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Weekly report

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 July Fourth week

 早くも7月も終盤、夏休みに入ってのWeekly Reportです。

 先日ネットのニュースで、発泡酒のCMが公開中止になったことが報じられていました。テレビでのCMと異なる内容であり、卑猥なイメージを浮かべさせるとのクレームがでたため公開が中止されたようです。今月初めには観光PR用のCMも同様の批判が出ていましたが、最近はこういった内容の映像が増えると同時にそれに対するクレームが多くなったように思われます。

 私が若い頃は、テレビのみならず世間そのものが緩やかでした。新人の頃は生命保険の勧誘員がヌードのカレンダーを職場で配ることは普通でしたし、テレビの深夜番組でヌードの女性が出演することもよくありました。昔の森繁久弥やクレージーキャッツの映画では、女性の体を触るシーンが普通にあるほど問題意識は国民全体で希薄だったのでしょう。しかし時代が進むと共にセクハラなどが問題になり、テレビなどのメディアもさまざまな自主規制がかかります。性的・差別的な表現は基本的にNGですし、批判も多く上がります。

 しかしこの流れは、世界的な流れといえるようです。もともと世界は、基本的に男性中心で作られてきました。男は外で働き、女は家を守る。これが世界的な価値観であり、一般的な考え方でした。日本でも法的には一夫一妻制度が確立されたのは明治時代からですが、その昔は庶民は一夫一妻でも、跡継ぎを必要とする社会的地位の高い人間には側室がいることが普通でした。明治の後もその慣習は変わらず、妾宅といわれる存在はしばらく戦後も続いたように思います。しかし社会の成熟度が高まった近年は、世界で男女平等と女性の地位向上が叫ばれるようになります。生物的な性差はあっても、役割としての性差は不要といわれるようになりましたし、事実多くの部分で不要に感じることは多いと私も思います。

 さらに日本の労働状況を考えると、少子高齢化は社会の労働人口を徐々に減らすことになりますから、現在の社会機能を維持することは男性だけでは不能ですから、様々な仕事のIT化のみならず女性の進出が必要であることは事実です。我々のIT分野も、若年者を中心に徐々に女性の進出が高まっているようには感じますが、管理職以上になると女性はほとんど存在しないことは昔から問題と思っていました。

 しかしこういった社会風潮を、不満と思う男性も少なくはないのでしょう。私も男女平等ではなく女性上位の考え方は好きにはなれませんし痛々しく思える部分もあります。しかし女性が男性と競って勝つことを良しとしない、むしろ女性に負けることを怖がる男性も中高年を中心に多くいることは事実です。反面実際の女性とコミュニケーションを取れない草食系と言われる男性も若年層を中心に増えていますから、男女の距離感が謝意的に微妙な状況になっているともいえます。

 このような状況を背景に、上記のようなコマーシャルが生まれてしまうように思えるのは私だけなのでしょうか。広告を企画する人間は、マーケットといわれる視聴者層を明確に絞って内容を考えます。CMの内容を見ても、このCMに反応するのは中高年の男性や草食系の男子のように思えます。(妙齢の美女から積極的にコミュニケーションを取られて嬉しいのは、上記の人たちのように思えるからです。)発泡酒という商品の特性から考えると、やはり女性よりも男性が対象ですから、こういったコマーシャルを企画することは十分に考え得ます。

 しかし観光PRのケースを考えると、上記が当てはまらないことに気づきます。観光を楽しむのは男女ともですし、むしろ女性に嫌悪感をいだかせる内容にするのは観光PRという性質上望ましくないはずです。それにもかかわらずこういったCMを企画した真意を考えてみると、上記の発泡酒にも共通するある特徴に気づきます。

 それは何かといえば、ネットの炎上です。つまりこういったきわどいCMを作成することで炎上をよび、それによってネット上でCMの知名度を高める、つまり多くのユーザーに意識を植え付けようとする広告の企画者の思惑が見えてくるのです。普通の広告をつくっても、多くの視聴者の意識に残ることはありません。これだけ毎日多くのビールや発泡酒の広告が流れていますが、コンビニのビールや発泡酒売り場に行ってもCMが思い出せるものは多くはありません。目を引くのはコンビニ専門の商品であり、CMが売上に大きく関わっていると思われる商品はそれほど多くは内容に思えるのです。ところが今回のようにCMを炎上させると、多くの人間が反応を示しますし、メディアも積極的にそれを報じます。つまりCMという媒体だけでなくネットの様々なルートがその商品に関わる情報を流しますから、広告を企画する側としては非常に効果的といわざるを得ないでしょう。

 さらにそれを立証するのは、両者のCMとも基本的にネット上で公開されているということです。くだんの観光PRのCMをテレビ直接見てはいませんし、発泡酒はネット限定です。となると、やはり炎上を狙った広告のあり方のように私には思えますし、企画者の意図も明確に伝わってきます。

 この風潮をどう考えるかは、難しい問題です。しかし炎上を目的とした情報発信によって利益を得る個人や企業があることも事実です。ネットという未成熟な分野だからこそ、一般の社会と違うルールやモラルが必要といえますが、炎上を狙う側、炎上をさせる側ともそのルールがないからこそ過激な反応にでます。それによって傷つく人や組織があるのであれば、やはり新しいルールやモラルを国ではなくネットの世界で確立し、それを守り監視する仕組みを作り出していく必要があるように私には思える一件となりました。