に望まれているように私には思えます。