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 May Fourth week =Reiwa=

 早くも5月最後のWeekly Reportです。今週は大きな出来事が少なかったため、このページもネタ切れですが、とりあえず少しだけ。

 さて米国と中国の関係が悪化し、ファーウェイ製品への締め付けが強化されています。事の起こりはオーストラリアの通信電子局の調査であり、5G通信網に不正なアクセスを行った場合にどのような被害生じるかを発表したことです。結果は予想より深刻であり、5Gのポテンシャルの高さがあらゆる情報の漏洩や重要施設への妨害や破壊工作に繋がることが判明しました。

 4G通信に比べ5G通信は、数十倍の速度で通信を行うことが可能です。これによって通信速度の向上のみならず通信設備との同時接続数が激増します。企業や官庁のさまざまな機器が接続され、高速通信で様々な情報のやりとりを行うことができるようになりますし、自動車をとりまくさまざまな自動化のためのやりとりが可能になります。へき地の医療も手術ロボット等を使って遠隔で行える可能性も高まりますし、万が一の災害などでも遠隔でドローンや様々な工作機を操作できるようになります。

 このように現代ではITが深く社会に浸透し、さまざまな利便性を創出していることが解ります。となると、これらのネットワークに不正に侵入され、さまざまな機器を不正に操作したり情報の抜き取りや改ざんを行うと、社会そのものが大混乱に陥ることも想像に難くありません。さらに長期間にわたり国家に関わる重要情報を収集されてしまうと、社会や経済を混乱させることも用意ですし、国家そのものの転覆に繋がる可能性もあります。こうなると軍隊を使った戦争を行わなくても、5G機器を狙うだけで相手の国を意のままに操作する事が可能になってしまいます。

 もともとオーストラリア政府は、中国製品には元々そのような可能性を高めるバックドア機能が国家によって付けられているのではないかという疑義をもっていました。そこでオーストラリア政府は、5G機器を世界に普及していた中国のファーウェイ製品を国の5G計画から閉め出すことを決定したのです。その決定を受けた米国は、5Gの可能性と危険性、中国によるサイバー戦争の可能性、ならびに同盟国との連携の観点からオーストラリアに同調し、米国からのファーウェイ製品の締め出しを決定しました。

 その決定をうけ、米国内のIT企業も対応が始まっています。Androidを提供するGoogle社はファーウェイ社に対してスマートフォンのOSや技術供与を停止しました。これによって今後ファーウェイ社のスマートフォンは、最新OSを利用できなくなる可能性がありますし、現在使っているスマートフォンもOSのアップデート等のサービスが受けられなくなる可能性もあります。

 Google社以外の米国IT企業も同様の動きを取り始めており、Intel社などのチップセットを開発する各社もファーウェイ社への製品供給の停止を決定しました。Amazon社はファーウェイ製品の販売を停止したようで、Amazon.co.jpのホームページに表示されるファーウェイ製品は、すべて家電量販店などの外部業者が提供する物だけになっています。

 日本企業でも、携帯各社はファーウェイの新製品であるP30の予約受付を停止しました。現状では過去の製品は販売しているようですが、在庫がはければ携帯各社や量販店の店頭から消えていく可能性も高いように思います。日本の部品メーカーもファーウェイ社に部品を供給していますが、現状は大きな問題がないと考えているようです。

 もともとファーウェイ(華為技術)社は、1987年に深圳で操業した通信機器メーカーです。中国の通信インフラをベースにその勢力を伸ばし、アジアから欧米まで幅広く通信インフラの世界でシェアを伸ばしてきました。その裏には世界有数の研究開発投資があり、先端技術を実現しながら安価な製品を世界中に提供してきた結果が現在のシェアに繋がっています。スマートフォンでも先発の韓国勢を抑え、サムスンにつぐシェアを築いてきました。今回問題となった5Gの通信機器も性能が高く、各国での基幹部分での採用がほぼ決まっていたところでこういった動きが始まっています。

 その一番の原因が、創業メンバーが人民解放軍出身者であることのようです。武器を使った直接紛争よりも、サイバーテロを含めた情報戦のほうが現在では広範囲に相手国に影響を与えることができることは世界中の軍隊が気づいています。中国の軍隊である人民解放軍の出身者であれば軍部に近いことは想像に難くありませんし、その資金基盤は中国政府です。となると、中国による世界支配を恐れる国々が今回の決定に至のはある意味当然のようにも思えます。もちろんファーウェイ社は事実として中国政府寄りで軍事活動に関与している証拠はないため明確なことは解りませんが、その可能性があるだけでも国の機関をそれらのメーカーに委ねるリスクは低くはないでしょう。

 今回の件はどのように決着するかは、今後の動向を見てみないと判断はできません。しかし世界中にこういった新たなリスクが生まれているのは事実ですし、その主戦場がIT分野にあることは忘れてはなりません。我々ITに携わるエンジニアは、こういった事実も理解し不測の事態に備える必要があります。機器の安全性や価格だけではなく、世界の中でどのような事をしようとしているのか、そのためにどのようなリスクを認識し積極的に対応すべきかを考え続けなければなりません。