早くも四月の最終週となりました。ゴールデンウィークまであと一週間、なんとか頑張って乗り切りたいと思っています。
さてAmazonの勢いが、止まりません。18日にCEOのベゾス氏は、Amazonプライム会員が全世界で一億人を越えたことを発表しました。日本ではクックパッドやDELISH
KITCHENと提携し、Amazonフレッシュでレシピの材料を購入できるサービスも始めるようです。書籍や雑貨、音楽や映像配信など、貪欲なまでに流通を制覇しようとするAmazonの動きは日本の流通業界の脅威に思いますし、そろそろ本気で日本の流通を取り戻す企業の出現を望みたくなってきます。
ご存じの通りAmazonは米国の会社です。しかし同時に国際的な企業であり、世界中に活動拠点を有しています。ところがAmazonはそれぞれの国の税制を上手に利用し、各国の徴税ならびに米国本国の徴税も逃れてきました。いわゆるタックス・ヘイブンといわれる租税回避地を上手に利用することで、世界中で納税を回避しているのです。それに対して各国の流通業は、その売上に比した納税をそれぞれの国に行っています。利幅の薄い流通業では税額負担は大きいものですし、売上が同じでもAmazonのように納税回避を行って節税すれば、利益の幅が大きく変わってしまうことは当たり前といえます。となると、Amazonとの正当な競争を行える企業は国内にはないことになってしまいます。
これはさすがに不公平に感じますし、日本国内の流通業の危機にも繋がりかねません。なぜなら、このまま不公平な競争を続ければ対等な流通業はなくなってしまいますし、結果として消費者に選択権がなくなりすべてのものをAmazonから購入せざるを得なくなります。まさに独占の状態ですから、Amazonの方針次第で消費者に不利益にサービスを変更してもそれを享受せざるを得ません。またAmazonにはすべての人間の購買動向が把握されるだけでなく、個人属性やその人と関連する人脈や企業との関係もすべて把握されてしまいます。万が一この情報が漏れたとすると、単に与信の観点だけでなく個人の生命や財産にも大きなリスクが生まれかねません。
これに対して日本企業も、単に事態を静観しているわけではありません。伊藤忠商事は、ユニー・ファミリーマートホールディングスを子会社化し、コンビニを使った新たな販売方法を模索するようですし、楽天も通信キャリアビジネスを足がかりに、新たなサービスを展開していく可能性も高いです。しかし既存のスーパーや小売店の動きは決して活発ではなく、新しい情報技術や革新的なしくみによってAmazonの寡占状態を覆そうとする動きは余り見られません。
こう考えてみると、やはりイノベーションということに対する国内企業の取り組みが、決して巧くいっていないと考えざるを得ない状況です。従来のビジネスモデルにしがみつき、新しい取り組みそのものを生み出したり試したりする機運が薄く、動きが取れないのが現実なのでしょう。さらにベンチャーに対する支援も低く、ベンチャーが大企業に成長できるような仕組みも弱いといえるのかもしれません。
イノベーションは、強い意志を持った若者から生まれます。これまでのしがらみや常識に縛られず、自分が面白いと思うもの、素晴らしく便利だと思うものを世の中に創り出そうという意欲が、イノベーションを生みます。日本の若者にもこういった意志が強くあると思うのですが、世界ほどイノベーションが生まれないのはやはり仕組みの問題と思わざるを得ません。若者がたった一人で挑戦するための考え方や手順を学校では教えませんし、実戦の場も企業が提供しません。戦後はそれが可能であったとしても、現在はちょっと素晴らしいアイディアがあると企業が真似てしまいますし、それを支援できる組織や企業も決して多くないのが実情でしょう。
こういった若者を育成する仕組みをつくれば、日本もまだまだ新しいものを生むことが出来ると私は信じています。となると、これからはそういった仕組み作りを、大人が真剣に考える必要があるように思います。それなりにビジネスの経験があるからこそ、若者のアイディアを実現できるようさまざまな支援を行っていかなければならないですし、それが日本でもAmazonに匹敵するサービスを生み出すきっかけになるように思うのです。
もちろん国も、素晴らしいアイディアをもった若者を育成する仕組みを整えていかなければなりません。各省庁が補助金として制約のあるサービスを提供していますが、国を挙げて若者を支援する仕組みや基金を作っていく必要もあるように思います。同時に、Amazonなどの国際的企業が租税回避を出来ないような、法整備を行うべきです。それにより国内の競争が平等になるようにし、公平な競争環境を目指すべきだと私は考えます。Amazonは国内の雇用を生み出していますし、物流業に莫大な仕事量を提供していることは事実です。しかし国内の多くの企業同様さまざまな公的なサービスを受けたり、国内の社会インフラを利用していることも事実です。となると、多の国内企業同様公平に納税をすべきですし、同じ競争条件下でのビジネスを行わせるべきです。
このように新しい仕組みを作ることが、日本版のAmazonを生み出すきっかけになることは間違いありません。Amazonの独走を便利に利用する消費者として眺めるのではなく、公平な競争の中でより便利で新しいビジネスが生まれることを我々は願い続けなければなりません。