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Weekly report

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 March Fourth week

 野球界のレジェンドが、とうとう引退しました。そう、マリナーズのイチロー選手が日米通算27年の現役生活を終えて、現役選手を引退したのです。

 数々の世界記録を作ったイチロー選手の活躍は、いうまでもありません。天才がその才能を開花させ、様々な記録を塗り替えていく姿は驚嘆に値しますし、米国に渡ってからの活躍も、投手以外はメジャーリーグでは通用しないといわれていた通説を見事に吹き飛ばし屈指のメジャーリーガとしての足跡をその歴史に刻みこみました。

 イチロー選手の考え方はさまざまな本になっていますが、そのプロフェッショナルとしての姿にはずいぶん学ばされることが多かったように思います。外観や発言からはきわめてストイックな姿を見せるイチロー選手ですが、本人としてはまったく違った人間と考えているようであり、きわめて楽観的であること、自分が楽しいと思えることをただ繰り返し少しずつ力をあげていくことなど、その姿勢とは裏腹に楽しんで日々のトレーニングや試合を過ごしていることがよくわかります。

 また書籍同様、引退会見での発言も非常に興味深いものが多かったように思います。私が印象に残ったのは、

 「人より頑張ることなんてとてもできない」
 「楽なことを重ねている」
 「自分なりの測りを使いながら、自分の限界を見ながらちょっと超えていくということを繰り返していく」
 「少しずつの積み重ねが、それでしか自分を超えていけない」
 「地道に進むしかない。進むだけではなく、後退もしながら、あるときは後退しかしない時期もあるが、自分がやると決めたことを信じてやっていく。」

 などの言葉でした。人より頑張れない、というよりも、自分の尺度を使いながら少しずつそれを越えていくことをくり返す、というのは本当に素晴らしいと思います。私自身も毎回ちょっとずつ工夫をしながら講座を行っていますが、上手くなったという実感はありません。それでも努力を重ねれば、去年より今年は少しだけ上手になれるのでは、と思って日々研鑽を続けていますので、こういったプロフェッショナルの言葉には勇気づけられます。

 また面白かったのは、

 「2019年現在の野球は、訪米当初の2001年の野球とはまったく違うものになった。頭を使わなくてもできてしまう野球になりつつある。」

 という言葉です。確かに引退当日の試合を見ていても、右方向に打つのが得意な選手には三塁手が二塁手の守備位置につき、遊撃手と二塁手が一二塁の間に入り、二塁三塁間には誰も選手がいないといった極端な守備が敷かれていることは本当に驚きました。「マネーボール」という映画でも描かれていましたが、現在の米国の野球ではものすごく広く深いレベルのでデータ分析が行われており、統計学的観点から選手起用や試合中の作戦が立てられ、効率のよい試合が行われているようです。その反面選手そのものの考えやひらめきがすくなくなり、一人一人の個人技は素晴らしくても全体的にはシステマチックで面白くない試合になってしまうことが増えているようです。その状況に置ける個々人の臨機応変さと個人能力の高さ、そしてその最高の選手同士の連携がチームプレーの面白さのはずなのですが、勝つことが優先されそれがビジネスとなると、勝率の高い効率的な野球が優先され、結局野球の魅力が失われていくように思われます。

 これは現在のビジネス状況を痛烈に批判した考えともいえますし、このメソドロジがGAFAなどにも共通していることがわかります。もちろん日本のチェーンビジネスもまったく一緒であり、それが働く人間無視の風潮を生み出しているのかもしれません。このようにイチロー選手の発言は、世界最高のプロフェッショナルからの我々が取り組んでいるビジネスそのものに対する警鐘ととらえることができるのです。

 そしてそのいさぎ悪い選手としての晩年は、プロフェッショナルとして学ばされることも多かったように思います。思うようにヒットは出なくとも、45歳という年齢を感じさせない一流の肩を維持されていましたし、その脚力も未だに衰えるところがなかったように思います。守備固めや代走としての起用であれば、まだまだメジャー選手として通用することは驚嘆に値しますし、引退を間近にしてもそれを維持したイチロー選手の努力には本当に感心させられます。ただし野手として打撃の成績が出せないということが引退の理由になる、というのは私自身の引退時期を考える大きな試金石を示された感じがします。

 超人的な記録を出し続けたからこそ、まだまだ実力がある内に綺麗に引退するのではなく、あくまでも現役にこだわって、いさぎ悪くとも決して諦めることなく努力を重ねたイチロー選手から、我々が学ぶことは非常に沢山あります。じっとしていられないから、引退後も現役と同じように体を動かし続ける、という姿勢でいられるよう、私自身も引退後も死ぬまで努力をし続ける必要があるようです。