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Weekly report

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 February Fourth week

  いよいよ予言が当たりつつあります。今週の週刊ダイヤモンドは、嫌な特集が組まれていました。タイトルは「IT人材の採り方・育て方」となっていますが、内容が非常に強烈でした。

 この数年、私自身講座内で、「10年以内に現在のSIerの数が1/3になる」と喧伝しています。理由は単純で、IT業界の産業構造である「下請型御用聞産業」では現在の変化する市場環境に適合せず顧客のニーズに合わなくなっている、ということです。

 そもそもは非常に専門性の高い情報技術を使いこなすことは一般企業では難しいことから、IT業界が始まっています。実際日本企業の情報化はSIer抜きには語れないでしょうし、業務の効率化から始まった情報化をになってきたのはIT業界でした。やがて時代が変わって情報システムがオープン化しても、そこで使われる技術を駆使できるのはやはりSIerでしたし、データの重要性が増す中で活用の仕組みを作り続けたのIT業界でした。

 しかしその中身をよく考えてみると、手作業を機械化する、あるいは明確なニーズをITとして実現するのがIT業界やSIerの使命だったことがわかります。つまり我々は明確なニーズをベースにシステムをデザインし、構築・運用の仕組みを提供していただけであり、ニーズがないところで付加価値の高いアイディアを生むことはやってこなかった、というのがIT業界の真実です。そのことに一番最初に気づいたのがバブル崩壊時であり、そこから私は[提案」の重要性を連呼し、それが今後のIT業界にとって最も重要であると喧伝し続けてきました。つまり「下請型御用聞産業」を脱し、[提案型産業」に変わることが急務と考えてきたのです。

 しかしこの数年、肝心の提案すら要求しない顧客の状況に気づきます。顧客のビジネス環境が激変し、明確なニーズがなくなるだけでなく、長期間で大きな投資に危惧が生まれます。またこれまでにないビジネスを生み出し価値を創造するためには、新しいテクノロジの活用が必須になります。逆に今後どのような新しいテクノロジが生まれ、それをどう使っていけばいいかというアイディアを強く望むようになりますし、それにチャレンジしない限りビジネス環境で生き残ることは難しくなっていることに多くの企業が気づき始めます。

 そのアイディアをSIerに求めても、もともとそういった指向性はありませんし能力のあるエンジニアもほとんどいません。肝心のコンサルティングファームもミニSIer化してしまった現在、その機能を提供出来る企業は日本にはほとんど存在しません。となると、実業を営む多くの企業は自らITエンジニアを採用し、彼らを活用してこういった新しい情報技術を駆使した仕組みを自ら創出するようになるだろう、というのが私の考えでした。事実ファーストリテイリングや損保HDはITエンジニアの積極採用をしていますし、この流れは今後益々強まることが予想されます。

 となると、IT産業やSIerが生き残るためには、顧客のビジネスを劇的に変える付加価値の高いアイディアを提供するようにポジションを変革させる必要が生じます。ところが肝心のIT業界はSIerは不況前の下請需要が続く現在に満足し、その対応を怠ってきたというのが私の考えであり、このままでは1/3のIT企業が倒産等で消滅、1/3のIT企業が日本の電機メーカのように外資の出資のもと複数企業の吸収・合併でかろうじて生き残るであろう、と講座で伝えるようにしてきました。つまり純粋に生き残れるのは1/3であり、そのためには付加価値の高いアイディアを創出でき、それを雑談として顧客に伝えられるようになるのがこれからのエンジニアの最低条件であると言い続けてきたのです。

 今週の週刊ダイヤモンドは、この考えを裏打ちする事実が満載でした。それどころか、私の予想以上にIT業界の状況が悪化していることも痛感させられました。私の危惧どおりであったのは、一般の事業会社がITエンジニアの積極獲得に乗り出している点でした。ローソンやダイキン工業など大手企業がこぞってエンジニア獲得に乗り出しているようですし、新興のITベースの事業会社であるサイバーエージェントやDeNA、GREEやメルカリも先端エンジニアの積極採用に乗り出しているようです。

 しかし私の予想以上に深刻だったのは、現在のSIerに属する要員でそういった事業会社に転職できる可能性は3%程度と断言されてしまったことです。受託型のビジネスの中で切り分けられた小さい範囲を予定品質で構築する力が長けてしまい、最新のテクノロジーを利用して自分自身でデザインをする、形のないものを描く、新しいアイディアを試すような作業はまったく要求されてこなかったのが今日のITエンジニアです。現在要求されているITエンジニアには、IoTやAIのような最先端技術の最新知識が要求されていますし、同時に形のないものを想像し、ビジネスの観点で具体化する能力が必要です。そういった総合力を高める環境がSIer内には事実上無いため、このままでは3%以下のエンジニアしか可能性はないことになります。

 この問題を解決するためには、やはり私は辻説法を続けるしかないようです。会社がどうあろうと最後は個人の力がすべてですし、力を上げるための努力をしようとするエンジニア以外はいずれにせよ生き残れないからです。大事なことはこの危機的状況を一人でも多くのエンジニアに認識してもらうことですし、そこでなにを目指しなにを学ぶかに気づいてもらうことだと私は考えています。

  あと一ヶ月後から、いよいよ2019年度の新人研修が始まります。彼らが30歳を向かえるときに、SIerは生き残っているかがとても不安です。と同時に彼らに対して、この危機をどのように伝えていけばいいのか、私には重たい宿題が待っています。