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Weekly report

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 September Fourth week

 iPhoneの新型が発売されました。

 今回のiPhoneは全機種の機能向上版ですので大きな変更はありませんが、画面の綺麗さやCPUの早さ、カメラ精度の高さなどさまざまな機能が拡充されています。日本における携帯電話の通話料の高さが指摘されている昨今どのぐらいの売上を上げるかは解りませんが、いずれにせよAppleファンはこぞって購入するのでしょう。

 私もスマートフォンの事実上のスタートはiPhoneですし、現在もiPhone Xを利用しているのでAppleファンということになるのかもしれません。しかし今回の値段の高さは異常としかいいようがありませんし、毎度いわれているように顧客離れが今度も起きるように思います。

 今回の最高機種はiPhone XS max 512GBですが、実勢価格で18万円ほどします。この価格は同スペックのMacBook Proとほぼ同じ価格です。いかに性能が上がったとしても、さすがにスマートフォンとしては高すぎる気がします。さらに機能面でもMacBook Proと比べますと、やはりスマートフォンは劣ると思われます。携帯性は高くてもPCとしての機能はノートPCが優れているでしょうし、携帯性の高い機器に高い機能や柔軟性の高いプログラムを搭載してもそれほど利用の機会はないように思われます。画面の綺麗さは必要なのかもしれませんが、それ以外は性能の進化と価格のバランスが崩れてきているように思います。

 若者はSNSの様々なサービスを利用しています。そこで写真や動画をアップロードし、他人からの評価を待ちます。写真や動画は様々なソフトウェアを利用して加工しますし、より見栄えのよい処理をするのでしょう。また友人のアップした写真や動画を楽しんだり、さまざまな動画配信サービスを通して、世界中の動画の閲覧もすると思います。しかしそれらのために20万円近い機器が必要かといえば、そうではないように思います。これまで使ってきた旧式のiPhoneでも十分に機能は高いですし、写真や動画の加工等の作業も充分にできます。

 対抗するAndroid携帯は様々なメーカーから提供されており、値段も様々です。安いものでは1万円ぐらいからありますし、高いものでも10万円程度です。私もAndroidのタブレットを使っていますが、操作性の違いはありますが正直機能が大きく違うとは思えません。処理速度は機器のCPUに依存しますから最新の方が早いに決まっていますし、機種やOSの違いではありません。となりますと、20万円の機器を使う積極的な理由が見当たらなくなります。

 逆に消極的理由を考えてみますと、紛失や破損でしょう。20万円の機器とはいえスマートフォンですから、お店に置き忘れたり移動中になくしたり、ということは充分に考えられますし、落下による破損も気になるはずです。PCを外出先に置き忘れたり移動中に紛失することはまれですし、あまり周りでも聞いたことはありません。ましてや破損は皆無といってもいいでしょう。ところがスマートフォンとなりますとうちの子も何回か破損させていますし、うちの社員が置き忘れや紛失をしたケースも聞いています。セキュリティの問題は別として、実際に破損や紛失が起きうるのがスマートフォンの常のように思えるのです。

 日本のスマートフォン市場においては、昨年の実績でiPhoneが市場の7割程度を占めているといわれています。ところが世界規模で見てみると形勢は逆転し、Androidが市場の7割を占めています。Apple社のある米国ですら、50%の市場しか握っていませんから日本の特殊性は際立っているように思います。しかしこの数年の新機種=価格上昇という流れに徐々にiPhoneに対する意識が変わってきているように思いますし、若者は最新機種よりも価格がはるかに安い旧機種の最新OSバージョン対応版に流れているように思います。

 そういえばこれと同じ事象を、ずいぶん前にも見たことがある気がします。30年ほど前のことですが、高い操作性と高機能、グラフィック分野で高い性能を誇ったPCが、クリエイターを中心にブランドイメージを高めていました。その会社はOSを他社には一切提供する事はなく、独自の市場を作り上げていました。そのPCメーカーは新製品を発表する毎に高機能化と共により洗練されたブランド確立を図りましたが、機能に比例して価格も上昇していきました。

 対抗するOSメーカーは仕様を明確にし、多くのPCメーカーが参入できるように技術を公開していきました。当初は性能的な問題で各国の言語対応をハード的に行わなくてはならなかった制約も解消し、世界レベルで同じ機器がそのOSで利用できるようになりました。そのOSはあっという間に世界に普及し、世界のスタンダードとなっていきました。同時に新興のPCメーカーも次々と参入し、PCの性能競争と価格競争が生まれました。同時にそのOSは毎年のように進化し、操作性や機能を日々高めていきました。

 しかしその隆盛の影で、自社にだけしかOSを公開しなかったPCメーカーはシェアを失っていきました。結局自社だけでは市場を獲得できないことに気づき、創業者を解任しOSの仕様を他企業に公開しましたが、時既に遅しでそのPCメーカーは完全な負け組となっていきました。その企業が復活できたのは、長い低迷の中でカリスマ創業者が復権しハード一本槍の路線からサービス路線に方針を転換したことであり、さらには新しい機能とデザインを持ったPCを安価に提供したことによるものでした。

 しかし時は流れ、そのカリスマ創業者は若くして病に倒れました。そのカリスマ創業者の名を、スティーブ・ジョブズといいます。

 今回のiPhoneの価格を見ていると、走馬燈のようにMacの失敗が頭をよぎるのは、私がその時代に生きていた老頭児だからかもしれません、しかしジョブズのさらなる復権で市場を盛り返すことができない今、iPhoneはどのようになっていくのかが非常に興味深いと思われます。天国のスティーブ・ジョブズは、またもくり返されるかもしれないAppleの失敗の歴史をどう眺めているのか、とても気になるところです。