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Weekly report

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 March Fourth week

  北海道の菓子メーカである六花亭が、オリンピックで女子カーリング選手が使った「そだねーという言葉を商標登録申請しました。六花亭といえば「マルセイのバターサンド」という菓子が有名であり、北海道出張定番の銘菓です。私もかつては年に1〜2度北海道に出張していましたが、その都度千歳空港で購入した記憶があります。

 とはいえ六花亭は帯広の菓子メーカであり、女子カーリングで有名になった北見ではありません。ネットではオリンピック需要を当て込んだ独占的な商標登録をおこなったとの誤解もありましたが、実際は関係のない第三者が勝手に商標登録を行い利用権収入を得ようとする動きを阻止するために行った登録のようです。

 商標について、六花亭には苦い経験があります。中国において商標を登録しようとしたところ、六花亭の名称やロゴが六花亭とはまったく関係のない中国の個人によって登録されていたことがありました。これにより六花亭の商品の模倣品のほうがが中国国内では真性となり、正規の六花亭の商品を中国で販売することが出来なくなりました。結果として六花亭は中国での売上を失うだけでなく、旅行などで六花亭の商品を知った中国人が偽物を本物として購入してしまうため、偽物の品質の劣化が六花亭のブランド力を毀損させることになってしまったのです。六花亭は数年にわたる裁判で商標と取り戻しましたが、それにかかった時間と費用は膨大になったことは間違いありませんし、こういった問題を起こさないために今回の申請に踏み切ったようです。

 このような問題は中国で頻発しており、これまでも「クレヨンしんちゃん」をはじめさまざまなブランドや商品、著作が勝手に商標登録を行われています。酷い場合は地名まで商標登録を行ってしまい、その地方の製品等を中国で販売することを阻害したり、偽物が横行する結果となっています。こうした偽物の横行による経済価値の喪失やブランド力の毀損は、多くの企業や自治体にとって大きな問題といえるでしょう。

 もちろん日本でも「PPAP」や「あまちゃん」などの名称が商標登録を申請されたことがあり、中国だけの問題とはいえません。これらを登録したのはまったく関係ない第三者ですし、その権利を元に本来利用できる人間や組織に利用権や譲渡費用を請求する明らかな権利商法ということができます。こうした問題を積極的に回避するため、六花亭は「そだねー」という商標を獲得することを目指したようですし、利用したい企業に対しては基本的に無料で利用を認める方針のようです。

 このように、現行の商標権では先願主義を取っているため、本来の権利者でない人が勝手に商標を登録できてしまう問題が避けられません。先願主義に対する考え方が先発明主義ですが、先発明主義は登録すべき権利を先に考えたことを証明する面倒があるため、日本以外の多くの国でも先願主義が取られています。しかしこのために本来の権利者以外が、権利を横取りするがごとく登録を可能にしてしまっています。もちろん本来の権利者が自分の商標であることを裁判所に訴えることは可能ですが、先使用権といわれる本当に先に使われていたかを認めさせることが結構難しいのが難点です。受付先である特許庁は審査に多大な労力がかかりますし、訴えが起きた場合には裁判所も同様以上の労力が必要となります。こうした経済的損失はすべて税金ですし、利益目的の第三者の勝手によって発生する事を考えると強い憤りを感じてしまいます。

 こうした問題を解決するために、モラルに頼るのはナンセンスでしょう。倫理上は正しいのでしょうが、社会秩序より自分の利益を目指す個人は多いでしょうし、日本人以外も申請が可能とすればまずます実効性は薄いと思われます。逆に先発明権のように、自らが誰より先に産みだしたことを証明することは非常に労力がかかりますし、その労力を払える大きな企業や組織のほうが有利になりますから、これも問題といえます。となると、解決の方法はないように思えてしまいます。

 しかしよくよく考えてみると、インターネットとビッグデータ、AIが発達した今ならば、こういった問題を回避できる可能性は高まっています。すなわち商標権の申請時や無効の裁判の際にインターネットを利用して世界中のデータベースを検索し、同一のものがないかをAIに自動的に探らせることができるようになります。これによって特許庁や裁判所の負荷はかなり下げられるようになると思われます。逆に申請時にクラウドのサービスなどで事前に探査を行い、その結果と共に申請を行わせるようにすれば、それが本当に申請者が生み出したものなのか他者の権利を営利目的で奪おうとしているのかを判断できるようなります。さらに繰り返し虚偽の申請を行うものに対する罰則も決めれば、そういった不当な利益を得ようとするモチベーションを下げることが出来ると思います。

 同時にクラウドサービスの提供者としても、世界中にこの仕組みを提供出来ますから相当な利用料が見込めます。開発に時間とコストがかかっても十分に回収できるでしょうし、そういった権利や発明を専門にコンサルティングを行う企業と協力すればかなり精度の高い仕組みを構築することも可能でしょう。

 このように新しい時代に向けて、新しい仕組みを作っていくことを世界は望んでいます。我々IT業界に属する人間はそういった問題を常に意識し、新しい仕組みを提供して健全な社会を創造し同時に利益を得ることを考えていかなければなりません。