Onomura System Consulting Office       

osco top


Weekly report

next

back

 

 

 

 

osco top

 November Fourth week

 日産に大激震です。

 日産の元CEOでルノー・日産・三菱アライアンスのCEOであるカルロス・ゴーン氏が19日、東京地検特捜部に有価証券報告書の虚偽記載による金融商品取締役法違反の容疑で逮捕されました。 具体的には、過去5年の報酬について実際の額の半分程度しか記載を行わなかったという容疑です。その後の報道では、日産からの内部告発により東京地検特捜部はカルロス・ゴーン氏による不正行為を長期間捜査していたことが解り、次々と不正の事実が判明しているようです。この事件は日本のみならずルノーの本国であるフランスでも大きな問題となり、今後の行方について様々な憶測が流れているようです。 ゴーン氏ならびに側近であり日産の元社長のグレッグ・ケリー氏ともに容疑を否認しているようですが、これからの捜査の行方は非常に興味深いところです。

 コストカッター の異名を取ったゴーン氏ですが、バブル崩壊後の影響で経営的に様々な観点で痛んでいた日産を、ルノーの資本と大胆な再編とリストラにより立て直すことに成功しました。さまざまなパーツの共用化や開発テクノロジーの一本化により、日産の業績は徐々に立ち直り、近年では売れる車種の開発をスムーズに行えるようになったように思います。実際ジュークやノートなど魅力的な車種の販売で、トヨタと競っていた頃には及びませんが日産そのもののブランド価値は上がっているように思います。

 しかし復活した日産に対しルノーの業績はさんざんであり、ルノー自身の利益の半分は日産との連結決算によるもののようです。2017年の両社の業績は以下のようになっているようです。

  販売台数  日産 : 582万台    ルノー : 376万台
  売上高    日産 : 11.8兆円   ルノー : 7.8兆円
  営業利益  日産 : 6,850億円  ルノー : 5,087億円

 これを見る限り、現在は明らかに日産が優良企業であり、ルノーとしては虎の子である日産に対する影響力を高めようとするのは当然のように思います。コンサルタントの大前研一氏は6月1日の記事で、フランス大統領が自動車産業でのポジションを高めるために日産と三菱を子会社化を予測しています。当然日産の日本側経営陣もこの動きを読んでいたため今回の内部告発に繋がったのでしょう。

 その後の報道で、ゴーン氏が日産に対し私的なさまざまな費用を負担させていたとされています。自らの報酬はもちろんのこと、複数の家族の住宅や世界中にある自身の住宅、ヨットクラブの会費、果てには離婚費用まで日産が支払ったとされています。事実か否かはこれからの操作で明らかになるでしょうが、これほどの数が出る以上少なくとも一つ以上の不正はあったと考えざるを得ません。それらを実質的に隠蔽してきたのが法律家であり社長であるグレッグ・ケリー氏とされていますので、法律知識を駆使して不正の隠蔽を図り、自らも蓄財してきたと思われます。いずれにせよ容疑が確定するまでには時間がかかるでしょうから、東京地検の地道な捜査による立証を見守りたいと思います。

 私自身今回疑問に思ったのは、監査法人である新日本有限責任監査法人のあり方です。先週後半になってやっと監査法人は疑義を表明したが日産側に押し切られた、という報道がなされましたが、その監査に実効性があったのかという疑問は晴れません。私的流用のような会計上の不正を見抜くのが監査法人の役割であり、これほど大きな額を見逃してきたというのは非常に疑問を感じますし、なぜこのような状況を放置したのかという新日本有限責任監査法人側の説明も聞きたいとは思います。

 かつて山一証券、ヤオハン、足利銀行の粉飾決算を見逃し、同様の粉飾決算を起こしたカネボウについても不正を見抜けなかった中央青山監査法人は金融庁から監査業務停止処分2ヶ月の処分を下されました。これは監査の空白期間を生むことになり、上場企業は上場要件を満たせなくなることから大混乱が生じました。結果として中央青山監査法人のクライアントは他の監査法人に頼らざるを得なくなり、事実上中央青山監査法人は存続が難しくなりました。残ったメンバーはみすず監査法人を新規に設立したものの、その後日興コーディアル証券の虚偽記載を見抜くことができず解散に追い込まれました。 

 過去にも新日本有限責任監査法人は、オリンパスの巨額不正問題、東芝の粉飾決算等の問題を見逃してきた過去があることから、今回の結果によっては金融庁から、中央青山監査法人同様の処分が下される可能性は高いと思います。

 今回の件は、カルロス・ゴーン氏の私的な問題としてクローズするのか、日産とルノーとの争いに繋がるのか、はたまた日本とフランスの政治的問題にまで発展するかは誰にもわかりません。しかしゴーン氏の改革によって直接的、間接的に会社や工場、店をつぶされたり職を失った人間は非常に沢山います。今回の件では、それらの人々の気持ちになってゴーン氏に適正な処分が課されることを心から願いますし、日産自動車が正しい経営の道のりを歩きはじめることも心から祈りたいと思います。