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Weekly report

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 October Fifth week

 いよいよ10月も最終週になりました。油断をすれば、あっという間に正月が来そうな気配です。

 さて先週北九州の砂防ダムで、二頭のイノシシが閉じ込められる騒ぎがありました。当初は鳥獣保護法に抵触する可能性があるとのことで、砂防ダムの管理者である福岡県と北九州市の担当者は手を出さない方針でいましたが、住民や全国からの通報により救出することになりました。

 閉じ込められたところが砂防ダムですので四壁の傾斜が強く、イノシシの脚力をもってしても登り切ることができませんでした。行政の担当者は壁の上から渡し板をダムの底に架けましたが、警戒したイノシシがそれを使うことはありませんでした。その後渡し板の幅を広げるなどしたものの反応がなく、閉じ込められたイノシシは衰弱していきました。体力弱ったことからカラスなどにもいたずらされるようになり、担当者はイノシシ用の罠を仕掛け捕獲に取り組みました。二頭同時捕獲を目指しましたが、金曜日に二頭同時に罠に入りかけたものの柵をとじている間に一頭は脱走したため、一頭のみを捕獲して引き上げ森に帰しました。残る一頭も翌日自動閉柵される罠で捕らわれ、森に帰されることになりました。

 しかしイノシシは害獣であり、狩猟対象動物でもあります。海潜亭のある熱川も、夜な夜なイノシシは出没していますし、一晩で家一件分ぐらいの面積の地面を掘り返してしまいます。酷いときには樹木を倒すほどの掘り返し方ですから相当に力があります。(地中の50kg程の石も、簡単に掘り出してしまいます。)地元の畑や蜜柑畑もよく狙われており、電気柵等の備えがないとあっというまに農作物をもっていかれてしまいます。今年は天候不順だったせいか、海潜亭の周りでも9月頃からイノシシが出現し、周辺の路肩や民家の庭が相当に掘り返されています。

 さらにイノシシに遭遇してみると、その迫力に圧倒されます。サイズは大型の豚ほどありますし、走る速度もものすごく速いです。近所の友人がハンターをしていますが、その凶暴性と迅速性は相当なようです。身の危険を感じると人間を襲ってくることがありますし、ちょっと足に触れただけでもその牙で足を切り裂かれることがあるそうですし、人間をはね飛ばすぐらい簡単なようですから大けがは免れません。

 イノシシは冬眠をしないため、東日本以西に生息していました。しかし温暖化と都市化による餌の豊富さから東北の太平洋側にも生息域がひろがり、やがては北海道でも生息の可能性があるといわれています。生息域そのものは広がる傾向にあり、これまであまり発見されなかった住宅地にも降りてくることがしばしば報道されています。狩猟対象獣であることからハンターが駆除していますが、ハンター全体の高齢化から狩猟人口は減っており、駆除よりも繁殖のほうが勝ってしまっているのかもしれません。

 こう考えてみると、今回の救出には複雑な思いがあります。野生動物を可愛いと思う人は多いと思いますが、実際は害獣で田畑を荒らしたり人に危害を加えたりしていると思うと、無条件に救出することが望ましいこととは思われません。実際に川に落ちたりして死ぬ野生動物もいるため、自然の淘汰と考えた方が良いように思えます。一昨年は海潜亭も、ハクビシン被害に泣かされました。建物の通風口から入り込んだハクビシンに屋根裏を占拠され、駆除と清掃で新車のファミリーカーなら購入できるほどの金額がかかりました。ハクビシンも農作物を荒らしますし、住宅の屋根裏に巣を作って糞とカビの巣窟にしてしまいます。外観が可愛くても、住民にとっては様々な被害をもたらす害獣に過ぎません。

 海潜亭の周りで一番見かける動物は、タイワンリスです。樹木を駆け上がったり電線の上を走ったりと、結構普通に見かけることができる風景です。観光等で訪れた人にとって、可愛い野生のリスに出会えることは嬉しいことでしょうし、豊かな自然の象徴のようにも思えます。しかしタイワンリスは地元の特産物である蜜柑を狙ったり、野鳥の卵やヒナを捕食する特定外来種の害獣です。東伊豆町では狩猟免許を持った人間がタイワンリスを捕獲した場合400円の報奨金を支払っていますが、農業被害を防止するためには仕方のないことのように思います。(今、鹿が鳴きました。)

 このように自然動物が付近にいない人間と付近にいる人間では、動物に対する気持ちが異なります。今回のイノシシについても、付近の住民よりもメディアで見た多くの人間が救出を要求しています。そこに悪意はなくても、感情だけで問題を解決しようとする考え方は危険に思えます。大切なことは、問題の当事者に問題解決の権利があり、当事者ではない外野の人間が感情にまかせた要求をすることは望ましくないということです。ネットの普及と共に善意の第三者を標榜する無責任な人間が増えていますが、その声に流されることなく正しい問題解決が必要と思うのは私だけなのでしょうか。