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Weekly report

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 November Second week

 11月も三週目に入りました。いよいよ年末に向けてラストスパート、今月来月は出張月間ですので、ちょっと体力的に心配ですが。

 さて先日パーソル総研が、リカレント教育に関する調査結果を発表しました。リカレント教育とは生涯教育ともいわれ、義務教育や基礎教育を終了後も職業人として必要となるさまざまな知識を習得出来る教育を意味するようです。元々はスウェーデンの経済会社であるゴスタ・レーンが提唱し、OECDの教育政策会議で研究されてきました。世界では職業人になってから通学できる専門職大学が多く開設されており、専門性の向上や転職の際の実務知識習得に役だっています。

 日本でも2017年の「第3回 人生100年時代構想会議」において安倍総理は、リカレント教育の拡充と財源の投入を宣言しており、リカレント関連法規の改正が見込まれています。3月には文部科学省がリカレント教育の抜本的拡充に向けてという文書を公開し、今後リカレント教育を拡充していくことを明確にしています。

 このように人間の寿命が延びることによって、世界的に働ける期間も伸びています。日本でも、かつて55歳であった定年制度もどんどん延長され、役職は解かれても年金が受給される65歳までは継続的に勤められる企業も増えています。今後の労働人口減を考えると、海外労働者の採用と女性の社会進出だけでなく、シニア世代の雇用は各分野で必要になるでしょう。

 しかしながらその障壁となるのが、実務能力です。日本の企業文化では、年齢と共に管理要素が高まり実務から遠ざかる可能性が高まります。40代後半から役職定年の60歳まで管理職として勤めると、なんと15年以上の実務経験がブランクになってしまいます。60歳になって現場に戻されても、年下の上司にとっては扱いにくい先輩社員であるだけでなく、ビジネスに関する実務能力に欠ける社員となってしまいます。となると、うるさいだけで使えない社員としての烙印を押されてしまいます。

 もちろんここまで極端ではないとしても、これだけビジネス環境の変化が激しいと、過去の知識や経験だけではビジネスを行うことは難しくなります。ITがそうであるように、日々ビジネスに関する技術も知識も更新され続けないと、変化の中で成績を残すことが年々難しくなっているように感じます。

 ところが冒頭の調査結果では、なんと47,5%のビジネスパーソンが、学びに対して何もしていないと解答しているのです。学びのために行っていることで一番多かったのは読書で21,3%、資格取得学習が15,6%であり、通信教育や専門学校、大学等に通った人間は最大で8%程度でした。さらに年齢が高まるほど学習意欲が減退するようで、50代では50%以上のビジネスパーソンが「何も行っていない」に回答しています。

 ベテランになるほど仕事が忙しく学習に割ける時間は少ない、週末は疲れているし、家庭サービスで学習など行っている暇はない、という現代のサラリーマン事情は理解出来ないわけではありません。女性であれば家事や育児の負担も大きいでしょうし、介護等に時間を取られている方も少なくないとは思います。学習のためにはコストがかかりますが、ヘリゆく小遣いのなかでそんな余裕などあるわけない、という気持ちも理解出来ない訳ではありません。しかしそれを理由に学習しないとすると、結局この先の社会のお荷物になるだけでなく、定年後に働く意欲があっても働く場所がない、といった結果を受け入れざるを得ないことに気づかなければなりません。働きたい気持ちはあっても、そのために必要となる知識もスキルもないと、結局は社会のお荷物になってしまうだけでなく、焦る気持ちをぶつける対象もなくなってしまいます。

 こう考えてみると、いよいよ企業内での高年齢者に対する教育を強化せざるを得ない、というのが事実のように思えますし、学校等を整備して学習機会を拡大する必要があるのでしょう。さらに企業は退職金の割り増しを行うよりも、こういった学校に通える勤務時間体系と授業料支援を行っていくべきと私は考えます。シニア世代のビジネスパーソンは相対的能力や体力が落ちても、多くの人脈を保有している人もいますし、忘れ去られゆく古き良き文化や伝統を理解している人もいます。そういった人材を年齢を理由に単純にリリースしてしまうのは、企業として長期的な観点からの損失に繋がります。となれば、意欲あるシニア世代のビジネスパーソンにもう一度新しい知識や技術を学ばせ、それをもとに年齢にあった方法で新しいチャレンジを求めた方が企業にとってのメリットは大きいように思います。

 逆に年齢を理由にせずチャレンジを行いたい、と思っているシニア世代のビジネスパーソンも少なからずいます。しかしチャレンジに必要な知識や技術が十分ではない、あるいは学習する時間が確保できないという悩みも同時に抱えています。今学べばまだまだ今後の展開に可能性があっても、定年を待つと遅いということもあるでしょう。となると、ますます企業がこういった人材の後押しをし、積極的な活躍を期待することが望ましいように思います。

 もちろんシニア世代のビジネスパーソンに投資をしても、それ以上の見返りをもたらす人材は少ないのかもしれません。しかし多くの企業がこの取り組みを行えば、他企業でそういった学習を行った自社に最適な人材を確保できる可能性も生まれますし、自社でチャンスのなかったビジネスパーソンでも、他社で成功する可能性も高まると思います。つまり日本のビジネス環境そのものが大きく代わり、これまで以上にシニア世代のビジネスパーソンが価値創造を行える可能性も生じるのではないかという期待が生まれるのです。

 このようにリカレント教育が社会全体にもたらす価値は、きわめて大きいように思います。しかしその前提となる多くの社員に学習意欲が低いことを考えると、このような制度をつくっても成果は出ないのかもしれません。若者はもちろんのこと、すべてのビジネスパーソンの学習意欲が高まる施策を考えなければなりませんし、私も微力ながら、ビジネスパーソンの学習意欲を高める様々な方法を考えていこうと決意しています。