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 September Second week

 世界の自動車メーカーが、大きく動き出しています。

 先日の報道で、ボルボの2019年以降の発売車は純粋なガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車はなくなり、すべてハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)になるそうです。その数日前の報道でも、ジャガー・ランドローバーも同様の報道をしており、いよいよガソリンやディーゼルといった内燃機関だけの自動車はなくなっていくようです。これらは地球温暖化防止を前提とした世界的な環境基準の強化が原因ですが、この動きは間違いなく世界中に広がりそうです。

 日本では日産自動車が、EVに本格的に舵きりを始めたようです。HV車やPHV車は内燃機関を搭載しておりますが、それでもCOの排出が続きます。さらにエンジンとモーターを併存させるHV車の開発には、高い技術力と資金が必要となります。日産自動車はハイブリッド車開発で出遅れ、トヨタに大幅に市場を占められてしまっていますので、ゴーン社長はその資源をEV開発に絞ったようです。内燃機関には技術と数多くの部品が必要なため、トヨタは系列を維持するために簡単にそれを捨てることは難しいとゴーン社長はいいます。となると、より速くEVにシフトし、その市場をルノー・日産グループで占めた方がメリットが大きいと考えたのでしょう。しかしトヨタ自動車には水素エンジンという未来があるため、内燃機関を簡単に捨てるとは思えません。となると、未来はEVと水素エンジンの戦いになるのかも知れません。

 いずれにせよ、自動車の世界がこれだけの速度で変化が起きている以上、世界の勢力図が大きく変わる可能性が高まっています。

 世界の自動車産業を大きく分けると、フォードやクライスラー、GMなどのアメリカ勢、ベンツやBMW、ボルボやルノーといったヨーロッパ勢、トヨタやホンダ、日産という日本勢、現代や起亜などの韓国勢などがあります。もちろんインドや中国などの新興勢もありますが、やはり有力なのは上記の四勢力でしょう。これまでは価格や品質の面で日本が世界の市場で優位な位置を築いてきましたが、積極的な輸出攻勢でヨーロッパ勢の進出も世界中でみられます。

 反して米国は相変わらず米国中心主義でマッチョでガソリンを食う車を中心に作り続けてきたため、すべてのメーカーが一旦破綻しましたし世界でのシェアを徐々に失っています。逆に新興のテスラのような環境に優しい自動車メーカーがシェアを伸ばし、米国も環境重視の方向にシフトし始めています。カリフォルニア州では、HVも認めない強い規制が始まりそうですし、米国での米国車のシェアも大きく変わる可能性が高まってきました。

 最近は自動車の自動化や安全化に目が向きがちでしたが、このように自動車の基本である動力機関そのものの変化も大きく起きようとしています。地球温暖化が引き起こす異常気象や大型災害を目の当たりにすると、こういった動きは非常に重要と思われます。その意味でヨーロッパの自動車メーカーの動きが非常に気になりますし、日本メーカーもどのような戦略で戦っていくのかが興味の的です。私自身マツダがこの状況の中どこまで内燃機関のエンジンにこだわっていくのかが面白いと思っていますし、マツダが方針転換したときが内燃機関の分水嶺になると思っています。

 ただし新しい車が次々と環境に優しく変化していっても、ガソリンやディーゼルを使った車を一斉に無くすことは難しいでしょう。古い車ほど環境負荷は高いですから、それらをどうしていくかの方向性も考えなければなりません。さらにガソリンスタンドが充電スタンドと共存していかなければなりませんし、そこに水素が加わる可能性もあります。ディーラーのみならず街の自動車修理工場もどのように変容していくかも気になりますし、さまざまな自動車をベースとした社会インフラそのものがどのようになっていくか非常に面白いと思っています。

 このように変化論者である私でさえも、舌を巻くような速度で世界は変化しています。その変化の速度を阻むのは、人間の脳と常識であるように感じざるを得ません。私のような老頭児がもやは新しい時代の速度に同調したり凌駕することは不可能ですが、若者には無限の可能性があります。逆にこの速度を維持向上できる脳を作り、非真面目に仕事に臨む姿勢が今の若者に求められています。それに気づいている経営者がどのくらいいるのか、さらに具体的な方策をもっている企業はどのくらいあるのか、心配せざるを得ない時代が始まっているように感じます。