本当に寒暖差の激しい週が続きます。このところセミナー続きで非常に忙しく、その上で気温変動がありすぎて体がついていきません。風邪だけでなく体の各所で体調不良が起きており、本当に毎日しんどい目に遭っています。
さて先日アップルと映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏が契約を結んだことが報じられました。往年のテレビシリーズの「アメージング・ストーリー」の新作10本についての製作依頼であり、スピルバーグ氏はこれを引き受けたようです。もともとのアメージング・ストーリーもジョー・ダンテ、マーチン・スコセッシ、ロバート・ゼメキス、クリント・イーストウッドといったそうそうたる映画監督が監督をした作品であり、スピルバーグ氏は原案を担当していましたから、今回もそういった豪華なシリーズになる可能性もあります。いずれにせよ私のようなシネフリークからすると、楽しみなシリーズとなりそうな予感です。
「アメージング・ストーリー」と、そのもととなった往年のテレビシリーズである「トワイライト・ゾーン」について記述してもご興味をお持ちの方は少ないと思いますので、これはどこかの飲み屋で話をすることとして、今回面白いと思ったことを少しだけ述べたいと思います。というのは、今回のスポンサーがアップルであるという点です。アップルはiTunesでさまざまなコンテンツを取り扱っていますが、いよいよ独自コンテンツにも進出しようということなのでしょう。なぜなら世界的な動画配信サイトにはAmazonやHulu、Netflixなどがあり、ぞれぞれさまざまな動画の配信で競っています。各社とも他社との差別化を図るために独自コンテンツ作成に積極的であり、品質の高いコンテンツが差別化と顧客獲得の絶対条件になっているのでしょう。
この状況はアップルも同様のようであり、今回のコンテンツ作成に繋がったように思われます。アップルが思惑通り顧客の囲い込みに成功するか、あくまでもiTunesに表示されるコンテンツの一つとして扱われるかはこれから次第ですが、いずれにせよこういったコンテンツビジネスの新しい競争が始まっていることは間違いありません。
このように動画配信会社の急伸には、コンテンツを取り巻くさまざまな環境編があります。まずはデバイスの発達です。今や家庭のテレビでさえネットワークとの接続は必須ですし、テレビ以外のさまざまなコンテンツを利用する環境が整っています。もちろん動画はPCやノートPCのソフトでも楽しめますし、タブレットPCやスマートフォンでも鑑賞は可能です。私の年齢ではスマートフォンでの視聴は考えられませんが、タブレットPCであれば十分可能です。年齢と共に映画館が消滅し、シネコンばかりになってしまった今、映画そのもの楽しむのはこういった機器が中心になってしまいました。私も15年ほど前から映画は基本的にノートPCやタブレットで楽しむようになっていますし、ちょっとしたタブレットでも10本以上の映画を入れておけますからデバイス的には本当に良い時代になりました。
次にサービスの充実です。昔はテレビかレンタルビデオショップでしか映画や海外TVドラマを鑑賞する方法はありませんでしたが、現在はこういった動画配信会社が数多く存在します。先程のAmazonやiTunes、NetFlixやHulu、といった世界的な配信会社もありますし、dTV、TSUTAYAやDMMなどの国内系の配信会社もあります。各テレビ局は自局の過去の番組を配信していますし、まさに百花繚乱といた状況でしょう。
さらには視聴者の生活習慣の違いです。かつてはテレビ番組を決まった曜日の定刻に見ることは当たり前でしたし、翌日の話題に乗り遅れないためにも必要だったといえます。しかし現在ではテレビを視聴する習慣そのものがない若者も少なくありません。長時間CMだらけのコンテンツに縛られなくてもネットで視聴することが可能ですし、そもそもテレビのチャンネル分しかないコンテンツであれば、ネットと勝負にはなりません。好きなときに好きなコンテンツを見たい、という欲求にはネットが極めて高い親和性を提供しますし、すき間の時間を埋める意味でもこういった視聴形態は非常に望ましいといえます。
最後にコンテンツ制作側の思惑もあります。かつて映画は映画館で公開し、その後二番館等で再上映する、あるいはテレビで放映するといった手段しか制作費を回収する手段はありませんでした。それでも制作費が低ければ、それで十分回収できましたし、製作本数が少なければ競争も少なかったといえます。その後ビデオやDVD販売での収入も確保出来るようになり、ある程度のヒットさえすれば制作費の回収は可能でした。しかし現在はSFXなどを用いた大作も数多く製作され、そのコストは年々上昇しています。となると米国映画館の興行収入だけで制作費を賄うことが難しくなりますから、それらの回収のためにこういった配信会社の存在は非常に大きいといえます。配信会社一定のコストで配信権を購入しますから安定した収入が期待できますし、それによって世界規模では公開できないような映画でも、それらを使って収入を上げることが出来るようなったのでしょう。
こうして既存メディアであるテレビや映画館は徐々に廃れ、コンテンツ配信会社が台頭していくのでしょう。今年米国の映画公開売上でそれなりの人気があった映画も、映画館ではなく直接コンテンツ配信に決まってしまうなど、そもそも映画館で望む映画が見られない状況も始まっています。今後こういった傾向は益々強まるでしょうから、コンテンツを取り巻く環境は大きく変わっていくのでしょう。DVDやBDでのコンテンツ販売も徐々に廃れ、こういった新しい波に取って代わられるのも時間の問題かも知れません。
大きなスクリーンが好きな私のようなシネフリークでも、タブレットPCでの視聴を行っているこの時代、コンテンツのあり方は大きく変わっていくのは当然のように思われます。しかしそれでも心のどこかで大きなスクリーンでの視聴を求めている私は、前時代の遺物になりかけているのかも知れません。

熱川・海潜亭 120インチスクリーン