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Weekly report

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 May Third week

 早くも五月第三週です。今年ももうすぐ半分終わってしまいますね。本当に光陰ロケットのごとしです。

 さて先週のニュースは、日大のアメリカンフットボール選手の反則で持ちきりでした。 私も40年来のアメリカンフットボールのファンですが、今回の反則はさすがに異例に思えました。

 アメリカンフットボールのルールはシンプルであり、4回の連続した攻撃権を所有するチームがボールを10ヤード前進させると、新たな4回の攻撃権を再取得することができます。前進の方法は味方選手にボールを手渡して走らせるランプレイと、ボールそのものを前方の選手に投げわたすパスプレイがあります。一回のプレイはクォーターバックがボールを所持した瞬間に始まり、守備側の選手がボールを持った攻撃側の選手を倒す、あるいはパスが失敗した場合に終了します。プレイは監督の指示するフォーメンションで行われますが、クオーターバックは決められたフォーメンションを守りつつ最適なパス相手を見つけてボールを投げる、あるいは手渡すことになります。相手が予測外の動きをした場合は、クォーターバックは瞬時の判断でフォーメーション外の動きを行い、ボールを前進させるか攻撃権が相手に渡ることを防いだりします。

 アメリカンフットボールの世界では、このクォータバックというポジションは野球におけるピッチャー兼4番バッターのような存在であり、味方にボールを渡らせることに全神経を集中します。守備側の選手は攻撃を防ぐためクォーターバックを倒しに行きますが、クォーターバックは攻撃だけに集中していますから、自分を守ることができません。そのためアメリカンフットボールでは、パスを受ける選手以外の攻撃側の選手は常にクォーターバックを守ります。

 アメリカンフットボールは肉弾戦であるため、クォーターバックとパスを受ける足の速い選手以外は、大柄で重量のある選手が大半です。格闘家のボブ・サップ選手ももともとアメリカンフットボールの選手でしたが、あのような体型の選手がぶつかり合うのですから、ヘルメットや防具を着けていても大けがが常に発生する可能性があります。したがって怪我の発生を防ぐため厳しくルールが定められており、ヘルメットのフェースガードをつかんだり無防備な選手を攻撃することは常に禁止されていますし、選手の退場や大幅な罰退などのペナルティが科せられます。

 ところが今回の反則は、まさに上記のものであり、プレイ終了後数秒経ったの無防備な状態のクォーターバックに後ろからタックルしていますから、きわめて悪質な反則となりました。反則を行った日大の選手は、日本代表経験のあるきわめて有望な選手のようですから、こういった無謀な反則を行うことは通常考えられません。さらにその後も悪質なタックルを何回かくり返し、結局退場処分となっています。そのため今回の反則には、監督の指示があったと推測されてしまったようです。

 被害者である関西学院大学側は日大に対して強い抗議を行いましたが、日大は十分とはいえない調査報告を発表し、謝罪と監督の辞任で事態を収束させようとしています。関西学院大学側は謝罪内容に納得せず、なぜこのような反則が起きたのかの原因説明を求めていますが、日大がこれに応じるかは不明です。

 この問題の本質は、明らかに監督の関与の度合いです。日大内部からも監督の指示があった旨を複数の選手が証言していますが、当の日大側、ならびに監督も事実をあきらかにせず、単に表面上の責任を取って辞任で済まそうとしています。日大の監督は日大の人事権を持っているようであり、その前では公正な内部調査や処罰は難しそうです。今後世論の高まりと共に処遇は変わるかもしれませんが、現状は誰もが納得のいかない状態が続いています。

 今回のケースを企業に置き換えてみると、本当に難しい問題になります。取締役事業部長の指示で有望な社員が法令違反を行ったと考えてみると解りやすいと思います。成績を残すために指示に従った社員は逮捕され、場合によっては会社を解雇されることになります。取締役事業部長は事業部長の立場を辞するだけで、会社を辞めることはおろか取締役を辞任するもともありません。確かに法令を違反したのは社員の責任ですが、守らざるを得ない命令を遂行しただけで、指示した人間が立場を辞するだけで許されるのか、という問題と同じだからです。

 推定無罪の原則に従えば、取締役事業部長が明確な法令違反をしているかを立証できなければ無罪になります。しかし社会正義から考えると、責められるは取締役事業部長であることは間違いありませんし、法令違反をした社員を切り捨てることは許されません。社内の事情で断罪することなく、公平で公正な第三者組織をつくり、こういった問題を真剣に分析し処遇を決定すべきです。

 今回の件は、我々にも起きることです。だから我々は感情に流されることなく、合理的な改善策を真剣に考える必要があるように私には思えます。