二月も半ばになりました。いよいよ日々が加速し始めているようです。
先週は、バレンタインデーでした。この歳になるとときめくものはありませんし、私のように常時オフィスにいない人間にとってチョコレートをもらう機会もありませんので、遠目に売り場を眺める年間行事になっています。とはいえ先日コンビニエンスストアで見かけた風景に、少し驚かされました。
かつてバレンタインデーといえば、手作りチョコが定番のように思いました。しかしいつの日か義理チョコなどの普及により、百貨店や名店街などで廉価なプレゼント用チョコレートも販売されるようになりました。バレンタインデーが近づくにつれ、百貨店などの催事場もチョコレート専門の売り場に模様替えされ、世界中のブランドが様々な種類のチョコレートを販売するようになります。百貨店としてはまさにかき入れ時なのかもしれませんが、数千円のチョコレートが飛ぶように売れるという姿は、日本の豊かさと特殊性を感じてしまいます。
でコンビニなのですが、先日仕事先でお茶を買いに行った際に、コンビニの特設コーナーにGODIVAやホテルオークラなどの有名チョコが売っていたことに気付き非常に驚きました。
バレンタインですからナショナルブランドのお菓子や自社開発製品が並んでいることは想像できました
が、まさか百貨店で売っているような高級チョコがコンビニで売られているとはさすがに想像できませんでした。
ご存じの通りコンビニは、起業や独立したオーナーがフランチャイジーになり店舗を展開しています。フランチャイズオーナーはフランチャイズから商品を仕入れ、決められた価格で販売します。節分やクリスマスがそうですが、季節のイベント向けの商品もフランチャイズから提示されるのでしょうが、こういった商品はその期日を越えると不良在庫になってしまいます。最近有名になったのはクリスマスのケーキであり、クリスマス当日までに売り切れないと昼頃から廉売が始まります。それでも過剰の在庫が残ると、アルバイトが無理矢理買わされたり最悪廃棄処分になります。ケーキや節分の恵方巻きなどは賞味期限が短いですから、特別な売上が見込める反面フランチャイジー側の負担も低くはありません。
こう考えてみると、今回の高級チョコレートもフランチャイズオーナーにとっては不良在庫になりやすい非常に危険な商品と思えるのですが、それでも店頭にこういった商品がならぶことに驚かされました。本命チョコをコンビニで購入することは考えにくいのですが、ちょっとお世話になった上司等への義理チョコを買い忘れた場合には確かに便利なのかもしれません。もちろんバレンタインに関係なくチョコレートが好きな方にとっては、気軽に高級チョコレートを購入できることは便利でしょうし、売れ残って廉価販売をしてくれるのも嬉しいことでしょう。
しかしやはりこういった商品は、フランチャイズオーナーにとって危険という点は変わらないと思われますから、フランチャイズであるコンビニエンスストア本部の商品戦略が変わりつつあるように思います。コンビニが普及を始めた1980年代は、深夜まで商品が購入できる店舗として各地に出店されました。当初はスーパーと同じような商品を定価で販売する、というのがコンビニの特徴でしたが、その普及と大手競争の中でさまざまな商品やサービスが扱われるようになりました。80年代末には、500mlサイズの飲料の販売が始まり、コンビニの急速な展開を助けました。それまでは缶飲料が基本でしたが、エビアンの攻勢で日本でも500mlサイズの飲み物の自主規制がなくなり、各社がさまざまな商品を販売しました。
その後コンビニは公共料金の取り扱いを始めたり、宅配便の受付をしたりとさまざまなサービスを拡充させ、2000年前後からは各種銀行のATMも設置するようになりました。さまざまなチケット販売もこの頃から可能になりましたし、街中で必ず必要な店舗としての地位を築いてきました。バブル崩壊後多くの商店街がシャッター化する中でも店舗数は拡大し続け、現在では駅前の商店街が提供してきたすべての商品やサービスを子にビニ扱っているといっても過言ではありません。しかし過剰な出店と激烈な競争によって、弱小のコンビニエンスストアチェーンは生き残ることが難しくなり、近年は大手商社などに買収されたり、中小の合併によってブランドの統合が続いています。
さらにこの数年は、コンビニとスーパーマーケットを合体したようなドラッグストアが攻勢を強めています。最近のコンビニもそうですが、大型の駐車場があるかないかが売上に直結しています。最近のドラッグストアは大規模な駐車場があるだけでなく、スーパーのような生鮮食品も扱っていますし、コンビニ以上にさまざまな品揃えで顧客を呼び込みます。コンビニとの最大の違いは医薬品の取り扱いを行っていますので、コンビニ以上の強みを持っています。
このようにコンビニは商店街との競争では勝ち続けましたが、ドラッグストアのような新たな競争相手が次々街中にできます。だからこそコンビニはその競争力を高めるために各地の名店とのコラボ商品やビールメーカーとのコラボでコンビニ専用商品を開発したり、今回のような高単価の商品を店頭に並べるようになるのでしょう。しかしそれは同時にフランチャイズオーナーにとって負担を高める結果となり、コンビニエンスストア本部としては非常に頭の痛い問題になります。
時代の変化は、当然コンビニにも押し寄せています。変わりゆく顧客のニーズをとらえ続け適切な商品開発を続けなければ、競合に負けてしまうのは当然です。といいながらもそれは同時に、コンビニを営むフランチャイズオーナーも苦しめる結果に繋がるのであれば、やはり考えなければいけないテーマと思います。これだけ大胆な行動が取れなかった食品スーパーはその勢力を失いつつある現在、これからの小売業のあり方を考え、多くの人にとってメリットのある社会を生み出す素晴らしいアイディアが、今まさにここでも求められています。