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 August Third week

 カーナビ業界が、転換期に来たようです。

 業界二位で約30%のシェアを握っているパイオニアですが、カーナビゲーション事業の継続に疑義が生じているようです。その他のカーナビゲーションメーカーも成熟した市場の中で生き残りをかけていく必要があり、業界全体がいよいよ大幅な方針転換を迫られているようです。

 もともとカーナビゲーションは出現したのは、今から40年ほど前の1980年代です。日本ではバブルの到来とともに自動車の販売が好調な時期で、さまざまなオプションの一つとして普及していきました。ナビゲーションシステムは衛星の発するGPS信号によってその位置を割り出すものでしたが、マイコンの性能向上とともに経路の予測が可能になりました。当初はCD−ROMに記録された地図情報を元に目的地までのルートを検索し表示していました。

 私は1994年に初代オデッセイを購入したときに当時最新のRISCチップ搭載のナビゲーションシステムを付けました。当時で40万円程した記憶がありますが、地図を見なくても現在地が解る便利さには驚いたものです。当時は道に迷うと、ひたすら地図で現在地を探し、そこからどうやって目的に到達するかを考えたものです。街中ならまだしも、目印のない郊外や山岳地では自分の位置が特定できず、あたりを走り回って大きな建物や学校などの目印を見つけ、苦労して現在地を特定した記憶があります。ところが一端ナビゲーションシステムを利用してみると、現在地がわかることの便利さに驚愕した記憶があります。トンネルなどの電波の届かない所以外はほぼ正確にその位置が特定できますし、その後は地図をたぐれば目的地までのルートが解ります。当時のナビゲーションシステムはどうしても広い道を通ろうとするため遠回りが多かったのですが、地図によって自分で判断し、より的確なルートを見つけて進むことができたのは本当に便利でした。

 やがて時代が進みナビゲーションシステムが普及するにつれ価格は低下していきましたし、地図を保存するメディアもCD-ROMからDVD、やがてはハードディスクになり大容量になっていきました。マイコンとプログラムの性能は飛躍的に進化し、2000年頃からはVICS(Vehicle Information and Communication System)の情報も加味して渋滞や通行止めを配慮したルート検索もしてくれるようになりました。現在では道路状況に応じて刻々とルートを変更してくれますし、不慣れな場所や観光先でレンタカーを借りても、間違いなく目的地に到達できるようになりました。

 しかし皮肉なことに、GPS信号の精度向上とマイコンとプログラムの性能向上と小型化によって、スマートフォンやタブレットにもナビゲーションシステムが利用されるようになります。つまり自動車にナビゲーションシステムがなくても、スマホやタブレットさえ持っていればルートの指示をしてもらえるようになったのです。逆に自走車市場は成熟し、車が売れなくなります。メーカーオプション、ディーラーオプションとも車の販売台数に左右されますし、車が売れなければ専用のナビゲーションシステムは売れなくなります。

 さらに最近では、スマートカーへの対応が要求されます。元々ナビゲーションはルートを示すため大画面化が進んできましたが、それはスマートカーのコンソールとしての機能を果たすようになってきました。車内の空調やオーディオなどの様々な機器のコンソールとして利用されるだけでなく、アラウンドビューモニターのように車の前後左右の映像を表示したりと、高い機能が要求されるようになります。ましてや自動運転となると、そのルートのデータはナビゲーションに頼ることになりますし、一方通行や進入禁止路などより精度の高い情報提供が必須ともなります。となると様々な意味で、ナビゲーションメーカーの開発に対する負担は高まりますし、投資額も膨大になることは間違いありません。さらに進化とともに新しい機能要件の追加や拡張性も要求されますから、投資に対して見返りをえる時期が本当に短くなると思われます。こうしてナビゲーションメーカは台数が出ない市場での高機能化を要求されますから、その利幅を失い苦境に陥っていくようです。

 一昨年私も車を買い換えましたが、メーカーオプションのナビは情報の表示がプアでモニターも小さいため、結局は10インチのiPadでナビゲーションをしています。メーカーオプションのナビはスピードメータ内の小型モニターにもルートが表示されて便利なのですが、肝心の地図情報が非常に見にくいことが欠点です。さらにモニターが小さいため表示範囲が狭く、10インチの大きさを持つiPadには勝てません。iPadは私が仕事で使っているため、先日家内のためにAndroidのタブレットを購入しましたが、8インチのモニターでもやはりカーナビゲーションよりは見やすく利便性が高いと思われました。さらにタブレットはもともとコンピュータですから、スマートカーへの親和性が高いといえます。Bluetoothで車と接続すれば、さまざまなソフトウェアも利用できるでしょうから可能性は無限大といえるかもしれません。

 こうやって考えてみると、カーナビゲーション市場の先行きが難しいことが解ります。現在の車は、燃費向上のために重量の軽量化が必須であり、その意味でカーナビゲーションやカーオーディオの軽量化は必須です。さらにスマートカーを実現する多様なテクノロジに対応するためにも、高度なIT化が避けられません。カーナビゲーション業界が生き延びるためには現在のテクノロジーを一端リセットし、コンピュータをベースとした新しいコントロール機器としてのあり方を追求していくことが最適に思えるのは私だけなのでしょうか。