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Weekly report

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 March Second week

  先日米国のアカデミー賞が発表されました。作品賞は「シェイプ・オブ・ウォーター」が受賞し、監督賞はその監督であるギレルロ・デル・トロ氏が受賞されました。発表の日は自宅でデスクワークだったため中継を見ていましたが、昨今の映画を取り巻く環境を踏まえたメッセージ性の強い授賞式になったように思われます。

 事の発端は昨年の「#MeToo」運動です。アメリカの実力派プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインが長年にわたってハリウッドの女優を中心にセクシャルハラスメントを行っていたことが告発され、対象となった多くの女優が被害の声を上げました。結果としてワインスタインはハリウッドから追放され、セクシャルハラスメント撲滅の機運が高まりました。

 しかしこの運動で大切なことは、セクシャルハラスメント撲滅だけが運動趣旨ではないと言うことです。すなわち権力をもった男性が女性に対してセクシャルハラスメントをしないことを呼びかけたのだけではなく、すべての人が平等な社会を作ろうというのがこの運動の根源にあり、その姿勢が強く今回のアカデミー賞では見受けられました。実際この運動には、女性だけでなく男性も多く賛同していますし、団体に対する寄付金も多く寄席ら得ています。

 一番有名なのは、「All the money in the world」という映画に主演したアカデミー賞男優であるケヴィン・スペイシーがセクハラのため降板させられた事件です。撮影はほぼ取り直しとなり、クリストファー・プラマー氏を代役として再撮影が行われました。助演のマーク・ウォルバーグ氏は再撮影の出演料として150万ドルを受けとりましたが、助演女優のミシェル・ウィリアムズ氏はたった1000ドルしかもらうことが出来ず、明らかな差別となりました。(両者は同じエージェントに属しているそうですので、エージェント自身の差別も疑われています。)この事態を反省したウォルバーグ氏は、ミシェル・ウィリアムズ名義でMeTooの団体に全額を寄付したと言われています。

 これまでのハリウッド映画では、ほぼ白人男性が主人公の映画ばかりであり、女性が主人公、あるいは白人以外の人種が主人公になる映画の比率がきわめて低かったといえます。もちろん人種差別撤廃のため、映画には一定の比率でさまざまな人種が登場することを義務づけているのですが、主人公となるのはほとんど白人男性でした。監督や脚本、音楽などもそうであり、女性や白人以外の人種のスタッフがノミネートされることは本当に少なく、厳然たる差別があったように思われます。実際第90回となる今回のアカデミー賞でも、ノミネートされた女優や女性スタッフは全体の2割以下であり、この状況は未だに続いているとしかいえないように思われます。

 しかし今回プレゼンターになった俳優や受賞した方のスピーチを聞くと、その問題を解決しようとする強い意志が所々で見え隠れしました。女優や女性スタッフが、セクハラの撲滅や女性の地位向上を訴えることは当然のことでしたが、白人以外の人種や米国移民であることを明言する俳優やスタッフも多く、トランスジェンダーなどについても発言する方も多く見受けられました。まさにダイバーシティ(多様性)を実現しようとする強い意志が見られましたし、自らが社会を変えようとする米国人の気質が見られたように思われました。

 監督賞を受けたデル・トロ氏はメキシコからの移民ですし、現在米国の映画史上において空前のヒットを放っているは「ブラック・パンサー」という黒人が主役の映画です。このようにアカデミーも社会も、多様性に向けた変化が起きていることは間違いなさそうです。

 しかしこれを我々の国に当てはめてみると、やはり状況は同様であることに気づきます。社会は男性中心であり、日本人がほとんどの役職を占めます。管理者の大半は男性ですし、外資系でもない限り日本人が中心です。ルールも男中心であり、女性が働きやすいルールを整備しようとする姿勢はまだまだ弱いとしかいいようがないように思います。社会では、女性を守るための女性専用車に男性が乗り込み権利を主張するといった本末転倒な事態も起きていますし、外国人はうるさくて迷惑、とはいえ面倒な作業や仕事は外国人に低賃金で行わせる、といった偏見も未だ変わることはありません。国は基本的に移民を認めず、高額の税金を払っている外国人でも参政権は与えません。セクハラ・パワハラは留まるところがありませんし、LGBT問題も一時盛り上がっただけで実際は忘れられてしまっているように思われます。結局、日本人男性による日本人男性のための社会構造は未だに変わっていませんし、変わる気配もほとんど見えません。

 日本のこの状況を変えるためには、我々一人一人がハリウッドの人たち同様意識を変えていくしかありません。社会に参加するすべての人が過ごしやすい社会を作ることが大切ですし、そのためは古いルールも積極的に変えていくしかないのです。超高齢化と少子化で日本の人口は減る一方ですから、女性の社会進出と優秀な外国人の流入を積極的に行っていかない限り、日本の明日はありません。だからこそ、成り立たなくなった未来で対応するのではなく、今から十分に議論を行い、すべての人にとって平等で住みやすい社会を作らなければならないと、私は考えています。

P.S.

 とうとう7回目のこの日が来ました。未だに発見されない方もいらっしゃる中、記憶は風化しています。我々は多くの貴い犠牲から得た教訓を、これからのために活かさなければなりません。もう一度災害の備えを確認し、まずは自分と家族を助けられるようにしましょう。自助努力は、他人のための第一歩です。 合掌。