早いもので今年も半分が終わりました。なにも成果が残らないまま日々が過ぎていく気がしますが、少しずつ前を見据えて次の努力を始めようとする気持ちがちょっとだけ芽生えています。
さて先週までも様々な事がありました。やはり一番大きかったのは、戦後最大の破綻であるタカタの件でしょう。発火式エアバックのインフレータの不良から端を発したさまざまな問題により、結局1兆円の負債を抱えた民事再生という形になりました。利用する自動車メーカー離れが続く中、今後どのように企業を立て直していくかは興味のあるところです。
とはいえ新聞を広く眺めていると、本当に大きな変化の時代に我々は生きていることに気づかされます。私がITの世界には行ったときは、まだまだ大企業の事務管理負担の軽減や効率化のために大型の情報システムを開発し運用することが一般でしたが、現在すべての企業のすべての業務、すべての装置にITが導入されているといっても過言ではありません。いままで人手では出来なかったり時間がかかったりする業務が、ITを利用したデバイスで可能になってきています。
たとえば伊藤園は、ドローンを使って茶畑の管理を行うようです。同じ土地の上でも日当たりや風通しによって、茶葉の生育状況は変わります。毎日細かに人間が歩き回っても、すべての状況を逐一把握することは難しいでしょうし、いつどの辺が積み時かも人間の経験と勘に依存せざるを得ません。タイミングを逃せば茶葉の品質も低下し収穫量も減りますから、損失は軽微なものではないでしょう。しかしドローンを利用することで、一日に何回も茶葉の生育状況を把握すること出来ますし、どのエリアがどの程度生育しているかもリアルタイムで解ります。なによりその変化状況をリアルタイムで長期間記録できますから、畑の場所や気象条件などから最適な摘み取り時期を予測することが可能になりますし、職人の経験や勘がAIを利用して再現できるようになることを意味します。
NECは、ナマコの密猟者を発見するシステムを開発しました。無人でナマコの漁場に浮かび、許可された以外の船舶が近づくと警告メールを漁協関係者に送るようです。日本の海全体に漁業権が適用されていますが、違法に海産物を密漁する人間も後を絶ちません。今までは警戒のための船が巡回するしかありませんでしたが、人手に頼ればその網羅度や精度は保てませんし、コストもかかります。こういった仕組みが密漁を防ぐと同時に漁獲高の向上に繋がるのは、本当に漁業関係者にとっては望ましいことといえるでしょう。
JR西は車両の下のカメラによって線路の状況を捕捉するシステムを開発していますし、これによって保守作業員の負荷を下げ保守精度を高めています。線路だけでなく道路の整備状況やアスファルト下の空洞を見つける仕組みもありますし、道路の通行止めをしなくてもさまざまな調査が可能になることは本当に便利で安全ということができます。生活の分野では万引き犯を特定するような仕組みもあります。お店における人間の挙動を捕捉し、万引きをしようする人間を記録する事が出来ますから、利幅の低いさまざまな実店舗におけるロスの低減を低コストで行えるようになります。
現在の自走自動車は車の走行に支障を与えるあらゆる障害物の情報を把握しますが、歩道を歩いている人間の顔を識別することはしません。しかしそこに行方不明者や犯罪者が歩いている可能性もあるとすると、自動車が人の顔を識別し特定の人間と紐付けられることは意味があることと思えます。指名手配犯の発見に役立つだけでなく、タクシーを呼んだ顧客を特定し、正確に適切な顧客を乗せることできるようになるからです。このようにITやデバイスの進化によってこれまでできなかったこと、人手だと時間やコストがかかって難しかったことが次々できるようになっていますし、この流れは止まることがありません。
このように考えてみると、やはり今後の進化の足かせは、人間の想像力になるように私には思えます。あらゆる分野にITが普及して行くことは間違いありませんが、それはそのアイディアがあったからこそ実現されるものです。今行っていることをIT化することは難しくありませんが、今までできなかったことをIT化するためには、どうやったら出来なかったことができるようになるか、それが何を生むのかが想像できなければ生み出すことはできません。
人間の想像力は無限です。しかしその想像力を発揮するためには、日々のたゆまぬ努力が必要です。あらゆるメディアが想像を絶する映像を毎日数百と垂れ流す現在、もう一度目をつむり頭の中で想像する努力を、我々はたゆまず続けなければならないと真剣に考える毎日です。