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Weekly report

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 May Fourth week

 5月最後のWeekly Reportです。

 先週はアメリカンフットボールの反則問題で、世間の話題は持ちきりでした。反則を犯した選手の会見により事実の一端は明らかになってきましたし、各種の映像や音声記録などから監督・コーチの指示が明らかになってきたように思います。それでも日大側はひたすら事実隠蔽を行っており、選手一人を悪者にして監督やコーチは逃げ切ろうとしているようです。彼らにとってスポーツマンシップなどという言葉が死語になったのか、フェアプレイという言葉を知らないのか解りませんが、20歳の若者が事実を正直に話しその罪を潔く認め謝罪していることに対し、仕方なく開かれた会見に出席し厚顔無恥な態度で小学生のような言い訳をくり返したあげく、心身疲労を理由に雲隠れする大人の醜さには辟易とさせられます。さらに火に油を注ぐがごとく司会を務めた自称危機管理担当の大人にも、自分たちの都合だけで事を終わらせようとする態度が明確に見られ、ドラマにもない茶番劇を見せられた気分になりました。結局世論の支持する結末しかないように思われますが、しばらくは見苦しい大人のあがきを見ざるを得ないようです。

 さて今週の本題ですが、アマゾンジャパンが正社員1000名の募集を開始しました。機械学習やクラウドコンピューティング等の技術職と、マーケティングや財務などのスタッフ職を増員し、国内で7000名の社員を有する企業になるようです。職種を考えると、アマゾンジャパンが大量採用に踏み切ったのは日本向けサービスの充実のためでしょう。狭い国土と多くの利用者、自由度の低い新ビジネス環境など、日本には特殊事情が多いため、世界共通のサービスではなく日本独特のサービスのあり方を検討する必要があるのでしょう。その上でそのサービスを成立させるためにはシステムが必要となりますから、それらを担当する要員の補充が必要になったのかもしれません。

 しかし反面、アマゾンジャパンは全国の商店街やスーパーから顧客を奪いました。その結果、何千人、何万人もの人が職を失ったのは事実でしょう。逆にアマゾンジャパンによって、流通業はきわめて繁忙になりましたし、多くの人材が職を得たことも同時に事実です。現在は第四次産業革命期ですから、新しい産業が古い産業を駆逐し、古い職はなくなっても新しい職が生まれるのは必定です。しかしアマゾンジャパンの件で解るとおり、これまでの産業革命と違って新しい職を得る人間のほうが古い職を失った人数よりも少ないのが特徴です。つまりこれからは、世界中で職業機会が減っていくということです。

 かつての産業革命期では、古い職を失った人間でも新しい職を得られる可能性は高かったといえます。馬車の御者が自動車の登場で仕事を失っても、自動車免許を取れば運転手としての仕事を得ることが出来ました。畑仕事をしていた農夫や蹄鉄を打っていた鍛冶屋の職人も、工場で工員として仕事を得ることが出来ました。つまり再就職のために高度な知識や技術を付ける必要がなく、簡単に仕事を見つけられたということです。ところが今回のような新しいビジネスでは、高度な能力を有した専門家が必要となります。その技術を習得するために長い期間と資金がかかりますし、経験を得るためには易しい仕事を探す必要があります。それだけの努力を行っても、果たしてその技術力は将来通用するかは解りませんし、現在のテクノロジーの進歩を考えると、意外に早く陳腐化が起きることも容易に想像できます。

 このように今回のアマゾンジャパンの採用は、今後の我々が置かれている仕事の未来を物語っているように思います。機械学習やクラウドコンピューティングが今後どんどん進化すればするほど高い技術力が要求されるようになりますし、そのための技術習得を行える人間だけがその仕事を得ることが出来ます。逆に単純な肉体労働のみならず、AIやロボットに置き換わる可能性のある高度な頭脳労働も新しい技術の進歩と共に失われていくことは不可避であり、新たな仕事を得ることが難しい時代が始まっているのです。

 2020年に向けて経済は活況を示すのでしょうが、その後はどう考えても景気の減退は不可避に思えます。人手を使わずにビジネスやサービスが行える時代がどんどん進化する以上、我々はそ次の時代に向けた準備を真剣に考える必要が出てきたように私には思えるのです。オフショア化が進むIT業界では、景気の減退とともに仕事を大幅に失う可能性があります。今後は高度なレベルのIT技術者だけが仕事を得ることが出来、単に労働力として大規模開発の一部を担当しているIT技術者は仕事を失う可能性がきわめて高まったことに気付き、真剣かつ積極的に新しい技術習得を行わなければならない時代が到来したようです。

 残念ながら私のような老頭児と同世代の人間には、生き残ることが難しい時代が到来したようです。人間の平均寿命が90歳に届こうとしている今、この先15〜20年生きながらえるための職のあり方を、我々こそ真剣に考える必要がでてきました。我々の悪あがきが次の世代のヒントとなるよう、真剣な努力が求められているように感じるこの頃です。