早くも3月に入りました。日々が加速していることを痛感しますし、油断をすると本当にすぐに正月が来そうな勢いです。
さて先週後半はお休みを頂いて、海潜亭に滞在しておりました。2月末は河津桜の最盛期ですので、暇を見つけて河津桜見物にいってきました。河津桜は早咲きの桜であり、咲き誇る花の寿命の長さが特徴です。例年2月10日頃から開花が始まり、3月半ばまでどうにか花は持ちます。その年の状況にもよりますが、だいたい2月下旬が満開であり、河津桜のピンクとこの時期に咲く菜の花の黄色のコントラストが非常に綺麗です。
河津町には河津七滝などの観光名所がありますが、やはり一年で一番活性化するのは河津桜の時期であり、前項から見物客が押し寄せます。河津桜は河津川の両岸に植えられていますので、川沿いの道をたどって花見をすることになります。河川法によって新規に護岸に樹木を植えられないので少しずつ間隔が広がった場所もありますが、全体としては3kmほどの桜並木が続きますのでとても素晴らしい景観となります。
訪れたのがウィークデーの早朝だったため観光客は少なかったのですが、それでも日本人以外の各国の観光客を多く見かけました。日本人は基本的に高齢者が中心ですが、海外の観光客は若者から年寄りまで幅広い年代が見物に訪れていたようです。
今年感じたことは、お店と仮設トイレの少なさでした。毎年は沿道に沿って多くの土産物屋が出店しているのですが、今年は例年より2割ほど店の数が少ないように思われました。時間が早かったのもありますが、それでも確実にお店の数は減ったように思われますし、扱っている商品のバラエティも減ったように思われました。
しかし一番驚いたのは、沿道沿いのトイレが少なくなったことです。沿道沿いには二カ所公園があり、そこに常設でトイレがあります。例年はこの公園に仮設トイレが設置されていたのですが、今年は場所が変わったのかなくなってしまい、公園のトイレに行列ができていました。沿道から少し離れた駐車場の一角には仮設トイレが設置されていましたが、沿道からは少し離れわかりにくい所にあるともいえます。基本川沿いを歩くため、トイレが近くにないということはやはり問題に感じられました。
こうやって考えてみると、やはり河津桜祭りだけでは地元に十分なお金が落ちていない可能性を感じてしまいます。河津桜祭りは2月10日〜3月10日の一ヶ月間開催されますが、入場料はありません。車の場合は700円の駐車料金がかかりますが、収容台数もおそらく1000台ほどですから売上も限られています。土産物屋で使うお金も数千円でしょうし、近隣にそれほど飲食店や土産物屋もありませんから、地元に落ちる金額は限られています。河津温泉を有する宿も20軒ほどありますが、河津桜だけを1日見学する方も少ないと思われるので、近隣の温泉に観光客が散ってしまいます。となると、河津界隈の地元の商店や飲食店、旅館に落ちるお金は限られているように思うのです。
反面各種スタッフはボランティアとしても、駐車場収入やお土産屋の収入の一部からチラシをつくったり仮設トイレを設置したりする必要がありますから、多額のコストがかかることになります。となると、やはり地元でさまざまな消費を行う受け皿がないことが、河津桜祭りが徐々に衰退する原因となると思われるのです。
このようにコンテンツが充分にあっても、それをもとに収益を確保する仕組みが不十分であれば、その催しを続けることは困難になります。隣の片瀬白田でも、炎艶火という手筒で打ち上げる花火祭りがこの数年中止になっていますから、これも同様の事象のように思えます。地方都市が衰退するのはコンテンツの不足ではなく、それを収益に結びつけるシステムそのものがないことが、やはり大きな問題のように思われます。
東京一極集中の愚は、これ以上説明する必要はありません。しかしその流れを少しでも変えない限り、移住すべき地方都市そのものが限界を迎え、生活することすら不可能になることを我々は考えなければなりません。河津桜を眺めながら、もう一度地方が活性化する方法を少しずつ考える必要があることを痛感させられてしまいました。