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Weekly report

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 February Second week

 DeNAとメットライフ生命が、健康増進型保険を共同開発することが発表されました。健康増進に関するITを利用したサービスをDeNAが開発し、メットライフ生命がそれをベースとした健康増進型保険を発売するようです。一方損害保険会社もドライブレコーダーとの連携をはかった自動車保険を発売しており、契約したドライブレコーダーによって事故の自動通報や事故状況の記録などを自動的に行い、保険の査定業務を適正かつ効率的にできるようになっているようです。

 このようにこれまではITを前提としていないビジネスでも、今後はITを利用した新しい商品やサービスとして生まれ変わる可能性があります。各企業にとっては最新のITをベースにどのように新しい商品やサービスを考え出すかが勝負になっていきますし、それを1日も早く構築しサービスとして提供できるかが競争のポイントとなっていきそうです。

 こういった新しい商品やサービスを生み出すことが、イノベーションという行為です。しかし実際のビジネス環境においてイノベーションを発想できる個人は決して多くありませんし、企業内にそう言った人材がいることはより稀なことといえます。これまでの企業内のシステム部門は、基幹系といわれる情報システムの機能追加や保守運用業務が定常業務でした。新規システムといってもこれまでのシステムのリプレースが多く、純粋に新しい機能やサービスを検討した経験はほとんどないといってもいいでしょう。となると、ITを前提としないビジネスをITベースに仕立て直すとしても、どのようなテクノロジーをベースにどのような仕組みを作るかを発送できる社員はほぼいないと思われます。

 そのためそのため現在のトレンドとしては、多くの企業がIoTやAIなどの高度先進IT分野のエンジニアを大量採用しています。社内で検討したイノベーションのヒントを元に、それらの要員を使ってトライアンドエラーで新しい仕組みを構築し、サービスとして社会へ提供を始めているのです。今回の保険会社の動きはまさにこれに沿ったものでしょうし、内製で行う、あるいはその分野を得意とするIT企業と協業しそれらを実現しようとしているのでしょう。

 こういった動きの中で、やはりこれまで力を持ってきたSIerがそのポジションを失おうとしているのが、私には気がかりです。顧客の明確なニーズを具現化することを得意としてきたSIerは、顧客と協業して新しい仕組みを創り出すのは決して得意とはいえませんし、それを実際に行えるエンジニアも多くはありません。しかしビジネスの流れはイノベーション中心に向かっていくことは間違いありませんし、その流れに乗れないSIerは市場から駆逐されてしまうと思われます。

 とはいいながらも、顧客側がイノベーションのヒントを出し続けることができるのかについいても、正直私は疑問を持っています。今の企業の組織体制を考えると、新しいアイディアは既存の組織やビジネスを侵害する可能性がありますし、それらの反発を抑える強い統率力を企業のトップが持っていない事が多いように思うからです。さらに最新で高度なITに関する知識を持った社員も多くないでしょうから、アイディアそのものが枯渇することも十分考えられるからです。

 となると、日本の大手企業がイノベーションを実現していくためには、まだまだ多くの障壁が待ち構えていることを覚悟しなければなりません。これまで利益を生んできた自社のビジネスを解体し、何十年も掛けて築いてきた仕組みをすてることは、多くの企業にとって簡単なことではありません。それでもその覚悟を持って新しい取り組みを行わない限り、それを実現した企業には勝てなくなってしまうことを理解する必要があります。さらにITを積極的に活用するためには、IoTやAIといった各論の技術を理解したエンジニアが必要になるだけでなく、実現しようとするビジネスとその価値の源泉を理解したこれまでとは違うエンジニアが必要になることも理解しなければなりません。

 こういった能力と指向性を持ったITエンジニアは、日本のビジネスの世界にはほとんどいないと思われます。だからこそ、そういった人材を一人でも多く育てていく努力を、我々は始めなければなりません。