銀行の支店閉鎖が、いよいよ始まりました。
事の起こりは先月末、みずほファイナンシャルグループが、グループ全体の人数の1/3にあたる1万9千人の人員削減を図ると発表したことです。その後三菱東京UFJ銀行も、国内480店舗のうち1〜2割を削減することを発表しました。いずれもネットバンクなどの伸張と、銀行業務そのもののIT化により人員が余剰になっていること、資金調達の多様化により銀行の貸付残高が減っていることなどの理由により、合理化を図る必要があるためです。
銀行業務を考えてみると、大企業の融資を担当する本店や首都圏の支店以外は、郊外や地方の支店が数多くあります。規模の小さな支店でも窓口や内部の事務に相応の人員が必要ですし、店舗や企業を回る外回りの人員を考えると相当数の人員を銀行が擁していることがわかります。口座の開設や融資、回収や金融商品の販売など、沢山の業務をこなすためにそれなりの人員が必要となりますし、お金を扱っている以上相互牽制を聞かせる必要がありますから、人員を簡単には減らせない側面もありました。
それでも経済が活況で資金重要が強ければそれらの人員のコストをまかなえますが、郊外や地方の経済は決して活況とはいえない状況です。さらに郊外や地方では、経済の低迷や大手企業の店舗進出と経営者の高齢化により、店舗や企業が次々閉店しています。シャッター商店街の名が示すとおり、多くの商店街の経営が成り立たなくなり、資金需要そのものが減ると同時に入出金の必要性も下がります。となると、店舗を設置してもそのコストを回収できなくなるだけでなく、減少する顧客のために多くのサービスを用意することも不合理になりますから、店舗そのものの必要性がなくなるのでしょう。こうして大手銀行は、店舗の閉鎖と人員削減にいよいよ手を付けざるを得なくなったように思われます。
さらにネット経済の伸張は、現金そのものの必要性を下げていることも事実でしょう。個人の手から商店を経由して銀行に現金が環流するのではなく、口座に振り込まれた給与を各種の自動引き落としとカード決済によってデータとして移動するだけですから、現金を管理する人員がますます不要になります。ネット銀行のように口座開設から貸し付け、返済まで全部データで行いうる時代に進んだのもネット経済の特徴であり、これがますます銀行の支店を不要にする原因となっているように思われます。さらに現金も、コンビニさえあれば全国どこでも引き下ろすことが出来ますから、独自店舗のATMですら必要がなくなります。事実最近支店のATMの台数は減少の一途ですし、反面商業施設や商店街の一角に小さなボックスが置かれることが増えたように思われます。
多くの法人需要をかかえる大手銀行ですら支店と人員削減に手を付けなければならない状況に進んでいる以上、地銀や信金、信組にとっても苦難の時代の始まりといえます。バブル崩壊後信金や信組の合併が相次ぎましたが、今後はこの加速と店舗と人員の削減が一層始まりそうな気配です。
私の会社もそうであるとおり、銀行は融資という重要な任務を負っています。融資の審査や経営の相談といった外回りの要員が果たしてきたサービスは、ネット銀行で簡単に代替できるとは思えません。クラウドファウンディングのような新たな資金調達の方法もありますが、一般企業にとってはまだまだハードルが高いですし、貸し渋りや貸しはがしに苦しむ企業が未だにあるように融資の問題が解決できているわけではありません。その問題をどのように解決していくかは銀行の役割のように思えますが、今回の合理化の流れをみるとその機能を放棄してしまったように思えるのは私だけなのでしょうか。
こうしてつぶれないといわれてきた金融機関も、いよいよ時代の流れで徐々に一般企業と同じ状況に陥ってきています。フィンテックという言葉やマネーゲームという華々しい側面だけでなく、資金の環流という役割を今後誰がどのように担っていくのか、新たな考えが求められるように思われてなりません。その仕組みをきちんと確立しない限り、日本でベンチャー企業が次々生まれたり地方の企業が大きくなることは難しいと思いますし、それは経済力を弱めるだけでなく、雇用も生まないことを我々は忘れてはなりません。
そういえば私の副業であるダイビングの世界でも、トップブランドで会ったスキューバプロ社の日本総代理店が解散になりました。水中でのバランスが取りやすいスタビライジングジャケット(BCD)は日本独自のものだったようで、今後このシリーズは廃盤となるようです。私も30歳代でダイビングを復活して以来愛用してきたタイプですので、とても悲しい気持ちが残ります。